青臭い学生時代を思い出す
読んでまず思ったのが、1話1話本当に無駄がなく丁寧につくられている作品だなということ。 そのせいか、何度読んでも色んな発見があり、1巻完結ものでおすすめしたい作品だったりします。 内容も、熱量の低い情熱が空回りするどこにでもいる大学生を描いていて、どこか痛々しく、どこか共感してしまう内容となってます。 全能感に満ちあふれていた、昔を思い出す。 大学生ーー大人の自由と子供の自由を持っている最強のモラトリアム時代ですが、そんな時代に誰もが直面する理想と現実の乖離。 主人公はバンドでデビューを目指す「春香」と、ごく普通の後輩「入巣」という女子大生二人。 生きる目的ともいえる「目標」のある人とない人の対比なんですが、目標があっても、才能や情熱が追いつかないことはよくあること。 平凡な才能しかない自称クリエイティブな人あるあるを独特に煮詰めた表現で随所に散りばめてきて、なんとなく生きてしまっているような自分にはグサリと刺さります。 綺麗事や正論、漠然とした希望とぬるい情熱だけでは何一つ変えられないのです。 ネタバレになるので詳しくは控えますが、最後に春香のとった行動は、やりたいことをやれた人だからこその苦悩と解放を見事に描いていて胸を締め付けられました。 何をしていいかわからない8割の人間にとって、自分も本当は何かあったんじゃないか?と焚付けられます。 年食ったおっさんでも、残りの人生、心躍ることに情熱を捧げたいものです。
起承転結がはっきりしていて破綻がない、理性的な超実力派。
それが自分の石黒正数に対するイメージです。
ですがこの本は、そんな氏の作品の中でひときわ「衝動」的なものを感じました。
物語のベースは、
夢あり女子大生 & 夢なし女子大生のふたり暮らしの自堕落な日々...
みたいな感じです。
でも決してただのほのぼの漫画ではない。
組み上げられたストーリーと気の利いたギャグ、
その完成度はそんじょそこらの作品とは満足感が違います。
そして人生です。
ここが熱い。
漫画家漫画にハズレなしとどこかのネット記事に書いてありましたが、
その法則で行くなら本書もまた「クリエイター漫画」です。
あ、そう、ミュージシャンの話です、この漫画。
漫画家とミュージシャン、どちらも創作的な職業です。
石黒氏がその半生で得たこと、
感じたことがそのまま置き換えられて、
描き連ねられているのだと直感でわかります。
そりゃついペンにも力がこもりましょう。
人生が乗ってるからこその説得力、リアルゆえに込められた強い想い、
それがこの漫画にはあります、多分。読みましょう。面白いです。