稼いだ金だけが財産ではない #読切応援
貧しい家庭で育った9歳の少年がある難病にかかり、親が全財産はたいて購入した宝くじで1等10億を当て、無事に治療ができ病気は完治。それから10年たった現在も豪邸に住み何不自由無く暮らしているが、引きこもるわけにもいかないのでコンビニのアルバイトでなんとか社会と繋がっている。 「宝くじ」という運によって命を救われたうえ、裕福な暮らしが出来ていることに彼自信はなにか虚しさのようなものを感じているようだけど、運以前に間違いなく親の「愛」もあったはずで、そんなに重く考えなくても…と思う。けど当事者の気持ちなんてものは想像もつかないし、お金に困ってないのに意味もなくアルバイトしている自分と、お金がなくて大学を休学してまで働いている同僚の姿を見て、何も思わないはずはないか。 自分も、働いたことで得た経験ってちゃんと自分の「財産」だなと思えるし、世の中には色んな人がいると身を持って知ることが出来た。労働って尊い!とも別に思わないけど。 主人公の彼が後ろめたい思いを抱えながら確実に育まれた友情も彼らの「財産」だ。
とてもいい読切!
主人公が9歳のとき海外で手術が必要な脳の難病になり、3億円必要となったが、貧しい家庭は支払えるわけもなく全財産で宝くじを買うことに。すると1等10億円が当たり、病気も手術で完治、支払っても有り余るお金を投資に回し裕福になってしまって10年が経ち…。
19歳の主人公は不自由しない生活を送っていたが、コンビニでアルバイトをしていた。そこで出会った一人の青年との交流が彼を変えていく。
何の対価も無しに突如降って湧いたお金で裕福になったとき、人はどう生きるのか。
果たしてやる気も何もかも失ってしまうのか。
特に彼に関しては3億円の手術をしているので、頭のどこかでそれに見合う価値の人生を送らなければならないといった強迫観念があったはずで、何かを始める前からそんなことが頭によぎっていては何をやっても全てのことがその価値を世に生み出せないんじゃないかという諦念に満たされてそうで可哀想になってくる。
富裕層になったことがないのでこの解像度がどの程度のものか分からないが、突然お金を持っても当たり障りのない使い道しかできない気がする。
この親がいけなかったのは、使わなきゃいけないような気がして子供が望んでもいない旅行や習い事をさせたことではないか。
もっと普通の何気ない時間を積み重ねて行ってもよかったのではないか。
それこそ彼がバイト仲間と過ごした時間のように。
以前の『遠い日の陽』も素晴らしかったので未読の方はぜひ。