釘、楔、轍
根っこから強い人間なんていない。 何事にも動じない人、飄々としてる人、人生達観してる奴、 どんな人間もみんな腹には何かを抱えている。 読んでると苦しくて、気持ち悪くて、 でも読まないといけない気がして本を閉じられない。 目を背けてはいけないと思う。 戦争のニュースを見ている感じ。 岡崎京子の好きなところは、全部を逃げずに描き切るところ。 人間の汚いとこ、綺麗なとこ、全部まとめてこねていじってそれでもやっぱりキレイでしょ、と彼女は言う。 そこでああこの人は強い人だと思ってしまうけど、 いや強いだけの人にはこんな漫画書けないよな、とも思う。 読み終えたあと、自分の体に釘が刺さって一生抜けないような、そんな漫画をこの人は描く。 弱い私たちに、ありったけ残酷を突きつけた上で、 それでも生きようぜと、 生きた方がハッピーじゃんと声を張って叫ぶ。 これは私に必要な漫画だ。 誰にとってもきっと意味ある漫画だ。 全ての若者に岡崎京子を。
澱みですね。家も学校もどっちも澱んでる。そんな中で主人公のハルナちゃんが「ウゴウゴルーガが見たいから今日は早くうちに帰らなきゃ!」って言ってるのが違和感だった。見たくないものを見ないようにし続けてたから地獄の蓋が開いちゃったのかな。気持ちいいくらい救いようのない話なのが逆にすごい。ここまでやるかーみたいな。河原に放置された死体よりもセフレを殺しちゃったかもしれないと錯乱した彼氏にされるがままにさせたハルナちゃんの方が怖かった。その時の吉川こずえの「あの人は何でも関係ないだもん」の一言がまた怖かった。みんな他人に過剰な関心があるように見えるけど本当は無関心で自分のことすらよく分かんないからどうでもいいんだって見透かされたみたいだった。最後のシーンのハルナちゃんの涙は何なんだろう。山田君に存在を認められて嬉しい自分に気づけたから?でも山田君とセックスしたらもっと地獄の展開になってたかも。