悩める女性たちのランチタイム相席コメディ
オーバーヘッドからのお皿全割りはお腹を抱えて笑いました。 まさに凸凹コンビという名前がピッタシな、仕事や人間関係に悩める女性ふたりの偶然の出会い。ふたりともある面では高いスキルを持っている一方で別のところに擁護しようもない欠落もあり、実に人間らしいなと感じて可笑しくなります。
部下との関係に悩む社会人・椿。バイトに四苦八苦の大学生・桃子。年齢も経歴も違う二人の女性が偶然相席して――…? ほっと一息。憩いのランチタイムコメディ第1巻♪ 【河上だいしろう・著『シガレット&チェリー』(チャンピオンREDコミックス/秋田書店刊)とのコラボ描き下ろし漫画を電子版限定で特別収録!】
『三十路病の唄』の河上だいしろうさんの新作です。
仕事はバリバリにできるものの、対人コミュニケーションに難があるアラサーの椿。
コミュニケーション能力だけ激烈に高いものの、実務能力が壊滅的な大学生で飲食店でアルバイトをしている桃子。
ランチの相席でたまたま一緒になったふたりが、互いが互いにないものを持っていることを感じてお近づきになっていくコメディです。
隣の芝生は青く見えるのが世の理。自分からすると相手が持っているものはすごく良いものに見える一方、相手からすれば自分がごく当たり前に持っているものがとても良いものに見えているらしいという、大小や多寡はあれど現実的にもあるあるな構図が面白いです。
椿はこの時代に私用のスマホすら持っておらず、撮った写真をSNSに上げることの機微もわからないという想像以上のコミュニケーション難を見せつけてきますし、桃子は桃子で初日から店の皿のほとんどを割るなどの規格外のドジっぷりですが、そんなふたりのささやかながら強い秘密の結びつきが何だかとても良いです。
相互に感化されて、自分なりに頑張って部下や同僚とのコミュニケーションを改善してみようといろいろな方法で頑張っていく椿や、生活習慣から改善していこうとする桃子。人と人との出逢いによって、少しずつ変化が訪れる瞬間が切り取られているのが趣深いです。
椿を強く意識する柊と親しいヤニカス子ちゃんや、桃子の大学の友人で会うたびに卑猥なぞなぞを出してくる八重ちゃんなど癖の強いサブキャラたちも良い味を出しています。河上だいしろうさんのスタイリッシュな絵もあいまって、魅力的です。
楽しく読めて、読んだ後は少し背筋を伸ばして自分が不得意な部分も頑張ってみようと思える作品です。