日常から少しはみ出した、本当にありそうなファンタジー
三隅健先生の奥様があとがきに「なんだかどこかで本当にありそうな感じ、だけど変わっている」と三隅健先生の作品を表していますが、まさにその通りだなと思います。 表題作の『ムルチ』は「ムルチは人がさわると1週間で死んでしまうんで…」という書き出しで始まりますが、ムルチとムルチに触ってしまった女の子と高校生の話。架空の動物を巡るストーリーながら、その動物がいる世界がきちんと作られていて、彼らの焦りや優しさや驚きがとても伝わってきて面白かったです。 あとは『ブルーハワイ島』がとても好きで工業廃水に乗って町に流れる川を降って海へ行きハワイを目指すといういかにも登場人物の小学生たちの無鉄砲さが全開のストーリーでこれもすごく好きでした。
ページ数が少ない方が名作が生まれやすい説というのを聞いたことがありますでしょうか。しかし流石に2ページは少なすぎると思いますよね。でもそれを可能にしているのが三隅健さんの「空」という短編です。私はこの作品が好きで定期的に思い出しています。昨日ふと思い出したので調べてみたら北九州市漫画ミュージアムで原画展が開催中でした。なんとタイムリー!作者の三隅さんは新人賞を受賞後に早逝されましたが、ご家族の方が熱心に作品を広める活動をされているようです。