まぁ、これが医療漫画だとは思えないよね…。
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「医者とは職業ではない 医者という生き方なのだ」
このフレーズは、主人公、織田鈴香の恩師、嵐山鉄寛が事あることに口にする言葉ですが、まず、この物語の中で、この命題が、通奏低音として一貫しています。
とにかく、織田鈴香が、クセ強過ぎ超人なんですよね。
栃木の大病院のお嬢様、お父様は国会議員、一流大学を首席で卒業、前職は救急外来で、時として容赦なくメスも振るう、問診/触診の達人で難しい病気も一発で当てる、合気道三段、暴力は大嫌いだけど、いざとなったら腕力を使うことも躊躇しない。そして、何よりも地域の町医者として、人生を捧げることを厭わない。
これだけの能力と意志をもってしても、救えない命がある。むしろ救えない命の方が多い。それは、医療行政、社会のあり方、個々の感情、諸々があります。これを丁寧に、分かりやすく、かつ、残酷に描く物語なのです。
まぁ、「医療従事者簡単に刺され過ぎ」「医療従事者簡単に死に過ぎ」「登場人物簡単にセックスし過ぎ」とか諸々のポイントはあるんですが、週刊漫画TIMESなので、そういう物語ということです。
20年以上、生と死を見つめた主人公の死をもって、この話はクローズします。
最終話、主人公、織田鈴香の台詞「いえ、もう少し …だってこんなに素敵な景色 初めて見たもの」を見た時、読者は分かるんですよね。彼女は、脳腫瘍が進んでしまって、立つことはおろか、視野も失っていることに。
勿論、ラストには明日も未来もあります。それで良いではないですか。
まぁ、これが医療漫画だとは思えないよね…。
後、「おばさん百合漫画」と言う唯一無二の存在なので、大切に読んで欲しいかな。
この漫画、第一巻の表紙がナニなので、ちょっと損してる気がします。
後半になっていくうちに、主人公、織田鈴香は、「かわいいおばさん」にメタモルフォーゼするので、諦めず読んで欲しい!第40巻辺りから、主人公、相当かわいくなるから!
第81巻表紙の浴衣姿とか、本当にかわいいと思うんですよね!
織田鈴香が、ちょくちょく「技」を使うんですが、彼女の場合は、道場じゃなく、路上で使うスタイルなので、決まった時は、あっ、決まったな!と言う感じです。
…えっと、コレ一応、医療漫画なんですけどね。
この物語には、魅力的な医師が色々出てきますが、私が一番好きなのは、中江記念病院の緊急救命外来部長、栗須千奈でしょうか。
主人公、織田鈴香の最大のライバルにして、最強の敵、そして、何よりも、最もよく分かっている理解者。このタッグで救った人命、数しれず。
口先では嫌味を言ったり罵ったりしますが、二人共、患者の生命、その尊厳に対する畏敬の念、この絶対がある。この二人のやり取り、もっと見たかったですね(栗須千奈は、この7頁後に、過労により職場で突然死します)
大谷翔平の(元)通訳、水原一平氏のギャンブル依存のことが昨今話題ですが、なみだ坂診療所でも、依存症にまつわるエピソードが幾つかあります。
でも、アルコール依存症の話は、マジ辛いですね。織田鈴香も救えなくて死なしてしまってるケースが殆どですしね…。
2021年3月に全1020話の長期連載を完結した本格医療漫画「なみだ坂診療所」。多くの読者の要望がありながら単行本は絶望視されていたこの作品が、電子書籍となってすべてのエピソードを完全配信します。女医鈴香の活躍を存分にお楽しみください! ■第1巻あらすじ 大病院を辞め、茗荷谷の小さな診療所に赴任してきた女医・織田鈴香(おだすずか)。所長の嵐山鉄寛は病気療養中で、一人診療所を守ってきた看護師南條梢(なんじょうこずえ)は、突然現われた鈴香の態度に激しい反感を抱く。下町風情が色濃く残る東京・茗荷谷を舞台に、様々な人間の人生が交錯するヒューマンドラマ。
2021年3月に全1020話の長期連載を完結した本格医療漫画「なみだ坂診療所」。多くの読者の要望がありながら単行本は絶望視されていたこの作品が、電子書籍となってすべてのエピソードを完全配信します。女医鈴香の活躍を存分にお楽しみください! ■第1巻あらすじ 大病院を辞め、茗荷谷の小さな診療所に赴任してきた女医・織田鈴香(おだすずか)。所長の嵐山鉄寛は病気療養中で、一人診療所を守ってきた看護師南條梢(なんじょうこずえ)は、突然現われた鈴香の態度に激しい反感を抱く。下町風情が色濃く残る東京・茗荷谷を舞台に、様々な人間の人生が交錯するヒューマンドラマ。