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てつおとよしえ

山本さほさんが暖かく語る家族の思い出 #1巻応援

てつおとよしえ 山本さほ
兎来栄寿
兎来栄寿

『岡崎に捧ぐ』や『無慈悲な8bit』でお馴染みの、山本さほさんが自らのルーツである父と母を中心に、姉や兄など家族との思い出を綴ったエッセイ作品です。 非常に温厚でマイペースで多趣味な父親・てつおと、心配性で過保護で無趣味な母親・よしえの夫婦は、一見非常に対照的。ただ、逆にそうであるが故に上手く折り合いをつけながら家庭を回している様は読んでいてほっこりします。端的に良い夫婦で良い家族だなぁ、と読んでいて随所で感じられます。そして、そんな両親の姿に憧れをいただく山本さほさんの気持ちもとてもよく解ります。 「普通の家庭」の、その「普通」というのは決して当たり前に存在するものではなく、どこまでも掛け替えのない稀有で大切なものなんですよね……。 ただ、そんな羨まれるような家庭であっても昔は母親から常に将来を心配されてあれこれ言われるのが非常に鬱陶しく厭であったり、姉や兄とは上手くいっているとは言い難かったり、悩みを抱えて生きてきたことが綴られます。たとえ側から見てどんなに幸せそうであっても、人にはその人なりの痛みや苦しみがあるものですからね。自分では経験できず想像がし難いとしても、こうした作品を読むことを通して他者の喜怒哀楽に少しでも近づくことは意義のあることであろうと思います。 10話の「温泉とサラミ」などは、山本さほさんの良さが非常によく出ている回で好きです。山本さほさんの思い出を通して、忘れていた自分の過去にあった瞬間のことが脳裏に蘇りました。 読み終えた後、今自分がこうして生きていられるのもこれまでの人生で助けてくれた沢山の人のお陰であることを改めて噛み締めずにはいられない、そんな1冊です。 山本さほさんがそうしたように、生きている内に、できる内に、できるだけの恩返しもしていきたいものです。

宝石の国

重さと軽さが同居する、命の話

宝石の国
アフリカ象とインド象
アフリカ象とインド象

大好きな漫画です。 学生の頃、この漫画に狂っていた時期がありました。 友人全員にこれを読めとしつこく勧めて、 読んだ人に対してはお前はこの漫画の何もわかってない!と浅い考察を語る最悪のオタクでした。黒歴史です。 つまり、人を狂わせるほど魅力ある漫画ということとも言えます。言えますね。 とはいえ、こちらは既に多方面で紹介され尽くした人気作でもあります。 今さら自分の稚拙な語彙でレビューしても読むに耐えませんので、 ネットの海に散乱した情報に少しだけ補足をして、読むことを迷っている方の壁を取り払えればと思います。 この漫画が話に上がる時についてくるのが、とんでもない鬱漫画だという話題。 これが読み手の1つのハードルになってしまっていると思います。もったいない! 大丈夫。救いはあります。怖くないです。 確かに取り扱うテーマは重く、展開に心が締め付けられることはありますが、この作品の魅力はそこだけではないです。 素晴らしいのは重厚な世界観の中に、ポップさのエッセンスを忘れず組み込んでいること。 (ここで言うポップさとは、いわゆる大衆に寄り添う心のこと) 会話のテンポ、 キャラの関わり、 かわいらしいジョークのセンス。 そういう要素の節々に、作者である市川春子氏の人柄を感じられます。 そしてその人柄から読み取れるのは、 この人は読者の心をズタズタにしたい訳ではないよ〜。 ということ。 きっと最後まで読み切った方なら共感してくれると思います。 苦しさの先に希望がある。 これは人間の話。命の話。生と死の話。愛の話。宇宙の話。 火の鳥超えてます。ガチ。

てつおとよしえ
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