タイトル通り特別じゃない日が描かれているけれど、特別じゃないからこそ嬉しさも悲しさも照れくささも幸せも確かな体温を持って伝わってくる。
苦手がいつのまにかかけがえのないものに変わっていたり、身近な人のあたたかさを感じたり、そういう心が動く瞬間は案外日々の暮らしに転がっている。

登場する人たちも特別じゃないのがいい。
めちゃくちゃ会話が多いわけじゃないけど仲良しの老夫婦、そんな2人をニコニコ見守る孫、そのバイト先の同僚、子猫、それをハラハラしながら見ているSNSの人たち…みんな普通に生きている普通の人たち。
何かと生きづらい今日この頃だけど、優しさや幸せだってじゅうぶんに感じられるもんだなあ。

優しくなりたいときにぜひ読んでほしい。

読みたい
特別じゃない日
特別でないからこそ大事なもの
特別じゃない日 稲空穂
兎来栄寿
兎来栄寿
この単行本を家に置いておいたら、家族が「この方!!個人サイトの頃から十数年追ってた!!!!」というガチのファンであることが発覚しました。何でも、お気に入りの絵をプリントアウトしたものをずっと大事に携行していたそうです。Twitterで時折上げてらっしゃるのでそちらをご覧いただければと思いますが、水彩画がとにかく言葉を絶する上手さです。 しかし、昔はどちらかというと一枚絵中心だったので、近年マンガも描いてくださるようになったのはマンガ好きとしては大変に喜ばしいことです。 絵が上手いのはもちろんのことなのですが、オリジナルのお話もとんでもなく上質。これまではコミカライズが主でしたが、お話作りまでハイレベルとは神は二物を与えるのか……いえ、ご本人のたゆまぬ努力の賜物なのでしょうね。 本作はとある家族の何の変哲もないそれぞれの日常を描いた作品ですが、読んでいて本当にあたたかく幸せな気持ちに包まれます。 ひとつひとつのできごとは自分の日常で起きたとしてもあまり気にも留めないであろうことの積み重ねです。些細な喜び、些細な驚き、些細な幸せ…………。 しかし、それを俯瞰して見た時にそれがどんなに尊いことか、と噛み締めることができます。人生の最後に走馬灯のように回想した時には同じように感じられるかもしれません。 これを読んで、更に美しい水彩画の数々を見たら稲空穂さんのファンにならざるを得ません。これからも稲空穂さんの手から沢山生み出されていくであろう素晴らしい世界が楽しみです。
じゃあ、あんたが作ってみろよ
アップデートというよりも根本のお話
じゃあ、あんたが作ってみろよ
野愛
野愛
見た目も収入も申し分ないけどモラハラ気質で古い男が、恋人にフラれたことをきっかけに自らをアップデートしていくストーリー。 恋人が仕事終わりに作ってくれたご飯に、色味がどうだ出汁がどうだバランスがどうだとケチ(アドバイス)をつけ、そりゃプロポーズしてもフラれるわ!ざまあみろ! と思うものの、ちゃんと傷つきちゃんと学ぼうとする姿を見るとだんだん応援したくなってくる。 そして変わろうとするのは何も男ばかりじゃない。勝男をフった鮎美も、自分が本当に好きなものを見つけ人生を変化させていく。 読んでいくと2人はお似合いのカップルだったんだなあ、と皮肉じゃなくて本当に思う。 理屈じゃなく惹かれあった男女が、結婚という目的や男と女という役割に縛られてお互いが見えなくなっていく、なんて悲しい話。 そうさせているのは世間の空気や常識や今まで歩んできた人生など要因は様々だけど、「わたし」と「あなた」だけをしっかり見ていれば起こらないはずなのになあ……。でもそれが難しいんだよね。 勝男と鮎美の人生が再び交わるかどうかはさておき、2人もわたしもみなさんも、自分と相手の好きを大切にして人間関係を築いていけたらいいなと思った。
ストアに行く
本棚に追加
本棚から外す
読みたい
積読
読んでる
読んだ
この作品のお気に入り度は?
星をタップしてお気に入り度を入力しましょう
メモ(非公開)
以下のボタンから感想を入力することができます(別ウィンドウが開きます)
感想を投稿
完了する
フォローする
メモを登録
メモ(非公開)
保存する
お気に入り度を登録
また読みたい
特別じゃない体温があるにコメントする