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脱サラして6年目の古書店・十月堂の店主が主人公。店の写真撮りに来ただけの客にイラッとし、趣味の合う読書家のお客さんと交流し、そして人知れず不良在庫を古紙回収に捨てる。
ある日買取の仕事が来て家に向かうと、そこは生前読書家だった80代の男性が住んでいた家だった。
グラシン紙で保護された小説、ラノベ、絶版となった漫画、ホビー・フィギュア。
年齢を感じさせない選書、大切に保管された本、個人の蔵書印。
2つの書庫だけでなく居間までが本に埋もれた部屋をみて「ゾクッ」とした店主は、約束の時間までにと査定を済ましていく。
古書店主というのは、蔵書を通じて持ち主の人柄に触れ続け、その愛おしい空間が壊される最後の瞬間を看取る人間なんだと、否が応でも感じさせられた読切でした。今までがそんなこと全く考えたこともありませんでしたが、本が好きであればあるほど辛い仕事ですね…。
タイトルを読まずに読んでも「この作品のタイトルはこれしかない」と思えるほど、テーマを克明に描いた素晴らしいお話でした。
アフリカ文学の『やし酒飲み』、読んでみようと思います。
西欧近代が失ってしまった神話的想像力が豊かに息づく,マジック・リアリズムの傑作.神話と民話に根ざしたアフリカ文学の最高峰.
愛書家からの鎮魂歌(ハルタ98号)