「保護」から本当の愛情へ…
人間不信から老メイドと共に、大きな屋敷に閉じ籠ってきた女性は、老メイドの提案で一人の獣人を引き取る事にした。メイドとして働く獣人の少女・メルと、主人となった女性は、互いを思い遣る優しい関係を築いていく……。 ♡♡♡♡♡ 英国風世界観の美麗さと冒頭2話の優しいお話に、何処までも温かな物語が続いていくことを願ってしまう。しかし、事はそう簡単には進まない。 第3話から語られ始める「獣人」の設定は、ついスルッと受け入れてしまいそうになるが、「国家の保護管理」を示唆するワードがどうしても心に引っかかる。そうするとメルが日頃装着しているある装具が、妙にリアルな重さを常に思い出させるようになる。 世間を知らないメルは主人に信頼を寄せ、心安らぎ、親愛の情を寄せる。そして主人もメルの純粋さに、次第に「人を信じる心」を思い出す。 心を交わし、温もりを確かめ合う二人と、それを支える老メイドの生活は穏やかで、心温まる。しかし、メルの親愛の情が別のものに変容し、主人がそれを受け入れたいと思った時、「獣人」の設定はメルの装具のように生々しく二人に纏わり付く。 優しい日々に不安を潜ませ、二人の行く末の幸福を祈る物語として、または「国家・管理・差別」といった問題意識の寓話としても重みのある作品だ。