怪物はでてこない
楳図かずお作品の中でもリアリティがあってぞくっとする話だなと思います。少しやんちゃな娘と過保護で心配性なお母さん……? 母と娘は女同士ですから、敵対するとそりゃあ怖いです。父息子よりも的確にそのつど不快感を伝えますし、それをお互い根にもって蓄積させていきますからね。爆発する頃にはもう取返しのつかないレベルに憎悪を募らせているなんてこともあるのです。あと表立っては仲良しだけれど、お互いにとんでもない気遣いの上で成り立っている関係もありますよね。 まぁそういうデリケートな話ではないんですけどね、洗礼は。 楳図さんのタッチは狂人を描くためにあるのでは?と思えるほど『ぎゃあ~~!』という台詞や表情が活きています。しかもただ怖いだけでなく、読者への問いかけがあることで母と娘について、狂気について考えざるを得ないという…。やっぱりすごい作家です。