怪物はでてこない
楳図かずお作品の中でもリアリティがあってぞくっとする話だなと思います。少しやんちゃな娘と過保護で心配性なお母さん……? 母と娘は女同士ですから、敵対するとそりゃあ怖いです。父息子よりも的確にそのつど不快感を伝えますし、それをお互い根にもって蓄積させていきますからね。爆発する頃にはもう取返しのつかないレベルに憎悪を募らせているなんてこともあるのです。あと表立っては仲良しだけれど、お互いにとんでもない気遣いの上で成り立っている関係もありますよね。 まぁそういうデリケートな話ではないんですけどね、洗礼は。 楳図さんのタッチは狂人を描くためにあるのでは?と思えるほど『ぎゃあ~~!』という台詞や表情が活きています。しかもただ怖いだけでなく、読者への問いかけがあることで母と娘について、狂気について考えざるを得ないという…。やっぱりすごい作家です。
絶世の美女として有名な大女優・若草いずみには誰にも言えないコンプレックスがあった。それは普段はドーランを塗り固めて隠している顔にできた大きなアザと、どうしても抗うことのできない老いである。しかし主治医からある提案をされたことにより、彼女は女の子を産む。そして芸能界を捨てて表舞台から姿を消した…。数年後、大女優だった面影がないほど醜くなった母親は、昔の自分のように美しく育った小学生の娘・さくらを襲う。そして娘の身体に自分の脳を移植する手術を行うのだった!美しい身体を手に入れた母親は、これまでの人生では手に入れられなかった平凡だけど幸せな生活を送る為に、新婚だった担任の家に潜り込み、その妻を殺そうとする…。
母親と娘の関係って怖いですよね。仲が良くても悪くても怖いよな〜って、自分を見ても、他人を見ても感じます。やっぱり似てしまうからしょうがないってところもあるんでしょうけどね。脳移植後の見た目は少女だけど中身はオバサンっていう恐怖は「エスター(映画)」にも似てるなって思いましたが、オチは「洗礼」の方が怖かった。自分が娘だからより怖く感じたんだと思う。これを少女コミックで連載してたってヤバすぎる。笑!