名無し
吉本浩二先生の描く漫画は私にとって
気にはなるけれど好みではない作風だった。
なんだか絵が泥臭い感じがして。
その印象はヒット作の「ブラック・ジャック創作秘話」を
読んでもあまり変わらなかった。
確かに面白いのだが、絵の泥臭さというか、
熱くるしさというか、
とても細かく書き込んでいらっしゃるのだが、
それが必ずしもプラスになっている漫画と思えなかった。
だが「さんてつ」を読んで、読みながら泣いてしまった。
なんら過激な演出などしていない。
ひたすら泥臭い絵をひたすら描きこんでいる。
その絵から、文字通りに被災地の泥の底に
色々なものが埋もれている感じが圧倒的に伝わってきた。
写真で見ることで伝わる被災者や被災地の惨状は
間違いなくリアルであり事実なんだろうけれど、
吉本先生の絵からはなにかそれ以上に伝わるものを感じた。