善悪とか倫理とか道徳などは、感情を前にすると途端に脆弱になる。
良い悪いなんてどうでもいい、許せない、その気持ちわかる。復讐すべきだ!!
昂った感情が抑えられなくなる。

最愛の娘が強姦される。加害者は権力者の息子達。被害者である娘は誹謗中傷され、自ら命を断つ。
そんな酷いことあってたまるか、許せない。同じ目に合わせてやれ。
復讐を誓ったキム・ジンを非難することなどとてもできない。だって、そうすべきだと思ってしまったから。

加害者は徹底的に憎らしく描かれており、悪い奴が制裁を受ける快感もある。
同時に、キム・ジンが幸せな家族の夢を見る場面も描かれており、復讐したところで幸せは戻らないことも痛感させられる。
だからと言って「そんな虚しいことはやめろ」なんてとても思えないのだ。

途轍もない悲しみに包まれたとき、道徳や倫理に従って行動できるひとなんているのだろうか?
キム・ジンを英雄として祭り上げる気持ちがわかってしまった以上、わたしには善悪なんて論じる権利もない。
祭りのあとのような虚しさが残った。

韓国漫画ってソリッドでかっこいい。過剰なまでに無駄を省いた鋭さや硬質さが魅力的だなあと思います。

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