三つの歪み愛、交わる先の嘆息
ソゴールさんの1巻のクチコミで、この物語の不穏さがビシビシ伝わって来たので読んでみたのですが、4巻最後の最後までヤバかったです。 描かれる三人三様の歪み。その変遷の物語は、余りにも苦しすぎる。 女優である同級生・瞬(まどか)を崇拝する隠キャ・柚。彼女の偏執的な崇拝心は、その後、瞬の親友・幸子との「入れ替わり」を機に、迷走を始めます。瞬に振り回され、幸子とぶつかる柚の「らしくない」迷走の痛々しさ。 柚に罵られながらも手を差し伸べられる幸子。彼女の苦しみは、一言で言えば「永遠の罰」。この絶望感が、私には一番理解できました。 一方、最もゾッとするのが、瞬が抱える「コミュニケーション不全」。かなりずれている愛に、私の理解がとても及ばない。 三者三様の歪みの形は、それぞれに作用し合って感情の形を変え、一応の決着を見ます。しかしラストを見ると、あぁ……と嘆息。 最終話のサブタイトルは「もう懲り懲りなんだって」。
高校2年生の八河柚には"神様"がいる。現役高校生の速水瞬、現役高校生女優である彼女は柚の唯一無二の存在である。実は2人はクラスメイトなのだが、柚がスクールカーストの最下層にいる一方、瞬は仕事の合間の限られた登校日にもカースト上位の世木幸子らとともに過ごしている。だから柚にとって瞬は"近くて遠い神様"。そんな柚が、瞬と最も仲良く接している幸子と最悪の邂逅を果たすところから物語が始まる。
柚は幸子に対し日頃から抱いていた怨嗟の念をぶつけるが、そんな柚に対し幸子"誰かに愛される地獄"を教えてやろうかと凄む。その後、幸子との邂逅を契機として柚は瞬との距離を近くするのだが、瞬を神様と半ば崇めるように想い、またそれに対応して自らを卑下するため、自身の瞬に対する感情に苦悩することになる。
柚の"愛する地獄"と幸子の"愛される地獄"、そして作中ではまだ明確にされていない瞬の感情。3人の想いが複雑に混じり合って起こる化学反応、その先にあるのは幸子の言うように"地獄"なのだろうか。
最初この作品を読んだ時、公式でも"ラブストーリー"と銘打たれているにも拘らず、描かれているものが恋愛感情とは微妙に違うんじゃないかという感覚を覚えた。これに似た感覚は「アタシのセンパイ【電子版特典付】」を読んだ時にも感じたが、もしかしたらこの物語も同じようなベクトルに収束していくのではないかと思うと黒い期待が膨らんでしまう、そんな作品。
1巻まで読了