漫画史上最高傑作
わずか1冊の単行本の中にものすごく壮大なテーマが託されている。 あえて手前の部屋と向こうの部屋のパースをずらすことで、あちらの世界とこちらの世界の彼岸を再現していたり、ベランダの柵がコマ割りとなっていたり、ここでは書ききれない程の重層的な技法が含まれている。そして、それら全てを包括するように、あえて切り離された記号とも文字とも絵とも捉えられる高野のみが到達出来た線画によって、生と死の彼岸が描かれている。
小説の主人公に自分を重ね、図書館で借りた本を読みふける少女。名作「チボー家の人々」を題材に採った表題作のほか、3編を収録。会社の片隅で繰り広げられる、恋か?セクハラか?本人たちにもわからない小さな騒動「マヨネーズ」、ボランティアが派遣先で起こすスリリングなすれ違い「二の二の六」など、バラエティー豊かに人生の真実と上澄みをすくい取る、たぐいまれなる作品集。ユーモアとクールな距離感が織りなす絶妙なバランス、名手による4編の物語をお楽しみください。
黄色い本に収録されている短編の中で「マヨネーズ」が一番好きです。高野文子先生ご自身もこれは珍しくエロを描きましたというようなことをおっしゃっていたと思いますが、大人の恋愛模様を描いた作品です。
物語の始まりの巧みなカットの連続もかっこいいのですが、やっぱりスネウチさんのキャラクターが魅力的ですね。ひとことで言うとガサツな人です。彼が何にでもマヨネーズをかけることがタイトルの由来にもなっています。
タキちゃんがいつスネウチさんのことを好きになったのか明確には描かれてはいません。でも心の動きって自分でも予測不能だったりしますよね。すごくマンガっぽく描かれているけど実際の恋愛がモデルになっているようなリアルさがすごくあります。