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寿司 虚空編

よくわからなくても面白いが、そこで終わると非常に勿体ない

寿司 虚空編 小林銅蟲
完兀
完兀

今や狭い世界で広く知られることとなった数学的題材「巨大数」を扱った、世にも奇妙な寿司漫画である。 ぶっちゃけ読んでもよくわからない人がほとんどだと思う。でもよくわからないまま読んでも面白いのだからすごい。このことは、本作を読むのに巨大数への理解が必要ではないともいえるのだけど… でもよくわからないまま読み進めるだけじゃなく、扱われている巨大数への理解を深める挑戦もしてみてほしい。でなければ大きな機会損失になりかねない。 この漫画が提供してくれる機会、それは「世界が広がる感動と衝撃」である。 物心ついた頃、普段目にしている家周辺の空間の外へ初めて飛び出たときに体験するあの感覚。 小さかった頃、自分の知っている世界は実は地球上の非常にちっぽけな範囲だけなのだと気付いたときに得たあの感覚。 利口になってきた頃、あんなにも大きいと思っていた地球の外には、全知識を動員してもどうにもならないぐらい広大な宇宙が広がっているのだと思い知らされたときのあの感覚。 人生でそう何度もないような、あの劇的な感覚を与えてくれる可能性がこの漫画にはある。私は味わった。まさに『わかり』の状態だ。 この漫画、絵やストーリーが最高だと評価される可能性は極めて低いだろう。 しかし「最高の体験を導いてくれる漫画」になる可能性は充分にある。少なくともクラス1の数の逆数で表される範囲ぐらいはある。 それがどれぐらいの大きさになるかは、本作を読み進めて確かめてみて欲しい。単行本未収録の話がpixivコミックに公開されているのでそちらもお忘れなく。

この世界の片隅に

漫画と映画を久しぶりに見返した!

この世界の片隅に
かしこ
かしこ

2025年のお正月にNHK広島放送で映画「この世界の片隅に」が放送されたのは、今年で原爆投下から80年が経つからだそうです。この機会に私も久しぶりに漫画と映画をどちらも見返してみました。 やはり漫画と映画の一番の違いはリンさんの描き方ですよね。漫画では夫である周作さんとリンさんの関係について触れられていますが、映画ではありません。とくに時限爆弾によって晴美さんと右手を失ったすずさんが初めて周作さんと再会した時に、漫画ではリンさんの安否を気にしますが、映画ではそれがないので、いきなり「広島に帰りたい」という言葉を言い出したような印象になっていました。映画は子供のまま縁もゆかりもない土地にお嫁に来たすずさんが大人になる話に重点を置いているような気がします。それに比べると戦時下無月経症なので子供が出来ないとはっきり描いてある漫画はもっとリアルな女性の話ですよね。だから漫画の方が幼なじみの海兵さんと2人きりにさせた周作さんに対して、あんなに腹を立てたすずさんの気持ちがすんなり理解することが出来ました。個人的には男性達に対してだけではなく、当時の価値観で大事とされていた後継ぎを残せない自分に対しての悔しさもあるのかもしれないと思いました。けれどもあえて女性のリアルな部分を描きすぎない選択をしたのは、原作である漫画を十分に理解してるからこそなのは映画を見れば明らかです。 久しぶりに漫画と映画を見返してどちらも戦争が普通の人の生活も脅かすことを伝えているのはもちろん、すべてを一瞬で無いものにしてしまう核兵器の恐ろしさは動きのある映画だから強く感じた喪失がありました。そして漫画には「間違っていたら教えて下さい 今のうちに」と巻末に記載されていることに初めて気づきました。戦争を知らない私達が80年前の出来事を想像するのは難しいですが、だからこそ「この世界の片隅に」という物語があります。どんなに素晴らしい漫画でもより多くの人に長く読み続けてもらうのは大変なので映像化ほどの後押しはないです。これからも漫画と映画どちらも折に触れて見返したいと思います。

すしこくうへん
寿司 虚空編
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