リアルな人間vsヒグマ漫画
『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞の「シャトゥーン ヒグマの森 」を漫画化した作品。原作は読んでいないんだが、俺の好きな「増田俊也」が書いて生きたの気になって読んでみた。 凶暴なヒグマを生み出したのは生態系を破壊した人間というテーマがベースにあり回を重ねるごとに気になってた謎が解明されていき、あっという間に読んでしまった。 特にヒグマが人間を食うところがすごくて、生きたまま食いちぎるや、頭から丸かじりするなどパターンが豊富でいいし、やっぱりヒグマはすごいなと再確認できる。 ここ最近、クマがかませ犬みたいな扱いばかりされる漫画ばかり読んでいたので新鮮だった。 あとなんか見たことある絵だと思って調べたら「奥谷通教」って「奥道則」の昔の名前なんだな。漫画ゴラクでたまに掲載されている絵だから覚えていた。
ヒグマは日本に生息する哺乳類の中で最大にして最強。
体重が300kgを超える固体もいる。
一振りで人の首の骨ぐらい簡単にへし折れる腕を持ち、
しかもその腕の先には巨大な爪をも持つ。
人の頭など噛み砕く牙も持つ。
巨体でありながら時速80kmで走れる足腰も持ち、
犬の数倍とも言われる臭覚も持つ。
爪を使って木にも登れる能力すら持つ。
人間が戦って勝てるわけがなく、逃げることすら不可能。
しかし一度、人肉を喰らい人間の味を覚えたヒグマは、
ひたすら人間を襲い、食うようになる。
北海道の奥地、絶滅危惧種のシマフクロウが生息する森林。
電話などの通信手段も車などの移動手段もない、
大学の研究施設のプレハブ小屋に、7人の男女。
外には巨大で既に人肉を喰らったヒグマ。
逃げようにも篭城しようにも戦おうにも、
あまりにも何もかもが足りない。
それまでは絶滅危惧種鳥獣を笑って密猟していた男が、
散弾銃など全く効かないヒグマに引き裂かれ苦痛にのたうつ。
それまで「自分の死で自然が守られるなら本望」
とまで言っていた動物学者が、生きたまま食われて悲鳴を上げる。
我が娘だけは命にかえても守ると決意した母の前で、
強大な爪と牙が娘の体にくい込む、宙に舞う。
人間たちの心の中で、生きたい、死にたくないと
明滅する希望と絶望を、
ヒグマが森が雪が、そして互いの心の中の闇が飲み込んでいく。