多くのすばらしい作品を世に送り出し46歳で唐突にこの世を去ってしまった今敏。そんな彼が本格的にアニメ制作に進出する前、漫画を描いていた時代の作品です。リゾート開発に揺れる海辺の町。その町に住む開発推進派の神主の息子と、神社のご神体である海人の卵を巡る物語です。絵柄は漫画の師である大友克洋に酷似。細部にこだわり、コマを細かく割って大ゴマを極力抑えるタメのある構成は、ムービーカメラを通して見たような立体的雰囲気があります。また彼の作品の多くに見られる日本の風景や風習が丁寧に描写されていて好感。宮崎駿の「風の谷のナウシカ」のように、アニメと並行して漫画を描いても、良い作品が生まれたんじゃないかな、と思います。やっぱり、死ぬには早過ぎですよ…。

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セラフィム 2億6661万3336の翼 《増補復刻版》

セラフィム 2億6661万3336の翼 《増補復刻版》

未完の大作、“増補復刻版”で刊行! 物語は近未来21世紀初頭。地球上のあちこちで、肩甲骨が翼状に変容し、幻覚におかされる天使病という死に至る病が蔓延してきた。その感染によって世界中の各国では旧来の秩序は崩壊。宗教、経済、軍事など、さまざまな問題もはらみ、人の心の不安がむき出しとなった世界--- すべてが異端の地となった世界を、その「発端」をさぐるため、謎の少女セラと二人の男・バスタザル、メルキオル、そしてバセットハウンドのガスパルは、旅を続けていた。目指すは新疆ウイグル自治区南部にある中国最大の砂漠、タクラマカン砂漠---。天使、鳥、バセットハウンド--- など。作中で使われているモチーフを見れば一目瞭然ですが、押井守の原作として、宮崎駿氏による『風の谷のナウシカ』の長期連載が終了した「アニメージュ」誌で、その枠を継ぐ漫画作品として企画されたものです。しかし、連載が1年を越えるころを境に、押井と今の対立が表面化します。著者表記の「原作」が「原案」へと変化し、物語は完結を迎えないまま、全16回の連載が過ぎた1995年11月号で、唐突に終了します。ほぼ同時期に、押井守は世界的評価を経た監督作『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を発表。アニメーション監督に転身した今敏は1997年に、こちらも海外に大きな影響を与えた初監督作品『PERFECT BLUE』の公開に至ります。本作品執筆を契機に残念ながら決別をすることとなってしまう二人の世界的クリエーター。互いに長年口をつぐんでいたものの、このたびの《増補復刻版》では、その一方である押井守のインタビューを新規取材・収録するスペシャル版としてお届けします。

OPUS 《完全版》

OPUS 《完全版》

“幻の最終回”も含めた《完全版》! 連載漫画『Resonance』の佳境を迎えた漫画家・永井力は、悩んだ末に主人公リンの死をもって物語を締めくくることとした。だが、原稿用紙の奥から姿を現したリンにその原稿を奪われ、力自身もみずからの描いた漫画の世界へと引きずり込まれてしまう。そこで出会ったヒロイン サトコとともに、自分の考えた設定に翻弄されながらも謎の超能力者「仮面」と戦う力。作者にあらがう登場人物たち。やがて力にとっての現実世界と作中世界の境界線が崩れてゆく中で、力は「作者は作中世界の神たりうるのか」を自問するのだった---。隔週誌「コミックガイズ」で、1995~96年にかけて連載された長編漫画『OPUS』。アニメに専念するようになる直前の時期に書かれた、「漫画家としての今 敏」の集大成であり、後年の映画で追及される「現実と虚構」のテーマの出発点ともなった作品ですが、掲載誌の休刊にともない未完のまま終わりました。しかし、2010年の作者急逝の後に“幻の最終回”の原稿が発見され、徳間書店より上・下巻で単行本が刊行されました。本書は、単行本の巻末に今監督の全作品を手掛けたプロデューサー・丸山正雄氏のインタビューなど新規要素も併録し、1冊にまとめた《完全版》となります。

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