漫画だけではないんですが、たまに「あ、この先の展開読めた」ってことがあるんですが、この作品は完璧な形で展開を読み間違えました。
3巻までに敷かれた伏線で、恐らく殆んどの読者が「こうなるのかな」と予想した展開に対して、作者は鮮やかな手つきで全く異なる物語を紡ぎます。多少なりとも漫画を読み続けてきた自信があり、舞台や映画でも伏線をまとめる手法も多少は読めると思っていただけに、この作品では本当に「やられた」という心地よい敗北感を味わいました。
勿論、作者が読者にミスリーディングを誘うその手法の巧みさを称賛すべきであり、敗北感を感じるのはお門違いも甚だしいというの勿論分かっています。ただ、この心地良い読後感と、作者の紡ぐ美しくて技巧に優れた漫画は、ただただ称賛に値する物語だと思っています。きっとあなたも、騙されると思います(そしておまけでニヤニヤすることも)。
一人でも多くの人に、この作品を最後まで読んでもらい、そして幸福な敗北感を味わって欲しい。
海月のようにとらえどころのない美女に、翻弄される男心。麻生先生の描く人物は、とても魅力的です。

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魔境斬刻録 隣り合わせの灰と青春

長い時を経て #1巻応援

魔境斬刻録 隣り合わせの灰と青春
ナベテツ
ナベテツ

原作小説を読んだのは中学生の頃、近所の図書館で借りたことがきっかけでした。30年後にこの作品がコミカライズされると聞かされたら、少年はどんな感想を抱いたのでしょうか。 ドラクエなどのRPGに多大な影響を与えたウィザードリィ。死亡したキャラの蘇生に失敗すると灰になり消滅してしまうというシビアな設定が、この世界を伝える物語のタイトルとなり、やがてコミックへと転生を遂げました。 版権の都合で、ウィザードリィの固有名詞は一切使えず、アイテムや呪文、固有のモンスター名などは全て変わっています(ガディは原作よりだいぶおっとりしてる気もします)し、気を抜くと先の展開のネタばらしをしてしまいそうになりますし、ここでもなるべく注意をして言葉を選びたいと思います。 昭和~平成のファンタジーのコミックも好きなタイトルはあります。ただ、令和に描かれるとやはり迫力が違うなあと感心しますし、(物語を既に知っているとはいえ)迷宮での冒険がどのように描かれるのか、展開を楽しみにしています。ペース的に、原作を描ききるには相応の話数が必要だとは思います(稲田先生はかなり丁寧にストーリーを紡いでいますし、連載の継続の一助にでもなれば、との思いでこの口コミを投稿しています)。 魅力的なキャラはこれからも沢山登場しますし、日本のファンタジーの金字塔として語り継がれるベニー松山さんの傑作を、1人でも多くの人に知って貰えれば(原作小説、紙だと高騰してるんですよねえ。電子で簡単に買えるんでまあ良い時代になったなあと思います)。 続編の「風よ、龍に届いているか」や外伝の「不死王」もコミカライズされて欲しいもんだと、古いオタクは願ってます(不死王はKindleで100円ですからほんと良い時代です。一応紙でも持ってます)。

機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還

幻獣達の物語

機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還
ナベテツ
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ジョニー・ライデンという名前を知ったのは、テレビのガンプラのCMでした。アニメには出ない、設定先行のキャラであり、知名度と実像が一致しない、謎めいた呪文のような存在でした。 ガンダムを下敷きにしたアンソロジーなどでその姿を描かれることがあり、短編は幾つか持っていますが、26巻ものサーガになるとは思ってもみませんでした(沖一さんの短編集が佳作であると思います)。 一年戦争の最中、エースパイロットを集めたジオンのキマイラ大隊。多くの謎を残したまま闇に消えた「幻獣」。エース達を率いたジョニーに関しても、様々な噂が錯綜しており、それが様々なジョニー像の由縁であると作中で語られます(この辺がアークさんの作劇の巧みなところだと思います)。 作中はZZから逆シャアの間の時期であり、他の 作品で語られて来なかった空白の時代でした。制約のある中、過去作の登場人物やMSを絡め、先行作品へのオマージュやアークさんの過去の作品との関連性もあり、宇宙世紀に描かれた新たな歴史の一篇として、この作品の完結を祝いたいと思います。宇宙世紀の物語を知らない人にはちと勧め辛い作品ではありますが、戦闘シーンの格好良さも含め、ガンダム好きに勧めたい名作です。

がんばりょんかぁ、マサコちゃん

誠実な官僚と陥穽 #1巻応援

がんばりょんかぁ、マサコちゃん
ナベテツ
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以前に赤木雅子さんと相沢冬樹さんのノンフィクションを読んでおり、連載が始まったと知った時、単行本を楽しみにしていました(確か6月くらいに発売予定が出たので、伸びたのにやきもきしていました) 流石に森友事件を知らない人はいないと思いますが、幸福な夫婦を襲った不幸な事件であることは、論を俟たないところです。 赤木さんという人は、官僚として誠実に職務を果たそうとした人でした。本来の官僚というのは全体への奉仕者であり、特定の人間への利益を優先させるようなことを許容することは自己の存在を否定する事になります。己の職務が犯罪へと繋がるとなれば、官僚でなくとも耐え難いことでしょう。まして、仕事にプライドを持つ人であれば、その苦痛からの解放のために「最後の手段」を用いてしまったことへ何か言うことは出来ないと想像します。 ただ、遺された家族は違います。誠実に生きた人生に何が起きたのか、その事を知り、故人の名誉や尊厳を取り返す権利があります。たとえそれが権力者にとって不都合な出来事であったとしても。 この物語は、遺された妻の戦いの物語です。これからどれほど険しい旅路が待つのか、読者はただ見守るとしかできません。でもささやかながら、マサコちゃんへエールを送れればと思います。

1978年のまんが虫

まだサブカルという言葉も無い時代に#1巻応援

1978年のまんが虫
ナベテツ
ナベテツ

若くして成功を収めた作家に対して、その才能を讃えたり、羨望の眼差しで見つめても、その労苦へと想像力の翼を伸ばすことは難しいのではないかと思います。 作品がヒットして経済的な成功を得たとしても、その裏でどのような苦労を抱えたり葛藤を抱いているのか、受け手が知ることは叶いません。勿論、クリエイターに己の事情を明かす義務は存在しませんし、秘すべき事柄であるのかもしれません。 ただ、どれほどの才能を持っていても、彼ら彼女らも人間です。嬉しいことがあれば喜び、悲しいことには涙する。そんな素顔が垣間見えることが、漫画家マンガというジャンルの魅力の一つなのではないかと思います。 この作品は細野不二彦先生(作中では細納不二夫)がデビューに至る迄の物語です。進路に迷い、不確かな未来への夢と現実との間に揺れるその様は、多くの人々と変わらない、等身大の青年の姿です。 一人の青年の青春譜は、その時代を瑞々しく描いており、当時の世相を知ることが出来る一級品の資料としての価値もあると断言します(ヤマトからガンダムへの間を知ることが出来る作品を、自分は寡聞にして知りません)。 同級生の天才達(河森正治さんと美樹本晴彦さん)やトップランナー(高千穂遥さんや宮武一貴さん達)との交流は、自分の知らなかったことでしたし、日本のサブカルの歴史のページとして広く知られ、読まれて欲しいと願う作品でした。長々と書いてきましたが、シンプルに面白い作品なので、まずは試し読みから是非。

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花ゆめAi 波待ちリストランテ

花ゆめAi 波待ちリストランテ

LaLaDX2006年1月号に掲載された、コミックス未収録作。海沿いのレストラン「オステリア」のピザと出会い、一撃で惚れ込んだ大学生の珠美は、看板娘として働くことに。ある日、謎の常連客の美青年「クローバー」のために宅配ピザを始めるが…!?(50P)(この作品はウェブ・マガジン:花ゆめAi Vol.43に収録されています。重複購入にご注意ください。)

花ゆめAi 蝶となきむし

花ゆめAi 蝶となきむし

メロディ2006年11月号に掲載された、コミックス未収録よみきり。武(たけし)は、幼馴染の亜樹と大学で8年ぶりに再会。しかし亜樹は態度が別人に!?初恋相手の変化に納得できぬまま、とんでもない事件に巻きこまれて…。(50P)(この作品はウェブ・マガジン:花ゆめAi Vol.36に収録されています。重複購入にご注意ください。)

花ゆめAi 蕾たちのコラージュ

花ゆめAi 蕾たちのコラージュ

メロディ2006年10月号に掲載された、コミックス未収録作。バイト募集にみすずが訪れた松花堂は、同居する4人のアーティストが作品を売るお店。個性豊かな住人達に囲まれて…!?(45P)(この作品はウェブ・マガジン:花ゆめAi Vol.31に収録されています。重複購入にご注意ください。)

大正ロマンポルノ

大正ロマンポルノ

時は大正末期。盲目の絹子は小説家志望の青年と恋に堕ちる。だが、なかなか芽が出ないことに焦燥感を募らせる青年に、絹子は心中を持ちかけられるが――。予測不能のノンストップ人間悲喜劇開幕!秘密を抱えた、ある美女との邂逅を描く「徒花(あだばな)」も収録。

花ゆめAi 徒花

花ゆめAi 徒花

2014年メロディ6月号に掲載された、コミックス未収録作。陶芸家の工藤は、個展を開いた画廊主の娘・花梨と出会う。美貌と豊かな感性を持つ花梨に工藤はどんどん心ひかれてゆくが…?(この作品はウェブ・マガジン:花ゆめAi Vol.16に収録されています。重複購入にご注意ください。)

路地恋花

路地恋花

芽吹き、色づき、艶やかに、京の路地に想いの花、咲く――。短編の名手・麻生みことが描く、恋愛連作最高峰!舞台は古都・京都。とある路地の長屋に暮らす「つくる人」――職人たちが紡ぐ、凛と美しく、詩情豊かな恋愛譚。製本屋、銀細工屋、蝋燭屋など、多様な「職」の細やかな描写も見事。雑誌では描かれなかったエピソードも大量描き下ろしして収録!!

そこをなんとか

そこをなんとか

弁護士は儲かる!そんな思い込みで、成績ギリギリで弁護士になった改世楽子(かいせらくこ)。しかしその年、司法試験には大量の合格者が…。就職にあぶれた楽子(らっこ)はどうにか零細事務所に押しかけ就職!そこにはいやみで出来る先輩弁護士・東海林がいて!?新米弁護士・楽子の奮闘記!!

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