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スカイフォール ~消し尽くせぬ夏の光~

とにかく複雑な気持ちになり考えさせられる

スカイフォール ~消し尽くせぬ夏の光~ 三門ジャクソン
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

子供の頃、広島に住んでいて、原爆や戦争に関する授業はたくさん受けてきた。 当時の感覚は分からないまでも、広島に住んでいる人から語られる話はとても強く、嫌というほどに擦り込まれてきた。 通っていた小学校は全ての教室の本棚に『はだしのゲン』が置いてあり、雨の日に少しずつ読み進めていた。 読むたびに冬だろうが手汗をかき、夏だろうが血が冷えるようだった。 とにかく恐ろしく、こんなことは二度と繰り返してはならない、誰にも経験させてはならないと強く思った。 そして、この漫画である。 まさか、現代の原爆資料館から原爆投下されるその日にタイムスリップしてしまう主人公。 それを考えただけでもう恐ろしすぎる。 主人公にとってあまりに突然のことでリアリティが希薄なのかわりと平然としていて、ほんとに?と思うが、そうか、生きるのに必死なのかもしれない。 ダメだ、読むのがつらい。 と思うものの、どういう話に落としどころを持っていくのか行く末を見守りたい気持ちとせめぎ合う。 戦争を、原爆の辛さを机上で知っている主人公が現場で何を見出すのか。 現代の人にとっては3.11の記憶がいまだに鮮烈に残っているはずなので、状況が違うとはいえ、その記憶と3.11当時の感覚を上手く利用してその恐ろしさを伝えようとしてくれている。 彼は現代に帰れるのか。 この経験を経て何を志すのか。 我々は、決して忘れてはならない。これが何を意味するのか改めて考え、伝え引き継いでいかなければならないのだ。 風化させてはならない。 デリケートな原爆や3.11のことを扱うことで批判するひとは出てくるだろうけど挫けず最後まで描ききって欲しい。

COBRA THE SPACE PIRATE

夢と呼ぶにはあまりに厳しく余りに哀しい影に向かってのオデッセイ

COBRA THE SPACE PIRATE
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)

著者のライフワークなので一言で括れない幅がある作品で、私は 1.手塚治虫的なタッチが残り奇想展開なアイディアの楽しい「少年ジャンプ初期」(「コブラ復活」~「ラグボール」) 2.線がややソリッドになりシニカルな描写の増えた「少年ジャンプ中期」(「二人の軍曹」~「黄金の扉」) 3.ヒロイックな描写の光る「少年ジャンプ後期」(「神の瞳」~「リターンコブラ」) 4.「聖なる騎士伝説」 5.CGフルカラー期 で分けている。どの期間も見るべき所のある漫画であるが、4.の「聖なる騎士伝説」について書きたい。  「聖なる騎士伝説」は青年誌に掲載された長編で他の話より暗く、いつもよりシリアスでアダルトな展開や描写が多い異色のエピソード(何てったって、レディーさえ出てこない) だ。ここでは新世界の興奮は悪鬼に蹂躙され、コブラのいつもの剽軽な態度やヒロイックな勇気は鳴りを潜め、笑みは嘗て見られなかった暗い影を忍ばせている。絵の線もどの辺よりも細く、陰影もまた濃く、混沌とした悪意蔓延る世界をこれでもかと描き出す。筋も宝や冒険ではなく悪鬼の暗殺と言う剣呑な代物で、終盤に明かされる種も周到に張られた伏線もあり陰惨な世界観を補強する。  今までのスペースオペラと比べると余りにもノワールであり、退廃的でもあるが、それだけに強烈であり、私はこのエピソードが一番好きだ。けだし、このノワールが単なる露悪に終わらず、コブラが常に世を儚むようなニヒルな皮肉を呟きながら銃をぶっ放しながらもどこか善や正義を諦めきれていないからではないかと思う。有名なコマでもある様にコブラは終盤、実際には何の利益を齎さなかった教会を批判し「神か……最初に罪を考え出したつまらん男さ」と呟いてみせたが、これはやはり神や正義についてどこか夢を持っている証拠に他ならないと思う。さもなくばこんなセリフは決して言わないだろう。  コブラの海賊としてのアウトローな性格や享楽主義は上記の理想主義的な思想やストイックさに支えられている。寺沢武一は彼の初期作品を「思弁的」と批評していた記憶があるが、そういった性格が彼の作品から消えた事は一度も無かったことは確かだろう、そしてそれこそがこの漫画をいつまでも輝かせているのだろう。海賊と言う自由とギルドに対抗する高潔な戦士の顔を持つあの男のとこしえの旅に祝福を。

すかいふぉーるけしつくせぬなつのひかり
スカイフォール ~消し尽くせぬ夏の光~(1)
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