ネタバレ

相変わらず表紙が素敵。二人が手を繋いで並んでいる姿を読後に改めて読むとグッとくる。

ラティーノは西暦2320年の未来からやってきた旅人だった。大きな争いによって地球土壌が汚染され、その結果、放棄政策が取られたようだ。貴重な人的資源である若者たちが宇宙へと半ば強引に移民させられる。大人たちは地上へ取り残された。

娘が定期的に戻ってくると信じていたプラティーノの妻サラが娘を取り戻そうと自暴自棄になり、立入禁止区域に侵入した結果、銃撃を受けて死んでしまう。絶望したプラティーノは流刑者が行っているという特殊な任務に一般人として初めて志願する。目的は過去に飛び、土壌汚染を防ぐ準備をすること。

過去に飛んで土壌汚染を防ぐ植物の種を各時代、各地に撒く。その際、記憶は消去され任務遂行にのみ邁進するよう思考をプログラミングされる。可能な限り他人と交わらず、様々な時代を歩くことになるようだ。

そして孤独な旅を続けていたプラティーノは、西暦1851年のペルー付近に降り立つ。何度目かの旅路で村の住人達に出会い、記憶が紐解かれていくわけだ。

プラティーノはチロと出会って救われ、希望が持てた。チロもプラティーノと出会ったことで、父親を失った悲しみからやっと立ち直った。

過去にも未来にも悲痛な出来事があった。けれどバッドエンドではなく良い終わり方だったと思う。

意外とSFだったなぁという印象。細かいところは省かれているが、物語の構造上これくらいがバランスが良いのだろう。チロの物と会話できる能力というのは、もうそういうものだと割り切るしかないw

読みたい
足摺り水族館

言葉で説明しづらい、不思議な読後感に浸れる

足摺り水族館
鳥人間
鳥人間

panpanya先生の作品は、不定期だけど繰り返しパラパラと読み直したくなる、アナログで手元に置いておきたいマンガのひとつ。 その商業第1作『足摺り水族館』。 個人作品を再構成しつつ、未収録作品を追加されたもの。この雑多な感じが魅力だなーと思う。panpanya先生といえば現実と非現実をフワフワと漂いながら行ったり来たりするような、不思議な世界観が魅力。 表題作「足摺り水族館」は作中で3編に分かれて描かれている。古めかしい栞に誘われて不可思議な空間へ向かう。中編は写真と文章で日記みたいな感じ。後編はなんだかもう集大成といった雰囲気。 他にも様々なテイストの作品があって面白い。 お母さんからのメモに全く読めない謎の言語で書かれた品物が一つあり、それをなんとかして買いに行こうとする「完全商店街」。木炭絵?っぽい画風の「イノセントタワー」(2つ目の京都タワーに向かうお話)。不可思議な空間を少年が歩いていく描写で台詞が一切ない「無題」。喋るし動く自動販売機のお話「マシン時代の動物たち」などなど多種多様。 これ以降の作品も、もちろん素晴らしいけれど、本作はとくに各作品個性が際立っている気がする。まさに混沌。中には合わない作品もあるかもしれないが、「読んでよかったなー」と思うエピソードがきっとみつかる、はず。 そして「無題」がさっぱりわからないので誰か教えてほしい……(笑)

半世紀の箱庭

近未来老後SF!

半世紀の箱庭
鳥人間
鳥人間

軌道エレベータが建設された結果、沸き起こる宇宙バブル。数多くの建造物が宇宙に作られ、そこに移住する人々が増えた時代。冒頭で、若い夫婦が宇宙へと旅立つ。その先にある夢が語られると思ったら……そういうのはすっ飛ばして、まさかの老後が描かれている。 老夫婦の暮らす場所は、宇宙バブルの頃には最先端だったホテルが老人ホーム化され、老朽化に耐えながら運用されているようなところ(低重力環境は老人ホームにちょうどいい)。医療の進歩で高齢者の肉体的な若返りはある程度、実現している。しかし脳についてはまだ未知数な領域で、認知症は解決されていない。そんな状況で暮らす、認知症を患った妻と、その夫のお話。 なるほど自分たちが年老いた場合、こういう環境に身をおくことになるのか……そんな想像をしてしまうほど近未来の世界観がすごく興味深かった。そして、ほとんどのSFが寿命を超越したり、心身共に若さを保ったものな気がするが、この作品は「わりと普通に老いる」という視点で描かれていてとても新鮮に感じた。 作中、リハビリを受ける高齢者たちが描かれている。認知症になっても手先を使うことは覚えているということで、キーボードやゲームコントローラーをガシガシ使っている姿にちょっと笑った。 自分が老人になっても……ゲームはしてそうだなぁ(笑)

Bloodborne: The Death of Sleep

原作リスペクト感がたっぷりあるコミック版

Bloodborne: The Death of Sleep
鳥人間
鳥人間

Bloodborneは元々はフロム・ソフトウェア開発のゲーム。その海外でのコミカライズ版があると知って早速買って読んでみた。購入したのは日本語化されたもの。中身は海外著者のアメコミ風(?)だが、日本語版のカバーイラストは、漫画家の林田球先生による描き下ろしだそうだ。 たぶん原作ゲームを知らない人が読むと、さっぱりわからないと思う。死んで、狩人の夢の中で目覚めて、また現実をやり直すというループめいた現象は、ゲームをやってる人しかピンとこないだろう。逆に原作を知っている人であれば、この雰囲気や謎めいたストーリーで「あぁこんな感じこんな感じ!」と思うはず。 ストーリーは著者のオリジナルだそうだ。とはいえ原作のストーリーはフロムお得意のユーザーに想像をさせるところが多く、多様な解釈ができる不明瞭なもの。ストーリーについては数あるアイテムテキストや状況から推測しなければならない部分が多いゲームだ。おそらく著者もその辺りをよく理解しており、原作の世界観に著者の考えを上手く盛り込んでいると思う。 そして原作リスペクトがとてもよくわかる描写やキャラクターたち。例えばボスモンスター「血に渇いた獣」が原作通り絶望感たっぷりに描かれている。ゲームで最初こいつに出会ったときの「どうやって倒すんだよ……」と途方に暮れた感覚を思い出した。他にもボスでいえばアメンドーズ。NPCでは狩人デュラ、ゲールマン、人形など。ノコギリ鉈や回転ノコギリといった仕掛け武器。旧市街や禁域の森、漁村などのエリアが描かれていてファンならニヤリとするだろう。 全編オールカラー、カッコいいコマも多く、見応えがある。ストーリーは希薄だが隙間を想像しながら楽しめる。とりあえず1回だけ読んでみたが、繰り返し読めば色々発見がありそう。言い換えれば不明瞭な話なので、モヤモヤとした感じを覚える人もいるかもしれない。原作ファンでも好みは分かれそうだ。

アルキメデスのお風呂 単行本版

ありそうでなさそう?(いやないかなw)素粒子研究所内ラブコメ

アルキメデスのお風呂 単行本版
鳥人間
鳥人間

アルキメデスのお風呂ってあれか、黄金の王冠の逸話かな。 東海村のJ-PARCが監修しているということで、興味を湧いて読んでみた。 弁当屋店員でぽっちゃり女子の原陽子は仕事でもプライベートでもボロボロになり、駅のホームで自殺を図るという、いきなりなんとも重い話からスタートする。 しかし、そのとき助けた人物が(ちょっとおかしな)王子様のような理系男子。二人には意外な接点があり……といった感じでラブコメ展開へとつながっていく。 作中の舞台となるA-PARCは実質、実在のJ-PARCなのだろう。たぶん。筑波のKEKへは一般公開日に何度か行ったことがあるので、そういうときに見聞きしていたので存在は知っていたけど、さすがにこちらは行ったことがない。その内情が見て取れるというのは面白い。 ラブコメ要素には正直あんまり興味がない(笑)が、素粒子の基礎研究という何に役に立つんだかわからない研究と、暗中模索な恋愛模様を交錯させて描く様はなかなか面白い。それに各キャラクターがなかなか個性的で面白いし、1巻時点では各キャラクターの背景に何やら色々抱えていることがありそうで、この先が気になることは確か。おそらく今後登場するであろうエミィも曲者であってほしいなー。

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ゆずとまま 電子新装版

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須藤真澄[自選短編集]

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瑞々しい筆致で幻想的な世界を描き続けてきた須藤真澄が、その作品群から “むすめ” をテーマに厳選した珠玉の作品集。「須藤真澄が勝手に選ぶ可愛いこむすめベスト5」の特別描き下ろしに加え、あとがき、単行本リストを収録。◎“じじばば”がテーマの「須藤真澄[自選短編集]梅鼠」には、作家 有川浩(現ペンネーム:有川ひろ)の解説を収録。

おさんぽマスターズ

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運動能力は皆無!!好奇心は満点!!五十路のますび(作者)&定年間近の元・編集長О村(担当編集)、17年ぶりに歩きに歩く!!襲い掛かる坐骨神経痛!!長引く夏バテ!!そしてコロナ禍!!いろんなピンチを乗り越えて、「チームいそぢ」限界突破でハイパーウォーキング!!※近所をへとへとワクワクお散歩する、ゆるゆるエッセイ漫画です。●須藤真澄 ビームコミックス好評既刊●『おさんぽ大王(全7巻)』『どこか遠くの話をしよう(全2巻)』『どんぐりくん(全4巻)』『水蜻蛉の庭』『金魚草の池』『地図苔の森』『火輪花の丘』『木珊瑚の島』『土筆柑の空』●コミックビーム 公式ツイッター●@COMIC_BEAM

庭先塩梅

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掌ほどの小さなお友達や、海を連れてくるおじいさん。いぬのくすりやさんに、銀河の彼方からの来訪者……不思議なものたちとの奇蹟みたいな出来事は、おかしくて、愛らしくて、深く深く心に染み込んでいく……。かけがえのない瞬間がつまった光のようなファンタジーを、大切に大切に描いていてきた須藤真澄。第15回文化庁メディア芸術祭<マンガ部門>審査委員会推薦作品となった月刊コミックビーム連載の短編連作『庭先塩梅』第1巻。第15回文化庁メディア芸術祭<マンガ部門>審査委員会推薦作品。

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