ネタバレ

アスペルガー症候群の女性を主人公とした物語。病気を知る前の日々思い悩む姿と、病気を知って、共存していこうとする姿が描かれている。カラーで描かれていて、主人公の女性の感覚を、本人の言葉や表情で語ることなく、色で表現しているかのような使い方が素晴らしいと思った。真っ赤に染まるコマはこれほどのストレスなのかとゾッとする。

フランスも日本的なところがあるんだね。むしろ、自閉症についての理解がかなり浅い。一般の人はもちろん、医者ですら「君は自閉症なんかじゃない」と言い切るというのはある種の恐ろしさを感じる。

そして社会に入るのであればその社会になじまないといけないという、同調圧力。日本っぽく感じたほどだけど、これはフランスの物語。程度の差はあれど、どこにでもあるのかもしれない。

郷に入れば郷に従えというがそれができない病。何がつらいってそれを「病」であると主観的にも客観的にも理解するのが難しい病気であるということ。でも、それに気づき、理解してくれる人が周囲に増えて、ただただ思い悩みながらルーティンで刻んでいく生活から、日々を楽しむ生活へと切り替わっていて、本当に良かった。

純粋に面白かったし、病気のことや、それを取り巻くフランスの状況が垣間見えて良かった。あと、パン屋さんの伏線もいい。

読みたい
足摺り水族館

言葉で説明しづらい、不思議な読後感に浸れる

足摺り水族館
鳥人間
鳥人間

panpanya先生の作品は、不定期だけど繰り返しパラパラと読み直したくなる、アナログで手元に置いておきたいマンガのひとつ。 その商業第1作『足摺り水族館』。 個人作品を再構成しつつ、未収録作品を追加されたもの。この雑多な感じが魅力だなーと思う。panpanya先生といえば現実と非現実をフワフワと漂いながら行ったり来たりするような、不思議な世界観が魅力。 表題作「足摺り水族館」は作中で3編に分かれて描かれている。古めかしい栞に誘われて不可思議な空間へ向かう。中編は写真と文章で日記みたいな感じ。後編はなんだかもう集大成といった雰囲気。 他にも様々なテイストの作品があって面白い。 お母さんからのメモに全く読めない謎の言語で書かれた品物が一つあり、それをなんとかして買いに行こうとする「完全商店街」。木炭絵?っぽい画風の「イノセントタワー」(2つ目の京都タワーに向かうお話)。不可思議な空間を少年が歩いていく描写で台詞が一切ない「無題」。喋るし動く自動販売機のお話「マシン時代の動物たち」などなど多種多様。 これ以降の作品も、もちろん素晴らしいけれど、本作はとくに各作品個性が際立っている気がする。まさに混沌。中には合わない作品もあるかもしれないが、「読んでよかったなー」と思うエピソードがきっとみつかる、はず。 そして「無題」がさっぱりわからないので誰か教えてほしい……(笑)

半世紀の箱庭

近未来老後SF!

半世紀の箱庭
鳥人間
鳥人間

軌道エレベータが建設された結果、沸き起こる宇宙バブル。数多くの建造物が宇宙に作られ、そこに移住する人々が増えた時代。冒頭で、若い夫婦が宇宙へと旅立つ。その先にある夢が語られると思ったら……そういうのはすっ飛ばして、まさかの老後が描かれている。 老夫婦の暮らす場所は、宇宙バブルの頃には最先端だったホテルが老人ホーム化され、老朽化に耐えながら運用されているようなところ(低重力環境は老人ホームにちょうどいい)。医療の進歩で高齢者の肉体的な若返りはある程度、実現している。しかし脳についてはまだ未知数な領域で、認知症は解決されていない。そんな状況で暮らす、認知症を患った妻と、その夫のお話。 なるほど自分たちが年老いた場合、こういう環境に身をおくことになるのか……そんな想像をしてしまうほど近未来の世界観がすごく興味深かった。そして、ほとんどのSFが寿命を超越したり、心身共に若さを保ったものな気がするが、この作品は「わりと普通に老いる」という視点で描かれていてとても新鮮に感じた。 作中、リハビリを受ける高齢者たちが描かれている。認知症になっても手先を使うことは覚えているということで、キーボードやゲームコントローラーをガシガシ使っている姿にちょっと笑った。 自分が老人になっても……ゲームはしてそうだなぁ(笑)

Bloodborne: The Death of Sleep

原作リスペクト感がたっぷりあるコミック版

Bloodborne: The Death of Sleep
鳥人間
鳥人間

Bloodborneは元々はフロム・ソフトウェア開発のゲーム。その海外でのコミカライズ版があると知って早速買って読んでみた。購入したのは日本語化されたもの。中身は海外著者のアメコミ風(?)だが、日本語版のカバーイラストは、漫画家の林田球先生による描き下ろしだそうだ。 たぶん原作ゲームを知らない人が読むと、さっぱりわからないと思う。死んで、狩人の夢の中で目覚めて、また現実をやり直すというループめいた現象は、ゲームをやってる人しかピンとこないだろう。逆に原作を知っている人であれば、この雰囲気や謎めいたストーリーで「あぁこんな感じこんな感じ!」と思うはず。 ストーリーは著者のオリジナルだそうだ。とはいえ原作のストーリーはフロムお得意のユーザーに想像をさせるところが多く、多様な解釈ができる不明瞭なもの。ストーリーについては数あるアイテムテキストや状況から推測しなければならない部分が多いゲームだ。おそらく著者もその辺りをよく理解しており、原作の世界観に著者の考えを上手く盛り込んでいると思う。 そして原作リスペクトがとてもよくわかる描写やキャラクターたち。例えばボスモンスター「血に渇いた獣」が原作通り絶望感たっぷりに描かれている。ゲームで最初こいつに出会ったときの「どうやって倒すんだよ……」と途方に暮れた感覚を思い出した。他にもボスでいえばアメンドーズ。NPCでは狩人デュラ、ゲールマン、人形など。ノコギリ鉈や回転ノコギリといった仕掛け武器。旧市街や禁域の森、漁村などのエリアが描かれていてファンならニヤリとするだろう。 全編オールカラー、カッコいいコマも多く、見応えがある。ストーリーは希薄だが隙間を想像しながら楽しめる。とりあえず1回だけ読んでみたが、繰り返し読めば色々発見がありそう。言い換えれば不明瞭な話なので、モヤモヤとした感じを覚える人もいるかもしれない。原作ファンでも好みは分かれそうだ。

アルキメデスのお風呂 単行本版

ありそうでなさそう?(いやないかなw)素粒子研究所内ラブコメ

アルキメデスのお風呂 単行本版
鳥人間
鳥人間

アルキメデスのお風呂ってあれか、黄金の王冠の逸話かな。 東海村のJ-PARCが監修しているということで、興味を湧いて読んでみた。 弁当屋店員でぽっちゃり女子の原陽子は仕事でもプライベートでもボロボロになり、駅のホームで自殺を図るという、いきなりなんとも重い話からスタートする。 しかし、そのとき助けた人物が(ちょっとおかしな)王子様のような理系男子。二人には意外な接点があり……といった感じでラブコメ展開へとつながっていく。 作中の舞台となるA-PARCは実質、実在のJ-PARCなのだろう。たぶん。筑波のKEKへは一般公開日に何度か行ったことがあるので、そういうときに見聞きしていたので存在は知っていたけど、さすがにこちらは行ったことがない。その内情が見て取れるというのは面白い。 ラブコメ要素には正直あんまり興味がない(笑)が、素粒子の基礎研究という何に役に立つんだかわからない研究と、暗中模索な恋愛模様を交錯させて描く様はなかなか面白い。それに各キャラクターがなかなか個性的で面白いし、1巻時点では各キャラクターの背景に何やら色々抱えていることがありそうで、この先が気になることは確か。おそらく今後登場するであろうエミィも曲者であってほしいなー。

見えない違い 私はアスペルガー
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レオン・ラ・カム

レオン・ラ・カム

世界で絶賛されたアニメ映画監督シルヴァン・ショメと、不動の人気を博すBD作家ニコラ・ド・クレシーが贈る衝撃作! “クレシーさんはリアリストでありながらそこにファンタジーを織り込む魔術師なのだと思います"(古屋兎丸) “あの日、あのとき、クレシーの作品に出逢っていなければ、私は作家になれていたのかどうかもわからない"(D[di:]) 毒と秘密と愛を携えて、麻薬のようなおじいちゃんが帰ってきた……。 斜陽の親族企業のもとに、創業者であり、一族の父祖・レオンが数十年ぶりに帰ってきた。 レオンの孫である気弱な青年ジェジェは一度も会ったことのない齢百にも達する奇妙な祖父に、はじめは警戒心を抱くが――。

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シャングリ=ラ

シャングリ=ラ

地球が居住不可能となった未来、人類はスペースコロニーでの生活を余儀なくされていた――。新鋭マチュー・バブレが圧倒的な画力で描く悲しく美しいディストピア。スペースコロニー「ティアンズ」。21世紀に起きた天変地異のせいで居住不可能となった地球に代わり、人類は宇宙空間に漂うその場所での生活を余儀なくされていた。人類の大半はコロニーの現状に満足しているが、中には不満を抱き、反乱を企てようとしている人々もいる。そんな折、ティアンズ各地の原子力研究所で不可解な爆発事故が続発し、上層部の依頼を受けたスコットが、調査に乗り出す。調査の結果は深刻で、コロニー全体が危険にさらされていることが判明する。スコットは一刻も早く対策を取るよう提言するが、なぜか上層部は動こうとしない。同じ頃、「ホモ・ステラリス(星のヒト)」と呼ばれる新人類を創造し、彼らを土星の衛星タイタンのシャングリ=ラ平原に送り込むプロジェクトの存在が明らかになり、人々の間に動揺が走る。そんな中、辺境の研究所を訪れたスコットは、衝撃的な光景を目の当たりにする――。気鋭の作家による美しくも悲しいディストピアSFバンド・デシネ。

ルーカス・ウォーズ

ルーカス・ウォーズ

「ジョージ・ルーカスの生い立ち」と「『スター・ウォーズ』誕生までの舞台裏」を描く 壮大な一大叙事詩がこの1 冊に! 昨年秋、フランスで発売されるやいなや、初版5 万部が即日完売!! 『スター・ウォーズ』ファンが⾧く待ち続けた待望の1 冊!! ##解説 いまや映画業界における伝説ともなっている、ルーカスの生い立ちから、無名時代におけるスタジオとの戦い、『スター・ウォーズ』が誕生するまでの数々の苦悩と挑戦、そしてそれを支えてきた当時の妻や友人たちとのエピソードが、本書でついに明らかにされる!? これまで封印されてきた泥臭い人間模様から、既に忘れ去られている細かな出来事まですべて網羅して構成された本書は、公式本では絶対出てこない話ばかり。また、このルーカスの成功物語は、それ自体が壮大な一大叙事詩ともいえる内容で、ファンはもちろんのこと、現代に生きるすべての人の心に強く響く。本国フランスでは5 万部が即日完売。ジョージ・ルーカスと夢を諦めずにいるすべての人たちに捧げられた、フランス版コミック翻訳本の決定版。 ##内容 1977年に公開され(日本公開は78年)、映画史に残る大ヒットを記録した『スター・ウォーズ』。その舞台裏には、波乱に満ちた出来事が日夜繰り広げられていた!? 本書はルーカスの幼少期から、反抗的でカーレースに明け暮れていた青春時代までさかのぼる。死の淵をさまよう大事故に見舞われ、九死に一生を得たルーカスが人生を考え直して進んだのは映画製作の道。注目された学生時代、スピルバーグやコッポラとの出会い、スタジオに評価されなかった無名時代、『スター・ウォーズ』の構想から製作、次々と降りかかる災難、最後の最後までルーカスの才能に懐疑的だったスタジオ、そして大成功を収めるまでの激動かつ苦難の日々が描かれる。

試し読み
ポルトガル

ポルトガル

人生は灰色。パリ郊外在住のバンド・デシネ作家シモン・ミューシャは、ここしばらくスランプに陥り、生きる意味を失ってしまっている。あるフェスティバルに招かれ、ポルトガルで数日間過ごすことになったシモンは、長らく忘れていたことを思い出す。幼少期にかいだ匂い、夏休みならではの笑い声、そして家族のぬくもり。どうして自分には根なし草だという感覚がつきまとっているのだろう。どうしてひと言も理解できないポルトガル語を耳にして、その響きにこんなにも心が揺さぶられるのだろう。その秘密はミューシャ家の来歴にあった……。シモンは自ら蓋をした過去に向き合う旅に出ることで、進むべき道を再び見出す。はたして彼は、曇天の人生を抜け、雨上がりの空に虹を見上げることができるのか――。ある中年男の自己回復の旅を、自伝的要素も盛り込みつつ、自由な筆致とみずみずしい色彩で描いたシリル・ペドロサの代表作ついに翻訳。自分の居場所がわからなくなってしまった大人に送る物語。

ポリーナ

ポリーナ

第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞した バスティアン・ヴィヴェスが描くフランス発、バレエ漫画! バレリーナを目指すポリーナが6歳の時に出会った厳格な師、ボジンスキー。ボジンスキーがポリーナに教えたのは、バレリーナは努力や苦労を見せてはならないということ、そして、踊りを通して豊かな感情を表現するということ。その後、才能を認められ、アカデミーへと進んだポリーナだったが、一方で少しずつ踊ることへの喜びを見失いつつあった。喜びも悲しみも、成功も挫折もすべてバレエと共にあった。やがて時が経ち、再びかつての学び舎を訪ねたポリーナは……。

塩素の味

塩素の味

フランスBD界がその才能に驚愕した当時28歳の新鋭アーティスト、バスチャン・ヴィヴェス。みずみずしい感性で描く新感覚BD、初邦訳でついに登場!脊柱側湾症を患い、かかりつけの運動療法師の勧めでプールに通うことになった少年。最初のうちはあまり気のりしない彼だったが、泳ぎの上手な少女を見かけ、彼女と親しくなる。毎週水曜日、プールで逢瀬を楽しむ二人。彼女に惹かれていくにつれ、水泳そのものの魅力にも目覚めてゆく彼だったが……。表題作『塩素の味』の他、男女の他愛無い会話やすれ違いを一貫した「僕」の視点で描く『僕の目の中で』も同時収録。

超級装備(アウトロー・スキル)で無双して、異世界王に俺はなる!~OUTLAW PLAYERS~

超級装備(アウトロー・スキル)で無双して、異世界王に俺はなる!~OUTLAW PLAYERS~

オンラインゲーム『テラ』の世界から出られなくなり、しかも現実世界の記憶まで失ってしまった少年・サク。ひょんなことから出会った女盗賊・ヴェルダにそそのかされて、簡単なサブクエストでお金を稼ぐことに。――のはずが、突如巨大なモンスターが出現!強力な敵を前に、手も足も出ないサク。剣も体も限界になったとき、右手のショボい装備が光り出し――!? ゲームの世界に取り残された少年の、最強ギルドをつくる大冒険が始まる!!

最高の夏休み

最高の夏休み

あの夏、忘れられない家族の想い出。みんなが一年で一番楽しみにしているイベントは“夏のヴァカンス”。だけど今年のヴァカンスはいつもとちょっと違う、切ないハプニングの連続だった。バンド・デシネ作家のピエール、妻のマド、そしてジュリー、ニコル、ルイ、ポーレットの4人の子供たち。ベルギーのブリュッセルに暮らすファルデロー一家は、毎年夏になると、マイカーに乗って旅行に出かけるのが恒例。1973年―ミシェル・サルドゥーのシャンソン「恋のやまい」が大ヒットした年。出発前にゴタゴタがあったものの、その年も一家は意気揚々と夏の一大イベントに出発する。目的地はもちろん太陽が降り注ぐ南フランス。一家は、ルノーの赤い4Lに乗り込み、歌い、騒ぎ、寄り道をしながら、南へと向かう。明るい陽射し、そよ風、誰もいない自分たちだけの川辺。どこか懐かしい風景と特別な時間。夏休みの体験が、家族の間にあるわだかまりを解き、一家の絆をより深めていく……。瑞々しい筆致で、ノスタルジーたっぷりに送る、かけがえのないフランスの夏休み。

闇の国々[分冊版]

闇の国々[分冊版]

〈闇の国々〉――それは、我々の現実世界と紙一重の次元にある謎の都市群。政府公認の都市設計家として、完璧なシンメトリーを実現した都市ユルビカンドの建設を進めていたユーゲン・ロビックは、ある日、掘削機の刃が欠けてしまうほど堅固な物質でできた、奇妙な立方体の骨組みを手に入れる。やがてその奇妙な物体は骨組みを延ばし、部屋いっぱいに広がり始めた。刻々と成長を続ける立方体はやがて部屋を突き抜け、外部世界を侵食しはじめるが……。(この作品は『闇の国々』に収録されています。重複購入にご注意ください)

闇の国々II[分冊版]

闇の国々II[分冊版]

〈闇の国々〉――それは、我々の現実世界と紙一重の次元にある謎の都市群。人々が平穏に暮らす都市クシストスで、ある噂が広がっていた。ここ数年の間、近隣の都市サマリスを訪れた旅人がことごとく姿を消していたのだ。調査員としてサマリスに派遣されたフランツ・バウアーは、閑散として、どこかよそよそしい雰囲気を持ったこの巨大な都市の秘密に巻き込まれていく……。(この作品は『闇の国々II』に収録されています。重複購入にご注意ください)

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