文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞作「夏休みの町」にコメントする
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夜とコンクリート

この短篇集に収録された「青いサイダー」はあまりにも天才的!

夜とコンクリート 町田洋
兎来栄寿
兎来栄寿

読み始めてすぐに衝撃を受け、読み終えると五秒ほど深く嘆息しながら、その卓越したセンスに拍手を送るばかりでした。漫画読みでいて良かった、と心の底から思えた作品です。そして、何度か読み返す内に涙すら零れて来ました。 町田洋先生のこれまでの作品は、イメージでいえば圧倒的に「夏」。自分の中にある過去の夏の情景が想い起こされます。しかし、それは常夏の南国のような陽気な夏ではありません。どちらかと言えば、夏休みのプール教室に行ったものの知り合いが誰もおらず蝉時雨の中で歩んだ孤独な帰り道や、最後の一本の線香花火の火が消えて後片付けをしている時のような、鮮烈な季節の中にある陰。夏の終わりに存在する、独特の寂しさのようなものを感じさせます。そして、それは切なくもどこか仄かに温かです。   ■ 町田洋、その誉れ高き新鋭 町田洋先生は、そもそもが珍しい経歴の作家です。元々は自サイトで漫画を掲載していた所、電脳マヴォに掲載。そして、デビュー作となる前短篇集、『惑星9の休日』が、描き下ろし単行本として祥伝社から昨年刊行されました。今の時代、連載も無く単行本が出される、しかも新人が、というのは非常に稀なケースです。ネットの海の中で人知れず花を開いていた才能が発掘され、そうして特殊なルートでデビューを果たすことができたということは、マンガ業界における一つの希望でもあります。 それに続き、電脳マヴォに掲載された三作品を中心に、描き下ろしとして8ページの短編「発泡酒」を加えて書籍化されたのが、二冊目となる『夜のコンクリート』。その内の一作「夏休みの町」は、文化庁メディア芸術祭で新人賞を受賞しています。 ちなみに、『夜とコンクリート』刊行にあたって、最初は電脳マヴォに「青いサイダー」だけを残すことが町田先生に提案されたそうです。しかし、その提案とは逆に町田先生は「青いサイダー」のみを掲載作から外すことを要望したのだとか。私はそのエピソードを知って、とても納得が行きました。それは、言い換えれば他の2篇をWEBで読んで既読の状態であっても、本を買った時に「青いサイダー」さえ読んで貰えれば満足して貰えるだろうという自信の表れではないでしょうか。   ■ かつて見たこともない描線が織りなす、独特の世界 町田洋先生の描く絵は、シンプルですがそれ故にエモーショナルです。 表題作「夜とコンクリート」と「発泡酒」ではフリーハンドで、「夏休みの町」では定規を使った作画になっています。 その中で、異彩を放つのが「青いサイダー」。この作品だけは、全ての絵も書き文字も、Windowsのペイントで描いたかのように直線のみで構成されています。 数多くの漫画作品に触れて来た私ですが、かつて出逢ったことのない画面作りにまず衝撃を受けました。 『夜とコンクリート』P109 > この島はシマさんという > ステレオタイプな島だねと > 人はいうだろうけど > まぎれもなく僕の友人なのだ という、1ページ目から始まる「青いサイダー」。何を言ってるか解らないと思いますが、私も解りませんでした。しかし、このちょっと掴み辛い物語、読み進め、じっくり咀嚼するとその味わい深さに唸らされて行きます。 近年の中でも、町田洋先生は静寂を紙の上に現出させるのが一番上手い作家です。敢えて何も語らせない、キャラクターが無言でいるコマの多さ。そして、どこまでも静謐を感じさせる広漠な風景。それらは謂わばミロのヴィーナスの両腕のようなもので、無限の想いの余地が茫洋として広がり行きます。ぽっかりと開いた空間に夏の匂いと追憶を感じながら、そこに成長と共にある大人になることへの寂寥感、それとコントラストを成す大人として世界の要請に付き合ったが故に生じた後悔といった繊細な情動がもたらされ、胸を締め付けられます。   ■ 今年の夏の傍らに、町田洋を 「夜とコンクリート」「夏休みの町」「青いサイダー」「発泡酒」という四篇によって構成されるこの本は、一冊の短篇集として総体的にも完成度が高いです。「夏祭り」や「夏影 -summer lights-」を夏が来る度に聴きたい曲だとすれば、『惑星9の休日』と『夜とコンクリート』は夏が来る度に読みたいマンガ。 是非、夏の夜に一人静かになれる場所で、町田洋という海に潜ってみて下さい。漫画の世界の無限性を改めて感じさせてくれる、清冽なる才気がそこに輝いています。

魔界転生

聞いて驚け、読んで奮え、これ日本漫画界随一の傑作、連載じゃない、綺麗に完結、描き下ろし

魔界転生
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)

ジェロニモとの戦闘開始をラストに置く打ち切り漫画染みた構成だがこの『魔界転生』はレビューのタイトル通り単行本描き下ろしでの発表だったので連載の過程でここに着地した訳じゃなく二人の決着が分からない結末としてあえて描かれている事に注目すべきかと思う。 実際、物語の中で魔界衆と十兵衛との闘いの決着はついている様なもの。剣の為に生きる余り魔道に堕落したかつての憧れ宮本武蔵を喝破し死者も聖者も兼ね備える大天使として復活し弔いの旅を続ける十兵衛に比べれば己の力のみを欲して悪魔に身を売る魔界衆も矮小に過ぎない。詰り、他の人も言っていたと思うがジェロニモと十兵衛との闘いは(少なくとも人格の上では)決着がついている。 然し、その勝負は描かれず終結する。それはなぜか? 蓋し、幾ら人格的には十兵衛に及ばないと言えども能力、武力が底知れない事にならないとそれはそれで楽しくないからじゃないか?それに、十兵衛が尊いのは常に戦い続けるからで、常に挑戦を続けるにはやっぱり敵が天井知らずに強いに限る。この漫画のラストはそういうワクワクと予定調和的な精神性の両立としてやっぱり優れていると思う。 石川賢は大変アクション描写にすぐれた漫画家だが、彼の常に動き続けるアクションの思考はこういう形で物語にも表れており、裏打ちされてるからより魅力的なんじゃないかなと思った次第です。

よるとこんくりーと
夜とコンクリート
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