昭和という世界観
現在の大友の絵的な主題は、緻密な世界観を一度構築して、崩壊する様を描くことにある。AKIRAがそうであり、同タイトルの映画ショートピースで江戸という世界観が燃え上がる、スチームボーイでも蒸気機関の世界が崩壊していく。しかしそれはAKIRA以後の話で、それ以前の大友の絵的な主題は昭和を描くことにあった。如何に昭和をリアルに描くか、さらにはそこに生きる末端の人間を描くかが初期の大友克洋である。ページをめくるたびに、昭和に生きていない筈の私が何故か懐かしさを感じてしまう。色気のある線で描かれた風景が昭和の空気や匂いまでも思い起こさせる
たまたま、ブックオフで奇想天外社から出されていたショート・ピースを発見した。収録作品はむしろ双葉社からの方が増えているらしいが、装丁が微妙に違う。
どちらも「犯す」の扉絵を使っているが、奇想天外社の方は表表紙に赤い口紅、裏表紙に青いマスカラで化粧をしている。奇想天外社の方の装丁結構好きだな。
もう一つ違いとしては、大友克洋のあとがきが奇想天外社の方にはあった。なんていうかデビューしたての新人漫画家感のあるあとがきで「本当にこんなの出しちゃっていいの?」とか言ってて、なんだか新鮮だった。