西森博之作品はなぜ大メジャーにならないのかにコメントする
道士郎でござる
行動理念は武士道
道士郎でござる 西森博之
名無し
「力なき正義は無力なり、正義なき力は暴力なり」という言葉があります。社会的にも肉体的にも力のない僕には全く関係のない言葉ですが、『ザ・ムーン』や『DEATH NOTE』をはじめ、正義を問いかける作品は強くココロに残っています。その中でも、もっと身近な正義を描く『道士郎でござる!』が、僕は大好きなのです。  物語は、12年前にアメリカに渡った桐柳道士郎が、なぜか武士になって日本に帰ってくるところからはじまります。ふと、現代に蘇った憲兵を描く『ケンペーくん』(ならやたかし)を思い出しましたが、道士郎とは全く関係ありません(これもある意味、正義を問いかける作品であります)。道士郎はチートといえるほど強大な力を持つ男です。そして、行動理念は武士道。武士道的観点からクズだと思えば、ヤンキーだろうがヤクザだろうが問答無用で叩き潰します。道士郎が殴ればヤンキーは空中を回転しながら飛んでいき、復讐など考えられないほどのトラウマを植え付けられます。身近にある悪に天誅を下すのが道士郎なのです。  向かう所敵なしの道士郎の代わりに、物語の主役となっていくのが、道士郎に目をつけられ、殿にされてしまった健助です。健助は、小心者で、常識的で、自身に危険のない範囲で優しい、そんな普通の少年です。道士郎に関わったことで、ちょっとした優しさを発揮してしまったがゆえに、どんどん道を踏み外し、高校は退学し、転校した底辺校では級長になってしまい、挙句の果てに、ヤクザと対決するはめになります。  はじめのうちは、健助が巻き込まれたトラブルを道士郎とが解決するという、「水戸黄門」か「いけ、ピカチュウ!」のような展開もあります。しかし強大すぎる道士郎の力と見境のない正義感は、およそ制御できるものではなく、放っておけば無限にトラブルが拡大してしまうのです。社会から完全にはみ出した道士郎という存在に振り回されることなく一般生活を営むために、健助は自分の力で解決を目指すようになっていくのです。  健助はちっぽけな人間でしたが、道士郎によって追い詰められることで身につけたクソ度胸で、強大な敵に立ち向かうことができるようになります。どんな敵でも必ず倒す道士郎と、弱くて殴られても決して折れない健助の姿に、周囲のクズたちも少しずつ変わっていくのです。あの二人がいるから俺は頑張れる――そうやってグズでザコだったモブキャラが頑張る姿には心動かないはずがないのです。  とてつもなく笑えて、グズの所業に心から頭にきて、成長するキャラクターたちに感動する……全8巻の短い物語の中で、あらゆる方向に心が揺さぶられる、王道の名作が『道士郎でござる』なのです。
目の前の神様
笑いも熱量も狂気もある快作将棋マンガ #1巻応援
目の前の神様
兎来栄寿
兎来栄寿
『バンオウ―盤王―』を激推ししている私ですが、『ジャンプ+』でまた新しい将棋マンガが始まったときは驚きました。 題材が被っているけど大丈夫かな? と私含め多くの人は思ったことでしょう。しかし、そんな杞憂を一瞬で払拭する面白さがこの作品にはありました。 要素としては色んな作品のエッセンスを感じますが、総合するとかなり独特な読み味です。とにかく1話から主人公の大刀がゆるい。 「スマートスピーカーのやること少なくね⁉︎ 電気消す仕事ってなんだよ…… お前一日中家にいるのに仕事それだけかよ オレだって電気消す仕事のほうがいいよ……!」 などの独特のセンスによるギャグパートが分量的にもかなり割かれているのですが、面白くて好きです。その後、更に発展するスマートスピーカーのやり取りは声を出して笑ってしまったほど。 チョコチップも大納言あずきも食べたい気持ちを抑えられず、翻訳サイトみたいな喋り方になる田原先生なども好きです。 一方で、そんな笑いと並列にゾクっとするような棋士の狂気や、対局の熱さも描かれます。 2,3話まででも読めば、この作品の上手さは存分に伝わるでしょう。 「一番を目指す気持ちが無ければ こっちに来ちゃいけないよ」 と田原先生が桜吹雪の下で語るシーンの 「一番になれないと苦しい なるまでも苦しい」 という言葉。そこまでは、そうだろうと納得できるでしょう。しかし、それに加えて 「なれたとしてもずっと苦しい」 と言い切ります。そうまでして、何のために一番を目指して指し続けるのか。 その件を受けての3話。 他者を見下す村井が、「奨励会という箱の中」で苦しんだ末にいつしか将棋のことがただの仕事になってしまい、最後に大刀との差異をはっきりと自覚して吐露するシーン。 それぞれ単体のシーンとしても良いですし、2話からの3話という構成としてとあまりにも綺麗で、そこからはもうずっと大好きな作品です。 その後の老練な棋士とのプライドのぶつけ合いも熱いですし、異能ひしめく棋界の魅力的な登場人物もどんどん出てきて盛り上がりを見せてくれます。しかし、そんな強者たちの中にあっても主人公が埋もれない魅力を持っているのもすごいです。 笑えて、滾れて、震える。 毎回、次を早く読みたくて仕方なくさせてくれる注目の将棋マンガです。
DOUBLE HELIX BLOSSOM
コロコロ発SF少女バディアクション #1巻応援
DOUBLE HELIX BLOSSOM
兎来栄寿
兎来栄寿
女の子同士のバディものは古来から名作が多いと相場が決まっています。そして、ちょっと啀み合っているくらいがちょうどいい。そう思う方には、うってつけの作品です。 コールドスリープから目覚めると、自分がいた2020年代から60年経った2080年代の東京にいた東雲菊。その時代では通称「特能」と呼ばれる外部神経を体外に伸ばしてコントロールする超能力が極一部の人間に発現しており、法規制されているものの犯罪が後を絶たない状況に。悪化する治安を食い止めるべく、民間企業に警察の業務が委託され「民警」と言われる民間警察が普及しているという世界設定です。 菊の相棒となるのが、菊のことを「おばあちゃん」と呼ぶ16歳の月下香(つきさがりきょう)。世界で唯一の「クラス9」の特能使いで、大量殺人を行った凶悪犯罪者です。地雷がどこに埋まっているかもわからず、何かあると菊も殺そうとすらする危う過ぎる人物なので緊張感もありながら、その中で発生するコミュニケーションに面白さがあるコンビです。 時代によって失われた誰かを守るために真っ直ぐであろうとする価値観を持ち続けて戦場で駆ける菊。そんな菊の在り方に、ときに苛つきときに戸惑いながらも少しずつ距離を縮めていく様子が良いです。 コロコロレーベルということで対象年齢はやや低めに作られていますが、子供のころからこうした良質なバディものに触れられたなら素敵な大人に育っていくだろうなと思わずにはいられない作品です。

道士郎でござる

どうしろうでござる
著者:西森博之
最新刊:
2014/09/29
どうしろうでござる
道士郎でござる 1巻
道士郎でござる 2巻
道士郎でござる 3巻
道士郎でござる 4巻
道士郎でござる 5巻
道士郎でござる 6巻
道士郎でござる 7巻
道士郎でござる 8巻
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