恋せよキモノ乙女

着物は大人の変身ドレス!

恋せよキモノ乙女 山崎零
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

OLの野々村ももの趣味は、祖母の形見の着物で外出すること。四季折々の柄を取り合わせ、特別な自分に変身!友達と、家族と、そして素敵なあの人と……軽やかに情緒を纏って巡る、関西周遊記。 ----- 週末になると、ももは外出先を選び、そこに似合った着物を選ぶ。そして、着付ける手順が毎話2〜3ページ費やして、丁寧に描かれる。 楽しい時も辛い時も、気を取り直して、すっと背を伸ばし、着物に袖を通す。ゆっくりくるりと帯を締めると、不思議と気持ちが華やいでいる。その瞬間、ももは「特別な女の子になる」と言う。 これは……「変身物」だ。 そう、魔法少女とかのアレ。 派手さはないけれど、確かに非日常の衣を身に纏うことで、奥手なももは、恋に新たな目標に、前向きに頑張れるようになる。毎話の着付けシーンは、特別な自分になる「変身シークエンス」のようだ。 勇気をもらえる、綺麗で落ち着く「魔法のドレス」としての着物。 この物語は、休日に日常を離れ、着物という法衣を着て世界を彷徨う、大人の恋の冒険譚……と言えるかもしれない。 ままならない恋模様に、ももが健気に頑張る姿を追いながら、ももが訪れる、着物が似合う関西の素敵スポットをチェックして、楽しみたい。 その内に着物の専門用語も、何となく耳慣れてくるので、大丈夫! 第5巻が2020年1月9日発売!

桃源郷で待ち合わせ

仄暗い桃源郷とそこに射す薄明かり。注目のデビュー短編集

桃源郷で待ち合わせ 秋60
兎来栄寿
兎来栄寿

主に小説Wingsに掲載されていた作品を収録した、秋60さんのデビュー単行本。 表題作の「桃源郷で待ち合わせ」から引き込まれました。 「パンくわえて登場すんな美少女か!」 とツッコまれる冒頭からは想像もできなかった展開が待っています。社会のルールでは押し込めようもない人間個人の感情に向き合って描いてこそ文学であり、芸術。そういう意味で、非常に文学的な作品です。 そしてそれは同時に収録されている他の二篇も同様です。 「最終上映」は山の上の旅館を舞台にした作品で、個人的に親近感を覚えました。旅館業は無限のタスクが秒単位で生じ続けるので、表出しないストレスもあっただろうな、と。ヒロインの自覚ある未熟さ、兄妹が奥底に秘めた願い、いずれも愛しいものでした。 「戀」は作者曰く「明るいお話」ですが、十分に悲しみが湛えられているお話。「戀は盲目」という言葉を想起せずにはいられない内容でした。お互いがお互いのために存在していて良かった、と思える関係性。 全体的に綴られているのは、悲しみ。ただ、希望と呼ぶにはあまりに儚いものの、悲しさだけで終わらない仄かな光もまた存在します。余白の美を感じる構成で、構成力に妙のある方だと思いました。単行本で三篇が並べられた時にすべてがうっすらと繋がっている部分があると感じられるのは偶然でしょうか。 尚、百合が好きな方にはとりわけお薦めできます。 2020年注目の新鋭として、今後の作品も楽しみにしたいです。

バタアシ金魚

バタアシ金魚のカオル君みたいになりたい

バタアシ金魚 望月峯太郎
かしこ
かしこ

あなたにとって望月ミネタロウの代表作は何ですか? 私にとってのそれは「東京怪童」なんですけど。こないだ始まった「フレデリック」で【あの「ドラゴンヘッド」と「ちいさこべえ」の作者の新連載がスタート!】と紹介されててビックリしました。あれ!?「バタアシ金魚」は!?と。まあ、代表作があり過ぎるということかもしれませんが…。 私が「バタアシ金魚」を読んだのは10年位前ですが、主人公・カオル君のブレーキが壊れた熱血さが理解できなかった。これは連載当時との感覚が合わないから起こるギャップなのかな?と思ってたのですが、どうやらリアルタイムで読んだ人にとってもカオル君の熱さは時代遅れで、みんなソノコ状態だったそうです。でも圧倒的に表現の仕方が新しくてカッコ良かった!と聞いたことがあります。 岡崎京子のエッセイでも「バタアシ金魚のカオル君みたいに」という言葉がありましたが、カオル君のバカみたいなガムシャラさって、本当はどんな時代でも一番カッコいいことであるべきなんじゃないかと思います。 今、このクチコミを書いてて「ちいさこべえ」の主人公とカオル君って似てるかも?と気づきました。望月ミネタロウが描いている、人間にこうあって欲しいと思う姿(ヒーロー像?)って、初めから変わっていないのかもしれません。