女王の花

姫と奴隷の信頼と恋は…

女王の花 和泉かねよし
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

舞台は架空の中国の王朝。王子が産まれたため冷遇される王家の姫と、異人で疎まれる奴隷の少年は8歳の時に出会い、主従として、そして無二の友として絆を深める。私はこの物語を何度読んでも、随所で泣きそうになる。 泣きそうになるのはほぼ同じポイントだ。それは「二人で何処かへ行きたい」と願う時。 第二王妃に国を追い出される姫は、彼女に復讐を誓うが金も味方も無く、絶望的に孤立無縁。尊厳を常に奪われる彼女を支えるのは、ともに苦労を重ね、同じ師の元で研鑽を積む奴隷の少年。互いへの信頼は否応なく恋へと変わってゆく……あらゆる点で強まる二人の絆を、美しいと感じる。 しかし事は単純ではない。情勢に翻弄される姫はやがて、祖国の王となる道を選ぶが、王となるには相手と離れる必要に迫られる。互いのため、離れる覚悟をする二人。しかし別れ難く苦悩を深め、行動に迷う。 そして苦悩極まった時、二人は全てを捨て、放浪する夢を見る。 「千年の花」という呪文……千年に一度咲き、あらゆる願いを叶える花を思いながら、二人はただ、二人で生きることだけを夢想するのだ。 敵対する恐ろしい第二王妃の「成長譚」も対置させた物語はそれも含めて、人の不自由さや、人の幸せとは何なのかを切なく考えさせる。

新装版 機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人

熱き長谷川節で描かれるクロスボーンシリーズ最高傑作漫画 #完結応援

新装版 機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人 長谷川裕一 矢立肇 富野由悠季 矢立肇・富野由悠季 カトキハジメ
カワセミ㌠
カワセミ㌠

無印クロスボーン(UC0133)から約3年後(UC0136)の世界が舞台となっておりドゥガチ総統が密かに計画していた神の雷計画なる作戦を引き継いだ新総統ら木星帝国とそれを阻止すべくトビア達クロスボーンバンガードの戦争が再び始まる所から物語は始まりますが、無印・骨の心を超える壮大なスケールかつ戦闘シーンに加え長谷川先生の色濃い台詞回しやストーリー展開に次々と圧倒され現在も続いていりシリーズの中でも一番の傑作と認識した作品となっております まずストーリー性や登場人物についてですが無印時代はF91の続編としての意識や木星帝国とは何か?といった説明的色合いが強くそれになぞった物語だったのに対し鋼鉄はそれらをより発展させつつも登場人物達やVガンダム要素の掘り下げが素晴らしく短い巻数ながらも調和が取れており広大スケールで描ききった様は非常に良かったですね 次に戦闘・メカニックについてですがガンダムシリーズならではの発展・新型のデザインや特長は勿論ですが何故この様なMSになったかの閃きやアイディアが非常に練られており特にラスボスやトビア達鋼鉄の7人作戦メンバーのMSが気に入りましたね 最後になりますが短編作ながらも一部ゲームや映像化に加えキット化する等人気上昇中となっている本作を無印から一気読みしてクロスボーンガンダムの世界観に足を踏み込まれてはいかがでしょうか?

GROUNDLESS

疫病や内紛が飛び交う島国を描く戦争スナイパーアクション作

GROUNDLESS 影待蛍太
カワセミ㌠
カワセミ㌠

物語の舞台となる架空の島国アリストリアではとある疫病の蔓延と隣国の大陸政府や処置に不平不満を抱く人々達が暴徒化する等の内乱状態に突入しそれに主人公一家が巻き込まれた所から物語は始まりますが人々の魅せる混沌とした有り様や兵士となって戦う銃撃戦が非常にリアリティーが高く練りに練られたストーリー性も相まってとても読みごたえがありましたね 中でも一番目に付いたのが銃器や作戦内容に関するシーンで、私自身はミリタリーに詳しく無いのでちゃんと理解出来るか不安がありましたが洋画でもお馴染みのブリーフィングや上官からの説明シーンが意外に多くすんなり頭に入ったのもそうですが銃撃戦の運びや画力が素晴らしく作品の世界観に圧倒され続けられた等初心者にも満足出来る内容だったのが大きいですね ただ問題点として当たり前なのですが銃撃戦のグロさや疫病や内紛での混乱からなる暴力シーンが中々強烈な作品で巻を増す事にレベルが増し増しになっていきますのでそういった感じが苦手な方はやはり避けた方が良いですが私みたいに銃撃アクション・スナイパーや戦争物が好きならばオススメしたい作品ですね

ゴールデンカムイ

一生、ナコルルに支配されるはずだった僕のアイヌ知識を更新してくれた

ゴールデンカムイ 野田サトル
名無し

僕と同世代でゲームに夢中だった人間は、少しだけアイヌ語を知っているものです。「アムベヤトロ」とか「アンヌムツベ」とか、意味は全くわからなくてもなんとなく言えてしまうのは、格闘ゲーム『サムライスピリッツ』の美少女・ナコルルのおかげなのです。このままでは一生、ナコルルに支配されるはずだった僕のアイヌ知識を更新してくれたのが『ゴールデンカムイ』です。  『ゴールデンカムイ』の舞台は日露戦争直後の北海道。主人公である杉元は、一攫千金を狙って砂金掘りをしています。戦争中、鬼神のような戦いぶりから「不死身の杉元」と呼ばれた杉元が、なぜそのようなことをしているかというと、戦死した親友の妻の病気を直すため、どうしても大金が必要になったのです。  そんな杉元に、酔っ払った男が北の大地のどこかに隠された「金塊」の話をします。そして、大金の隠し場所を示した暗号が、網走監獄から脱走した死刑囚の身体に刺青として掘られていることも…。酔が覚めた男は「しゃべりすぎた」と杉元を殺そうとします。そこで杉元はこの話が与太話ではなく真実であると確信し、謎を追うことになります。  杉元の相棒となるのがアイヌの少女アシリパ。彼女の父は「金塊」のために殺されていて、その仇を探しています。アシリパのアイヌ猟師としての知恵と知識と、杉元の不屈の精神で、彼らは北の大地を巡っていくのです  それにしても『ゴールデンカムイ』の良い所は次から次に話が展開していくところですね。3巻の時点で杉元が戦った相手は熊→熊→囚人→屯田兵→集団屯田兵→熊→ベテラン猟師…大自然の脅威から新撰組まで次々と二人に襲いかかり、それを知恵と勇気で乗り越えていくのです。  『ゴールデンカムイ』にはサスペンスとド派手なアクション、異文化の知識と、面白い要素がたくさん詰まっています。中でも料理漫画としての要素を見逃してはいけません。戦い、追い、逃げる二人はとにかくよく食べます。鹿や熊はもちろん、兎やカワウソまで、捌き方から料理法まで詳しく書かれていて、なんだかとても美味しそうなのです。  脳みそから目玉までおいしく頂くアイヌの料理に戸惑う杉元や、味噌がうんこにしか見えないと拒否するアシリパさんの異文化交流ぶりも楽しく、料理が『ゴールデンカムイ』という作品の壮大さにもつながっているのです。  厳しい自然との戦いや、骨太のサスペンス、それていて生活感があるという『ゴールデンカムイ』不思議なエンターテイメント巨編なのです。

黒博物館 スプリンガルド

今最もちょうどいい藤田和日郎入門マンガ #マンバ読書会

黒博物館 スプリンガルド 藤田和日郎
名無し

藤田和日郎作品大好きな自分が藤田マンガをオススメするときにいつも困るのが「めちゃくちゃ巻数ある」ということ。うしとら33巻、からサー43巻、月光条例29巻、双亡亭25巻。いきなり読んでもらうにはさすがにハードル高いですよね(でも全部読んでくれ)。 そんなわけでこの黒博物館『ブラック・ミュージアム』シリーズは藤田和日郎入門にピッタリかと思います。 第一作「スプリンガルド」は1巻完結、第二作「ゴーストアンドレディ」も全2巻、現在合計3巻とコンパクト。 https://manba.co.jp/boards/11724 メインの舞台装置はロンドン・スコットランドヤード所管の黒博物館。 さまざまな犯罪にまつわる証拠品や資料が収蔵された怪しい雰囲気の博物館にこれまた怪しい雰囲気のキュレーター(学芸員)が勤めており、読者は博物館の入館者とともに収蔵品の秘密に迫る…というのが基本の流れ。 ブラック・ミュージアムは実際に存在する施設だけあって、毎回歴史上の事件や人物が登場するリアリティのある描写も大きな魅力です。 https://youtu.be/lRusAqLia1U 「スプリンガルド」ではロンドンを騒がせたバネ足男の怪奇、「ゴーストアンドレディ」では劇場に住み着いた幽霊ととある女性の出会いを描いていて、それぞれ独立したオムニバスのシリーズになっています。読みやすいですね!(アピール) さらに2022年3月現在、モーニングで新シリーズ「三日月よ、怪物と踊れ」の連載も始まりました。既存の3冊を読んだころには新作にスムーズに合流できる、まさに「今最もちょうどいい藤田作品」が黒博物館シリーズなのは間違いないでしょう。 https://manba.co.jp/boards/156757 …というかうかうかしているとまたすぐ次の長期連載が始まるか、なんならちょっと目を離した隙にこの黒博物館シリーズ自体が10作以上増えているかもしれん!「ちょうど今」なんです、マジで! 以上、藤田和日郎沼に浸かろうという方はまずはこの黒博物館に入館してみては…読み終わる頃にはミステリアスなキュレーターさんと謎に満ちた収蔵品の物語の虜になっているはず。

アンナ・コムネナ

自己"皇帝"感高い皇女の生き様 #1巻応援

アンナ・コムネナ 佐藤二葉
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

時は十字軍初遠征の頃、ビザンツ帝国の皇帝の娘として生まれ、夫を早くに亡くしたアンナ皇女は新たな婿を取る。 弟が生まれた事で皇位継承権を失っていたアンナ。弟と敵意剥き出しに口喧嘩するのが可笑しくもありつつ、頼りないと思っていた夫に自らを深く理解され、強く想い合う様子にときめきを貰える。 アンナはめげない。どこまでも自分らしさを失わないまま、素晴らしい皇帝になれると信じて疑わない。知恵と好奇心と気高さに満ち、そして理性的な思考は現代人から見ると真っ当に見えるが、時代的には異端。 宮廷の女性の生き方に反発を覚える様子が、何度も描かれる。女性だから能力を軽んじられる、生きたいように生きられない、美貌も結局男性の所有欲に絡め取られる、女性は女性なりの戦い方しか出来ない……これらにほんの12、3歳のアンナが否を突きつけ、男とか女とかではない、アンナらしく生きるのだ、と宣言するのが小気味良い。 歴史物に現代的言い回しを取り入れた、軽やかなやり取りを笑いつつ、自分らしい人生を歩み始める一人の女性の真っ直ぐな意志に胸打たれる、そんな作品だ。