チンギス・ハーン

横山三国志のチンギスハーン版です。

チンギス・ハーン 横山光輝
酒チャビン
酒チャビン

チンギスハーンといえば、北海道名物の料理名にもなってるほど日本ではお馴染みなので、知らない人はいないと思いますが、かの有名はモンゴル帝国を築いた方です。 個人的に空前絶後のチンギスハーンブームがきているため、こちらも読みました。中学生の頃、近所の本屋にハードカバー版が置いてあって、当時も少しチンギスに傾倒していた私は1巻を購入したのですが、その後2巻がその本屋に入荷されることはなく(売れ行きが微妙だったのでしょうか・・・)、続きが気になっていたという因縁があります。 今はそういう点では、24時間いつでも欲しくなった瞬間にポチりできるので、いい時代になったものですね。 さて、マンガの感想ですが、横山三国志の読み味と同じく、すごくシンプルに、いい意味で尖ったところなく、ストーリーを紡いでいただけるので、大きな筋のところがスッと入ってきました。 欲を申せば、三国志や水滸伝などのように、超主要人物以外にも個性的なキャラとかが出てきて欲しかったのですが、それは横山先生の取材の怠慢というよりは、そもそもモンゴルには紙とがなかったようなので、三国志とかと違って記録や資料に乏しいことが原因なのかもしれません。 今読んでいる北方謙三のチンギス紀は、逆に誰が誰だかわからなくなるほどキャラが出てきますが、多分に創作の部分もあるとのことです。

火の鳥

「未来編」の感想です!!!

火の鳥 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

火の鳥を時系列に読んでいくシリーズも、この未来編でラストです!!刊行順でいうと、2作目なのですが、その後の編につながる伏線の多いこと!!! 正直、刊行順に読んでいるときは、サラッと流してしまっていたのですが、かなり後半の編にリンクする要素が盛りだくさんで、この時点から連載が20年以上にわたるこの壮大な物語を構想していたのでしょうか・・・??だとするとまじマンガの神なんですけど・・・ 本当に自分がマンガ家でなくてよかったと心底思える瞬間です。 時代設定は3404年〜。人類は滅亡の危機に瀕しています。そこから超壮大な物語が展開され、最終的には、刊行順で前作であり、時系列的に一番最初である「黎明編」の場面に接続されます。。。 このラストの展開は、時系列順に読んでいた時も、一定の大円団感があり、充実した読後感を感じたものですが、時系列順でこの編をラストに読むと、さらにさらにさらに大・大・大・大円団感が感じられます!!!もう結構10回近くは再読してますが、いまだに新しい感動を味わえるとは・・・ 時系列順に読んでみようと、ひょんなことから思いましたが、やってみて本当に良かったと思えるので、火の鳥をまだ読んでいないと言う方はもちろん、読んだことあるよっていうお友達も、ぜひやってみてください! なお他の編との繋がりですが、ムーピーやロビタや猿田博士が登場します。ムーピーは過去に登場した特定の個体との繋がりはないように思いますが、ロビタと猿田博士は望郷編ラストで出てきた個体と同一と思われます。 ロビタが優しいんだよな・・・

火の鳥

「復活編」の感想です!

火の鳥 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

火の鳥の中でトップクラスに好きな話です!!!火の鳥って、好きな編がそれこそ十人十色で、かなり票が割れる傾向にあると思うのですが、それだけ全てのエピソードが粒ぞろいということではないかと思います。 復活編はいくつかの時代を行き来しながらエピソードが進行します。 火の鳥はシリーズ全体からしてそういう構成をとっているのですが、復活編は一つの編の中でそれをしています。 2482年→2483年→3030年→2484年→3009年→2484年→2917年→3344年 主人公がある事故をきっかけに体の6割ほどを人工物に入れ替えられてしまうのですが、それにより、人間が無機物に、ロボットが人間に見えるようになってしまいます。 ・身体の60パーセント人工物に変えられた人間である主人公 ・主人公には人間に見えるロボット(主人公にやさしい) ・主人公には無機物に見える人間(主人公を殺そうとする) ・人間らしさとは人間と形が似ていることだと言い、人間に似せて作られたアンドロイドと愛し合う人間 ・人間とはかけ離れた容姿だが自分はかつて人間であったと信じるこけし型ロボット などが登場し、これまでの編でも何回か出てきた「何が人間を人間たらしめるのか」というテーマを考えさせられます。 他の編との繋がりですが、望郷編でちょろっと登場したチヒロがメインキャラの一人として登場します。あとラストで猿田博士が登場し、ロビタも未来編で登場します!

火の鳥

「望郷編」の感想です!

火の鳥 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

スケールが壮大すぎる物語です。時代設定は明言されていませんが、増え過ぎた人類が宇宙の他の星に移住する時代となっています。 「望郷」というのは、宇宙移民した主要登場人物「ロミ」(女性)が地球に帰りたくなるストーリーからきています。 ロミは恋人と一緒にエデン17という無人惑星に移住してきますが、その直後に恋人が死んでしまいます。当時すでに二人の子供を孕っており、その子供がしばらくして生まれますが、このままではすぐに絶滅してしまうので、その子供との間に子孫を儲けようとします。 あまり詳しくかくとネタバレになってしまうのですが、すったもんだあった結果、星は一定程度の繁栄をみます。そこまでの話も十分充実感ある面白さなのですが、その後ロミが地球へ帰るべく旅をする話が続くのですが、こちらはサン=テグジュペリの星の王子さまオマージュな感じで進行します。これだけ盛りだくさんで単行本2冊程度なので、密度が濃過ぎます!! 自らの子供と子孫を残すとかもそうですが、星の王子さまパートでの各種不条理エピソードや、異星人の性質(不定形生物や雌雄単体)など、常識からはかなり外れた出来事が普通に起きます。そしてそれらは必ずしもネガティブな書き方はされてない一方で、今や我々の常識となっている酒・ギャンブル・麻薬・兵器などが生まれたことによってエデン17が滅亡に向かい始めると、結構考えさせられる内容でした。 他の編との繋がりですが、牧村飛行士(宇宙編に登場)とチヒロ(復活編に登場)が出てきます。刊行順だと宇宙編→復活編→望郷編なので、サービス出演的な感じでしょうか。

徳川おてんば姫 ~最後の将軍のお姫さまとのゆかいな日常~

「姫×女中」史実がベースの昭和ロマン溢れるガールズ主従バディ学園ドラマ!

徳川おてんば姫 ~最後の将軍のお姫さまとのゆかいな日常~ 西山優里子 井手久美子
たか
たか

これはすごいものを読んでしまった…!「うおお〜〜こういうのが読みたかったんだよ!」と心の中で叫んでしまう最高の物語でした。 ・歴史ドラマ(昭和10年=1935年) ・実在の人物の登場 ・女学園 ・上流階級の世界 ・派閥争い ・意地の悪いお嬢様ライバル ・主従関係 ・ハンサムで気高いお姫様 ・戦闘に強い従者 お子様ランチか?という勢いで、みんなが好きな要素がブチ込まれていて面白いとしかいえない。 もう1巻の表紙からして最高。 最後の将軍・徳川慶喜公の孫娘・久美子様がセーラー服に身を包み凛々しい表情でコートを肩にかけ刀をついている。う〜ん痺れる……! ▼西山優里子/井手久美子『徳川おてんば姫 ~最後の将軍のお姫さまとのゆかいな日常~』第1巻 https://i.imgur.com/PeEia3T.jpg 主人公の2人はともに13歳の女の子で、 慶喜公の孫であることに矜持を持ちつつも葛藤し、下々の者に心を配ることを忘れず、広大な邸宅(第六天)の外の世界に憧れ男装にパーマで脱走しようとするおてんばハンサム久美子様。 “会津”の出身で、妹弟のためになんとしても女中として働きたい父母から様々な格闘術を仕込まれた健脚で元気な“お次”のはな。 「もう来年プリキュアの枠で放送してくれ〜〜!!」って感じのたまらないキャラ設定。 はなをひと目みた瞬間、髪型がすごくいいなぁと思ったのですが、あとがきにキャラの初期デザインが載ってて「元ネタはあしながおじさんの主人公」と書かれてて膝をうちました。確かにジュディだ……!通りでキュンとすると思った。 コミカライズにあたり、西山先生の好みで久美子様は男前に描かれることになった(最高)とのことですが、西山先生ご自身が『スケバン刑事』の大ファンだということで納得。 意地悪なお嬢様ライバル(山縣有朋の孫娘)との投扇興バトル。気品溢れる女性だが明らかに只者ではない英語教師。久美子様より上手な妃殿下との薙刀バトル。世が世なら将軍様で線の細いエリート文学青年の慶光侯爵。何やら久美子様と因縁のありそうなシュッとした帝大生2人組。 も〜〜う全部面白い!全部……!! ガッツリ取材して描かれているので、歴史ドラマとしても読み応えがすごい。 原作は“久美子様ご本人”によって描かれた同名の自叙伝とのことで、こちらも読んでみたくなりました。 「ヒストリカルな上流階級の世界」という女子の好きな設定で少女マンガ的な絵で描かれてはいるけれど、アクションシーン満載で構図やコマ割りも迫力があり強さを秘めた女の子たちがパワフルに活躍するという、少年マンガと少女マンガのハイブリッドのような作風が私にぶっ刺さりました。最&高。 NHKで夕方のアニメになるまで応援します! ▼第1話より こんなかっこいいお姫様を嫌いな人類がいるか(反語)

火の鳥

「太陽編」の感想です!!!

火の鳥 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

火の鳥シリーズの中でいちばァァァァん好きな物語です!! 舞台は壬申の乱の頃(7世紀後半)と21世紀を行ったり来たりします!7世紀後半ということは、この過去パートはヤマト編と鳳凰編の間ということになります! 最初は過去パートの合間に1ページくらい未来パートが挿入される形なのですが、徐々に挟まれる未来パートのページ数も、その頻度も増えていき、最終的には未来パートで完結を迎えます。 最初読んだ時にはその技法によるドラマチックさに鳥肌が立ちました!ぜひ多くの方にこの読書館を楽しんでほしいです! 話は基本的には仏教の伝来前後の宗教戦争がテーマで色々と考えさせられるのですが、男女の恋愛あり、家族愛あり、宗教への忠誠心とそれらの愛との間で翻弄される人間たちが切ないです・・!!! 過去パートには他の編と関連しそうな人物は登場しませんが、未来パートに猿田彦と血縁関係がありそうな鼻の人物が登場します。名前は出てなかったような気がしますが、未来パートの主人公が所属するチームのリーダーをされています。 過去パートは壬申の乱が舞台なのですが、天智天皇の娘であり、天武天皇の妃であり、天武天皇の次代の天皇である持統天皇が登場しません。一番悩める描きがいのあるポジションのような気がしますが。。。持統天皇に異常に興味を持ち始めたのですが、里中満智子先生の作品に「天上の虹 -持統天皇物語-」というものがあるようなので、そちらを熟読してみたいと思います!

火の鳥

「異形編」の感想です!

火の鳥 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

舞台は応仁の乱の時代で15世紀後半です。物語はシンプルなSFタイムループものですが、最近はこういうのよくあるのかもしれませんが、最初私が読んだ当時はとてもワクワクして読みました。 シンプルとはいっても、因果応報や命の平等さ、男装女子なども織り込まれていて、短いながらも内容はすごく濃くてさすがです。 他の編との繋がりですが、主人公の八百比丘尼さんが太陽編でも登場(しかもシーンも被っていて初めて読んだときはテンション上がりました!)するのと、あと主人公の父親の鼻が病気で猿田彦のものになるのですが、血縁関係などあるのでしょうか??名前は八儀家正さんなので、どうなんでしょう?? また異形編ではタイムループものらしく、冒頭の物語部分がラストで繰り返されるという表現がなされていますが、この表現は、乱世編や鳳凰編(こちらは昔を思い出してる感じ)でも使われていてすごく大河性を感じて好きです!そもそも火の鳥全体がタイムループものともいえるつくりで、その中でループしたりはたまた時代を交錯しながら話が進んだりと、すごく凝った作りになっていて、本当にすごいと思います!

火の鳥

「羽衣編」の感想です!

火の鳥 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

舞台は平将門の乱の時代ということで930年頃です。乱世編の感想で鳳凰編(8世紀)の次が乱世編(12世紀)と書いてしまいましたが、間に羽衣編が入ります。。 話は天の羽衣の話をしたじきにしたシンプルなタイムスリップもので、長さも短いです(40pちょっと)。火の鳥も絵では描かれず、主人公の台詞でちょこっと出てくるだけなので、なんでこれが火の鳥の一編なんだろうと思いましたが、元々雑誌掲載時には、発表順で次の作品にあたる「望郷編」のプロローグのような位置付けだったようです。 雑誌掲載版では、主人公(おとき)は戦争から逃れるため、2500年未来からタイムスリップしてきて、羽衣編で生まれてくる子供は、未来の戦争における「毒の光」の影響で奇形児として生まれており、この方が次の「望郷編」の主人公となる予定でした(旧・望郷編におときは時子として登場してます。子供の方は「コム」という名前で、今読める方の望郷編に出てくる「コム」と同じ見た目をしています)。 ところが「毒の光」の影響で奇形児が産まれてしまうという表現がよくなかったのと、「望郷編」も2話目まで掲載された時点で、掲載誌が廃刊になったことで、「羽衣編」から毒の光の描写はなくなり、その影響で「望郷編」も全く違う物語として1話目から別雑誌で連載されたようです。 旧・望郷編は、今だと手に入りやすいものでは角川文庫版の火の鳥14巻(別巻)に収録されていますが、電子化はされてないようですね。旧・望郷編も2話目までしか存在しませんが、信じられないくらいワクワク感がある導入なので、最後まで読んでみたかったです。

火の鳥

「鳳凰編」の感想です!!

火の鳥 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

舞台は、時代的にひとつ前にあたる「ヤマト編」から400年後の奈良時代(奈良の大仏の開眼式(752年)が描かれているので8世紀中頃)。火の鳥と共にシリーズを通して登場する猿田彦一族の我王ががっつり主人公です。 ちなみにヤマト編でクマソのタケルがせっせと書いていた歴史書がちょぴっと登場するのですが、「蛮族の長が書き残した記録で、大化の改新の際お上で焼かれたものの一部」とされ、歴史上破れ去った側から見た歴史は葬り去られています。 一番印象に残ったシーンは、主人公の我王が、一緒に住んでいた女子を切ったシーンです。ネタバレはしませんが感動しました。ヤマト編で感動したシーンと同じく、ここでもサイケデリックな絵柄が使われており、私はシーンに感動しているのでしょうか、それともサイケな柄に感動しているのでしょうか。 不幸な生い立ちもあり、手のつけられない悪党だった我王がこの件をきっかけに少しずつ(というか途中イッキに)人間的に素晴らしくなっていき、逆に善良な人間だった人がそうではなくなっていってしまう対比が考えされられました。 残りの人生、まじめに生きてみたいと思います。