東周英雄伝

圧倒的に美しく力強い水墨画のような漫画 #完結応援

東周英雄伝 鄭問 徳田隆
たか
たか

前に原正人さんが主宰される「世界のマンガについてゆるーく考える会」で知った作品。積読していたのをふと思い出し読んでみたところ圧倒されました。 昔の映画の看板のような画風の表紙からは想像できませんが、本編の作画は伝統的な中国の水墨画と日本の漫画表現のハイブリッド。 筆の強弱がとにかく魅力的で、力強い荒々しさと繊細な美しさの両方が楽しめます。 春秋戦国時代の故事がテーマなので全体的に古風で硬い雰囲気があるのですが、ところどころに如何に漫画っぽい表現がありクスリとさせられます。 (第二話の「おれの舌はまだあるか? 張儀」の、旅館のオッサンが竹槍を片手にパンパン打ち付けながらプンスカ憤ってるところとか大好きです) 表紙の「モーニングKC」の文字に驚いたのですが、こんな超絶技巧の美しい芸術作品のような漫画が週刊連載でモーニングに載っていたとは信じられません。すごすぎる。 先程Wikipediaを読み、鄭問先生(台湾出身)が2017年に亡くなられていると知り好きな人がもうこの世にいない寂しさを今噛み締めています…。 久々に「この作品に出会えて良かったな」と思える素晴らしい漫画を読みました。やはり積読は解消するものですね。

機動戦士Zガンダム デイアフタートゥモロー -カイ・シデンのレポートより-

重厚なウラ話!!

機動戦士Zガンダム デイアフタートゥモロー -カイ・シデンのレポートより- 矢立肇 富野由悠季 ことぶきつかさ
酒チャビン
酒チャビン

一年戦争時代、ホワイトベースの乗務員としてがんばり、おもにガンキャノンのパイロットとしてご活躍の、カイ・シデンさんの視点から見たZガンダムとなっております!! Zガンダム自体はもうすでにアニメでしっかりとしたストーリーが決まってしまっているのですが、その範疇で、歴史の裏側をカイさんの視点で辿っており、原作を知っていればニヤリとするシーンや、「へ〜そんなことが裏側で・・」など感心するシーンが盛りだくさんです! 後半かなり重厚で難解なテーマが話されたりするので(ガンダム全般そういった部分がありますが)、ライトに読むにはしんどい部分が出てくるかもです。見せ方としても、コマ割りは4コマっぽくすごくシンプルになっていき、キャラの動きもそこまでではないので、主役は文章という趣になってきます。 ただ、そういう部分が好き!という方(私も体調が良ければそういうの好きです!)には、うってつけの本であるといえようかと思います。 めちゃおしゃべりなミライさんも見れます。

マンガ日本の古典 源氏物語

初!!源氏物語!!

マンガ日本の古典 源氏物語 長谷川法世
酒チャビン
酒チャビン

源氏物語といえば世界に誇る日本を代表する古典文学!!ということで、内容もすごいらしく、気にはなっていたのですが、何となく敷居が高く、今まで触れられていませんでした!! 今!!般!!!マンガならば読めるのではないかとこちらの作品を手に取った次第です!!! とはいえ、マンガとしてもかなり個性的な作品ですね。栄えある「第1回文化庁芸術祭マンガ部門」の受賞作なので、芸術性は文句なしなのですが、ちょっと個性的すぎて「源氏物語にマンガでサクッと触れてみよう!!」という私のような方には不向きです。 どう個性的かというと、我々が平安時代といって想像する人物画(わかりますでしょうか??)のタッチで全編描かれているのですね!!!マンガでこういった表現が使われることはあまりないので、すごく特徴的です!!(表紙だけこういう絵だと思ったのですよね・・) その結果「人物が皆似てる」「イケメン設定のキャラがいまいちイケメンに見えず感情移入しずらい(すいません、あくまで現代の感覚でいうと、です)」などがあり、どちらかというとヘビーな平安文学ファン向けの作品となっているように感じました!! なので、私のようなライト層にはあまりオススメできませんが、ヘビーな平安時代フリークにはこれ以上ない魅力的な作品だと思います!!!

天地を喰らう

もっと読みたかった!!!!

天地を喰らう 本宮ひろ志
酒チャビン
酒チャビン

本宮ひろ志先生による三国志マンガです。中学生のときに三国志にハマりまして、当時三国志の情報なんてファミコンの三国志の情報(武力とかの数値)か、同商品のガイドブック、および横山先生の三国志しかなかったので、ものすごく三国志情報に飢えていました。 そんなとき、母親と行ったダイエーに入っていた本屋(フランスの本屋ばりになぜか新刊と古本を一緒に扱っている店でした)にて天地を喰らうの3巻を発見!!!! 正直、状態は良くなく、古本特有のオイニーも若干ツイキーでしたが、家に帰ってすぐに貪るように読みました!!!面白かった!!!!! その後、チャリで行ける距離にある(片道1時間半くらいの圏内は攻めてました)本屋という本屋を巡り天地を喰らうの他巻を探す日々!!!本屋自体の情報もタウンページくらいしかない中、よく頑張ってたよなぁ。。 結果、デラックス版で全巻揃っている本屋を発見し、おこづかいを前借りして即買いしました! お金を取りに行っている間に売れてしまうのでは、と気が気ではなかったですが、全くそんな心配は必要なかったです。 話は少しファンタジー入っていて、王道の三国志ストーリーではないのですが、それでも当時は三国志のキャラが登場しているだけで大興奮でした!!キャラの描写も、正直現在までの三国志マンガの中で一番じゃないですかね??皆魅力的に描かれてます! 残炎なのは、話が序盤中の序盤である董卓による長安遷都あたりで終了してしまったことです・・・続き見たかった・・・・ 後にRPGゲームとしてファミコンソフト化され、司馬懿を倒すところまでが収録されたので、それは本当に嬉しかったです。ゲームとしての完成度も高く、超名作だと思います。

徳川おてんば姫 ~最後の将軍のお姫さまとのゆかいな日常~

徳川慶喜の孫娘の物語

徳川おてんば姫 ~最後の将軍のお姫さまとのゆかいな日常~ 西山優里子 井手久美子
六文銭
六文銭

私事ですが、最近、幕末づいてまして、司馬遼太郎「最後の将軍 徳川慶喜」を読んだばかりなんです。 正直あまり歴史に明るくなかったので、慶喜といえば、今まで「しょっぱい人」として思ってなかったんですよね。 新撰組のほう(つまり幕府側)をよく読んでいたから、慶喜の存在は、 大政奉還して、鳥羽伏見の戦いで逃げた人 くらいのイメージでした。 徳川の時代を終わらせてしまった人という、なんかショボいイメージでした。 しかし、上述の本を読んで自分の無知を恥じました。 慶喜、マジすごいっす。 政治的な駆け引きと、暴れん坊の尊皇攘夷思想(というか、単に幕府がうっとおしいだけ)の薩長土肥に代表する各藩主を論破する力、そして先見の明。 時代がそうでなければ間違いなく、優れた名君だったと感じました。 大政奉還をしたのも、そのタイミング朝廷に政治の主権を渡しても、構図は変わらず結局徳川に頼ることになるのを見越した判断で、単に尊王思想の志士たちの矛先をずらすためだったとかすごい判断ですよね。 鳥羽伏見の戦いに逃げたのも、徳川一族がその後の朝敵になることを恐れたのと、単に国内で争うことが国力の低下を招くこと見越したという英断だったとか。 どこまで真実なのかは不明ですが、少なくとも、その後の日本が力強く発展したのも、慶喜がよくある旧体制の君主として抵抗し続けなかったことも多いにあると思います。 長くなりましたが・・・そんな慶喜ブームが起きている私に、この本が目に入り矢も盾もたまらず読んでしまいまいた。 本作は、そんな私が激推中の慶喜の孫娘久美子の物語。 姉の喜久子は、高松宮宣仁親王(昭和天皇の弟)妃。 当たり前だけど中々の家柄。 上記の慶喜のことや、江戸から明治にかけての政治的な動きを理解しているとより面白いです。 慶喜に似ていると言われていた久美子氏だが、好奇心で何でも自分でやりたがるところや、極めようとする姿勢を似せたり(慶喜は多趣味でこだわりも凄かったらしい)、女中やクラスメイトがどこ藩出身だとかでいざこざがあったり、随所に、歴史を知っているとにんまりするポイントがあるのが読んでいて楽しいです。 また、あの時代特有の上流階級の雰囲気も、また素敵ですね。 おてんばでありながら芯を通す主人公も魅力的で、周囲の人間たちも振り回されながらもその魅力に惹きつけられているのも、またグッド。 自分もそのうちの一人です。 子孫であることから先祖の因縁で物語も動き、山縣有朋(有りていにいうと倒幕側の人)の娘とすったもんだあって、今後もどうなるのか? 非常に楽しみです。