今日のさんぽんた

中毒性高い「散歩」劇

今日のさんぽんた 田岡りき
六文銭
六文銭

『吾輩の部屋である』が謎に好きだった私。 その著者の新作ということで手にとったが、これも最高だった。 そもそも『吾輩の部屋である』が、基本的主人公1人が悶々としながら独り言している会話劇?(会話じゃないが)が面白かったのだが、 本作も、基本フォーマットは同じで、犬と散歩しながら一人で話している構図。 それもたわいもない、自販機がどうのとか、この道は通ったの通らないだの、受験勉強がどうのとか、ホントにたわいもない話を延々とする。 それに犬のポン太がモノローグでツッコむ感じ。 たったそれだけのことなのに、すごい中毒性がある。 1話が短くて物足りなく感じるのも理由の1つだろうが、それ以上に著者の日常にあるちょっとした疑問などの着眼点が面白いからだと思う。 ガードレールのつなぎ目のルールとか、この本読まなかったら一生知らなかったと思う。 主人公・りえ子もちょっと残念というか、イタイというか、そこに加えてコミュ障なところもいい。 それに、ポン太が冷静にかつ鋭くツッコむの良い感じです。 時系列がバラバラで、各話いろんな時代のを断片的に描く形式なので、どこかの話とつながっているのも、また楽しいです。 まだ3巻ですが、謎の中毒性があって3回くらい通して読んでしまいました。

恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。

臆病な自尊心と尊大な羞恥心

恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。 サレンダー橋本
toyoneko
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「恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。」は,サレンダー橋本先生がオモコロに描いていた漫画をまとめた短編集です 内容はまぁ,それぞれの短編のタイトルを読めばだいたい分かります。こんな感じ ・ 全員くたばれ大学生!~でも本当はうらやましい ・ 初対面のサブカルの互いの知識の探り合い ・ 新社会人よ、窓際を目指せ ・ 行ったことないから想像で適当に描いたクラブのワンナイトラブ ・ PTAのバージンメイデン~貞操の墓場に射す光~(書き下ろし) ・ 【PTA推薦まんが】アニマルファッカー健 ~最終話~ ・ 男たちの朝食バイキング~その腹、張り裂けるまで~ ・ 新社会人よ、それでも窓際を目指せ(書き下ろし) ・ おっぱいダウザーおろ香~私が油田を掘り当ててからというものの~ とにかく全作品がサブカル! しかも,ほとんどの作品が,コンプレックスと,「リア充死すべし」という暗い情念に満ちている素晴らしい作品集です なお,コミック化にあたってオモコロでの公開は終了していたのですが,いつの間にか普通に読めるようになってましたので,オモコロで読んでもいいと思います https://omocoro.jp/writer/s_hashimoto/?category=kiji&sort= 最初に読むなら,「新社会人よ、窓際を目指せ」がいいでしょうか。何となく雰囲気がわかります https://omocoro.jp/kiji/50566/ 個人的には「初対面のサブカルの互いの知識の探り合い」が好き(画像)。いろいろと…身につまされます… https://omocoro.jp/kiji/2633/

七帝柔道記外伝

ネタバレ注意!!

七帝柔道記外伝 一丸 増田俊也
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「七帝柔道記外伝」は,増田俊也の原作(「VTJ前夜の中井祐樹」)を漫画化した作品 ……ではないです!! …いや,一応,大枠ではそうなんですが,実は問題があります 「七帝柔道記」は,増田俊也先生による小説(ただし限りなくノンフィクション)であり,物語は,主人公(増田俊也)が北大柔道部に入部するところから始まります。当時,七帝戦(旧七帝大による試合)の中で負け続けていた北大柔道部が,勝利を目指して奮闘する物語です 七帝柔道は,寝技中心の特殊ルールであり(高専柔道の流れを汲んでいるとのこと),しかも15人vs15人での団体戦という特殊な試合形式をとっており,これでもかというくらい泥臭くて熱血な練習と試合が繰り広げられます 一丸先生が,同小説を同タイトルで漫画化しています ところで,七帝柔道記は,主人公が入学してから2年間が過ぎたところでストーリーが終わっています。その後のお話は,「続・七帝柔道記」というタイトルで別途描かれたらしいですが(「月刊秘伝」に連載),これはまだ単行本化されていません さらに,主人公(増田俊也)の後輩で,その後,格闘技の道に進んだ中井祐樹という男がいて,その,格闘技トーナメント(VTJ)での活躍が描かれるのが,「VTJ前夜の中井祐樹」です。これは単行本化されています。 そして,本作,「七帝柔道記外伝」(漫画版) おおまかなストーリーラインは,「VTJ前夜の中井祐樹」と同一です 「VTJ前夜の中井祐樹」を,これまでと同じく一丸先生が漫画化したもの…と表現しても,間違ってはいないと思います しかし,そんなつもりで本作を読むと大やけどします! なぜなら,本作では,ストーリー上の重要要素として,まだ単行本化されていない「続・七帝柔道記」のストーリーのうちもっとも重要と思われる部分が,漫画化されてしまっているからです! これは,「VTJ前夜の中井祐樹」には無い描写であり,『おっ,「VTJ前夜の中井祐樹」を漫画化したのか』などと軽い気持ちで読むと,とんでもないネタバレをくらうことになります!!(私のことです) これは…これは注意書きが欲しかった これから読む人はよくご注意ください

弁護士・亜蘭陸法は漫画家になりたい

漫画村と戦った弁護士が描くリアル

弁護士・亜蘭陸法は漫画家になりたい 武村勇治 ゆうきまひろ
兎来栄寿
兎来栄寿

マンガに対して大きな愛を持ち、漫画村などの違法アップロードサイトに強い危機感を覚え、コンテンツ産業を守るために実際に漫画村やファスト映画と戦ってきた中島博之弁護士。何と、その中島弁護士が原作者となっている作品です。 しかも、この作品の序盤では違法マンガアップロードサイト「漫画谷」と法的に戦っていく様子が描かれます。 もちろんフィクションなので脚色してある部分はありますが、海外にサーバーを置く違法アップロードサイトに対してどのように法的な責任を追及していくのかの一部始終を漫画として読めるのは凄いことで、このエピソードだけでもコンテンツ産業に携わる方・興味がある方は必読です。 その他にも、巷で話題になっているSNSを使ってお金やプレゼントを配るという名目で金を稼ぐ悪徳集団との戦いなど近年の社会情勢を色濃く反映した内容になっており、リテラシーを上げるために小中学生に読ませても良い内容です。なぜ、海賊版サイトでマンガを読んではいけないかということも教えられそうです。 今後も様々なテーマを面白く、学べるように描いて行けそうで楽しみです。 なお、作品の印税収入は海賊版サイト撲滅のために使われるそうですので、ぜひ支援のためにも買って読んでみてください。