いっしょにねようよ

ある意味ずっしり重い、全6巻。

いっしょにねようよ 高尾滋
nyae
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他人同士がひとつ屋根の下でわちゃわちゃしてるんですが、お面の男の子・古白くんと主人公・一子ちゃんが抱える心の傷や抗えない境遇がわりとショッキングなので読んでる間はずっと心がざわざわしてる。 ひとつ前にクチコミを書いた「ディア マイン」と比べると、けっこうシリアス多めです。 ディアマインとの共通点としては、主人公がほんわかしていて自分より他人の気持ちを優先しがちなんだけど、いざという時に芯の強さを発揮すること、あと小さい子供が出てきてやっぱり可愛い(ディアマインでは寿千代、こっちでは寅次郎と名前はごっつめ)。あと、なにかと苦労している子どもの近くに、保護能力があるかっこいい大人がいること(←個人的にはこれがいちばん高尾先生の漫画の好きなところ)。 見たくないものが見えてしまう古白と、あるものだけが見えなくなってしまった一子が、お互いが幸せになってもらうために、そして自分も幸せになるために努力した結果がこれなんだなと思うと、やっぱ最後は泣けてきますね… ある出来事をきっかけに古白がお面を取るんですが、そこからの2人の恋の進行の速さったら、すごかった。 今あらためて読むと、若干6冊の中にいろんなことを詰め込み過ぎかも?もっと学校生活を描いたり、サブキャラの人となりを掘り下げる回があっても良かったかなと思いました。 家族とか血の繋がりとか、年齢や見た目、職業…人間の大事なところはそこじゃないというのが一貫してるテーマかなと思います。

思春期生命体ベガ

地球を守るのは、先輩のキス!?

思春期生命体ベガ 林家志弦
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

西暦2030年、地球は宇宙生命体の脅威に晒されていた。それに対抗するのは、一人の宇宙人・琴平ベガ(通称ベガ子)。闘い続ける高校生の彼女は、ある日急に能力の大部分を失う。取り戻す為に必要なのは……同じ部活の鷲峰先輩のキス!? ♡♡♡♡♡ 冒頭少しだけ試し読みされた方は「芸能人お料理番組百合」だと思うことだろう。これはこれでいい!しかし本編は、この料理番組が終わってから。 怪獣と闘う宇宙人・ベガ子の腕には光る石、それを囲むストライプ紋様。本来は巨大化し、光線で怪獣を倒す……要はウルトラ的なやつ。 しかし彼女はある時から、同じ料理部の鷲峰先輩が原因で力を失い、先輩とのキスで力をチャージしないと闘えないと言い出す。キスをせがむベガ子だが、力の事ばかりを言う無神経なベガ子を、鷲峰先輩は拒絶する。 一冊を通して、大事な事をすっ飛ばしている宇宙人ベガ子の「見えない本心」に鷲峰先輩は翻弄される。 何しろ相手は宇宙人。地球人の心の機微や物事の順序がすっかり抜け落ちていて、二人は見事にすれ違い、やきもきさせられる。鈍感な人に振り回される王道ラブコメが、もっとすっとんきょうになった感じ……これは普通でない面白さ! 「キス」を巡る二人の派手なボケ&ツッコミを笑いながら、想いが噛み合う至高の瞬間を待ちたい、そんな作品だ。 そして締めはまた別の(本編と関連する)芸能界百合だ!

はみだしっ子

4人目の「花の24年組」

はみだしっ子 三原順
せのおです( ˘ω˘ )
せのおです( ˘ω˘ )

2020年3月に、三原順没後25周年として、漫画家として残したイラスト全てを収録した、『三原順 ALL Color Works』が発売されました。 私1人では三原先生を語れないのですが、これを機に、よりたくさんの人に三原先生の作品を知ってほしいので、満を持して口コミを投稿します! 少女漫画を大きく変え、またそれからの少女漫画の礎を築き上げた「花の24年組」には、よく萩尾望都、竹宮惠子、大島弓子の3名の巨匠が挙げられます。 ここに4人目をあげるのであれば、私は間違いなく三原順をあげたいです。 三原先生は、1973年に別マでデビューした後、活動の場を白泉社に移し、花とゆめにて1975〜1981年にかけて、初の連載作『はみだしっ子』を描きます。 花とゆめの当時の誌面を見る限り、美内先生のガラスの仮面と並んで、読者の支持を得ていた作品のように思えます。 デビュー作から、三原先生の作品は萩尾、竹宮、大島先生とは全く異なった角度から、少年または少女の内面を描きました。 前述した3名の先生が、少女の目を通して見た世界や夢を漫画に落とし込んだのであれば、 三原先生は少年・少女が普遍的に持っている内面を具現化させました。 それはとても素直で、無邪気で、可愛らしく、 一方で、時に「ここまで彼らの弱く惨めな内面を晒すのか」と衝撃を受けるほどです。 『はみだしっ子』は、三原先生の作風を確立させた作品であり、本作で取り上げられているテーマは、以降の作品でも共通して語られています。 「愛ってなんだろうね、どこにあるんだろうね。ザマアミロ!」 社会からはみ出し者になってしまった4人の旅の行く末を、是非多くの人に見届けてもらいたいです。 三原先生は、1995年3月に、惜しくも連載中に亡くなられましたが、この後25年の間に、数々のイベントが行われています。 短編を含む全ての作品の書籍化、2015年「三原順復活祭」の展覧会、2018〜2020年の3年連続で原画展の開催、原画の整理及び保護活動etc…。 また、後期代表作『Sons』の舞台化にならび、『はみだしっ子』は近年2度に渡って舞台化されました。 これらの活動のほとんどは、当時の読者やファンによる企画・支援であり、そして成功を収めていると伺っています。 亡くなられてから25年もの時間が経ち、ここまで多くの支持を得て、数々のイベントを成功に収めてきた少女漫画がを、私は他に知りません。 先日発売された『ALL Color Works』も、数々のイベントの成功があったからこそ、発売されたものなのでしょう。 時を超えて読者を惹きつけ続ける少女漫画の名作を、是非読んでもらいたいです。