ぼくとミモザの75日

画力とキャラの魅力に撃ち抜かれる #1巻応援

ぼくとミモザの75日 鬼山瑞樹
兎来栄寿
兎来栄寿

『嫌がってるキミが好き』の鬼山瑞樹さん最新作。 前作の最初から絵が良かった鬼山さんですが、最近ますます魅力的になっています。 正直、物語として見ると荒唐無稽なところがいくつもあり破綻しているようにも感じられます。が、「細かいことはどうでもいい」と言わんばかりに画力で殴られる感じがむしろ気持ち良いです。 何しろ、ミモザの目が良い。 引き込まれそうな虚無の瞳。 読んでいるといくつもゾクゾクするような良い表情のコマが出てきます。 「マンガはキャラクター」というひとつの真理に立ち返れば、この作品はミモザがいるだけで「勝ち」です。 そんなミモザと、主人公の少年・宗人が擬似家族を営もうとする素朴な願い。それだけで十分だと感じます。ミモザは現実に喘ぐ思春期の少年の、ある種の夢の具現化のような存在でもあると感じます。 殺し屋としては脆さであり危ういのですが、絶妙に人間味がブレンドされる瞬間も堪りません。 多分、殺し屋なら臭いがつかないように煙草も吸わない方が良いんですが、絵面がカッコいいのでそんなことはどうでも良いんです。煙を燻らせているときの表情、堪りません。 細かいところではミモザの愛好しているマスコットキャラのCHIKUWABU、好きです。

血を這う亡国の王女

屍山血河の女の闘い #1巻応援

血を這う亡国の王女 我妻幸
兎来栄寿
兎来栄寿

表紙や巻頭カラーの目を奪われるような美麗さ。 美しいだけではなく迫力溢れる緻密な絵によって紡がれる、厳酷で慈悲のない物語。 1話目を読んだ瞬間、これは凄まじい新作が登場したなと感じました。 中世の西洋的世界観の架空の諸国を舞台に、亡国の姫に襲い掛かる過酷な運命。国も家族も奪われて姫から家畜同然の存在へと堕とされた主人公が、娼婦として成り上がりある「作戦」を実現するための闘いの様子が描かれて行きます。 実際に歴史上で多々起こって来た戦勝国による略奪や陵辱行為。蓋されがちな側面を、ここまで良い意味で悪辣かつ美麗に描く作品は寡少です。 読んでいて息が詰まるような苦しさがある一方で、暗黒の中から生まれる背徳的なカタルシスも存在します。残酷な運命や世界と対峙する、鬼気迫る表情がそれをアクセラレートしており秀逸で必見です。 エログロが苦手な方にはお薦めしませんが、『狼の口 ヴォルフスムント』や『ブラッドハーレーの馬車』的な作品を好む方には非常にうってつけの物語です。 我妻幸さん、四季賞の「360°の思い出」の後はマンガよりイラストの方面でプロとして活躍されていたようですが、とてつもない画力である上に前作からの振り幅を考えると引き出しも多そうで、さまざまな物を生み出してくださりそうな期待が募ります。

メメメメメメメメメメンヘラぁ…

「スパナは死んじゃう」

メメメメメメメメメメンヘラぁ… 栗井茶
ゆゆゆ
ゆゆゆ

何も知らずに読み、タイトルそのままメンヘラァな女の子・佐々木さんと、モテナイ大学生・山田くんの軽快なコミュニケーション(凶器有り)に圧倒されました。 山田くん、ネットにいそうな、モテナイ要素や酷い要素を詰め込ませてただけの存在と見せかけて、スルースキルというか、いなすスキルがものすごく高いです。 人は24時間監視され続けたら、このように変われるものなんでしょうか。 とかく、山田くんの佐々木さん対応がすごくよいです。 しれっとディスったり、計画的に持ち上げたり、ドヤ顔したり、強気になったと思ったら負けたり、そんな様子を見続けていたら、何故かだんだんイケメンに見えてきます。 ホラーになりそうな行動を取る佐々木さんを、ギャグとして笑える段階で、体を張って止めています さすが佐々木さんに一目惚れ&会話0で告白した男です。痺れます。 ちなみに、口コミにあった「+チック姉さん(プラスチック姉さん)」もちょっとだけ読んでみたら、登場した覚えのある女の子たちが主人公だったり、佐々木さんの普段が垣間見れたり、おもしろかったです。 タイトルで「なんだこりゃ?」となるかもしれませんが、中身はさらに「?!?!」となるので、ぜひご一読を。