sogor252019/04/08全8巻、終焉まで見事に描き切ったサイコミステリーの傑作「特殊清掃員」という文字通り特殊な職業をとっかかりにし、やや不似合いなギャグっぽい展開から始まる今作。近隣で発生していた連続殺人・通称「END事件」に主人公の親しい人間が巻き込まれたことから物語は一気にミステリーへと流れ込んでいく。 全8巻で物語の終焉まで見事に描ききっただけでなく、毎巻ごとに正しく怒涛の展開があり、一瞬の中弛みもなく駆け抜けてゆく。また、事件に直接交わらない部分も含めて人間ドラマが巧みに描かれていて、殺人事件によって引き動かされた群像劇として見ても一級品。私は1巻発売の頃から追いかけていたが、むしろ全8巻一気に読める贅沢を羨ましく思えるくらい、全体の完成度が高い作品。 殺人事件の特性上残虐表現があるので万人に勧めづらいのが惜しいが、ミステリーや事件に絡む人間ドラマを見るのが好きな方には全力で薦めたい作品。 全8巻読了。ROUTE END中川海二6わかる
sogor252019/04/06コメディとシリアスのバランスとセンスが抜群優等生女子とヤンキー男子恋愛というシンプルなテーマでありながら、ラブコメあり、シリアス展開あり、と振れ幅大きく展開する作品。私は作者のりべるむさんのコメディ面、シリアス面両方の感性が凄く自分好みで、毎巻楽しく読ませて頂いています。 個人的にこの作品の魅力は「登場人物に100%は共感できない、けど共感できる」所かなと思っています。 めぐみは一点の曇りもない優等生だし、そうしはめぐみに対してはデレるけど基本はヤンキーだし、というか登場人物はかなりヤンキーというかガラの悪いタイプが多いし。(そういう意味では一番"自己投影"しやすいのは橘かもしれない。真面目さとチャラさのバランス的に) でも、登場人物の全てに共感できないからこそ、共感出来る部分があると思いっきり入り込むことができる。日常回で共感性を下げてコメディ寄りにすることで、特に"恋愛"という殆どの人間に共通に内在するテーマで読者の共感をがっちり掴む、そういう多層的な構造を生み出している作品だと感じています。 結果、ラブコメとしても良い、高校生のシリアスめなドラマとしても面白い、絶妙なバランスが保たれている作品として成立しているのではないかと思います。 7巻まで読了そうしそうあいりべるむ
sogor252019/04/01panpanya世界が現実を飲み込んでいくまずはじめに、panpanyaさんの作品を読んだことがないという方。この段落で一旦回れ右して、取り急ぎ今作ではなく、著者のページから過去作を手に取って見てください。個人的には「足摺り水族館」もしくは「蟹に誘われて」が入り口としては良いのでは無いかと思います。 panpanyaさんの作品は、一度見たら忘れられない圧倒的な書き込み量とその書き込みによって生み出される現実とも非現実とも付かない摩訶不思議な世界観が最大の魅力です。過去5冊の単行本ではその世界観を余すところなく展開していましたが、今作ではそこから1歩踏み出した感じがあります。 表題作「グヤバノ・ホリデー」は未知の果物"グヤバノ"との出会いから、それを追い求めてフィリピンまで赴き実食に至るまでのドキュメンタリー風の作品です。 この物語を読んだ時、非実在の存在を描きながら現実・非現実の境目が曖昧になるpanpanyaさんらしい作品なのかと思っていましたが、"グヤバノ"という単語を調べてみて、それが実在する果物と分かった瞬間、物語の見え方が大きく異なってきます。 この物語は、グヤバノを追い求めて海外まで行くという点を除けば、ほぼ全て現実に存在する物が描かれています。これまでのpanpanya作品では実在物と非実在物を織り交ぜて世界の境目が曖昧な作品を描いていましたが、今作では描かれているものは全て実在する、でも世界観は非現実的ないつものpanpanya世界。これは、panpanyaさんが自身の作家性をもって現実を飲み込もうとしている、私達はその過程に立ち会っている。そう思うのは考え過ぎでしょうか。いずれにせよ、panpanyaさんは過去作を含めて線で追っていくべき作家で、そして現在における到達点がこの「グヤバノ・ホリデー」ではないかと思います。グヤバノ・ホリデーpanpanya4わかる
sogor252019/04/01ルポルタージュを通して描かれる様々な"愛"の物語今作は元々、今はなき幻冬舎「コミックバーズ」で連載されており、そちらで打ち切りの憂き目に遭った後、現在の講談社「モーニング・ツー」に移籍して連載を再開したという少し特殊な経緯を持っています。幻冬舎版は「ルポルタージュ」というタイトルで全3巻、講談社は「ルポルタージュ‐追悼記事‐」というタイトルで現在も連載中で、物語自体は連続していますが、講談社版から読んでも問題ない作りにはなっています。 幻冬舎版から一貫しているのは、恋愛すること自体が時代遅れという価値観の世界とその中で発生したテロの被害者たちの人生を描くというテーマ。これらをルポルタージュ作成のための取材という形で炙り出し、恋愛はもちろん、家族愛や友愛など、広い意味での人の愛を描く物語になっています。 この一貫したテーマ自体が毎回読ませる内容で面白いのですが、幻冬舎版から読み続けていると、逆に幻冬舎から講談社に移籍して変わった部分も見えてきます。 まず1点、幻冬舎版は1話5~60ページ、講談社版は1話3~40ページで構成されており、その結果、幻冬舎版では1つ1つのエピソードが重厚に、講談社版は物語の展開がよりドラマチックに動くようになっているように感じます。その辺りの雰囲気の違いを読み比べてみても面白いかも知れません。 そしてもう1点。幻冬舎版は新聞記者の1人、絵野沢(幻冬舎版2巻の表紙の人物)の視点が中心となって展開していきます。非・恋愛系の両親を持ち、その価値観に多く触れてきた彼女の物語は、物語の設定に沿って"恋愛"というものにフォーカスして展開、彼女のモノローグもかなり私的に寄っている印象があります。 その物語が、打ち切りの影響もあるのか幻冬舎版で一旦の結末を見せ、その後の講談社版ではもう1人の新聞記者・青枝聖(同1巻表紙)と、その恋人・國村葉を中心として展開していきます。2人の物語は、世界観に反して"恋愛"をしているという観点から語られる部分もありますが、それにとどまらず、テロの被害者のエピソードも内包したもっと大きな愛の物語へと拡大しているように感じてなりません。言わば、幻冬舎版の3冊の物語を土台に、より包括的な、懐の深い物語になろうとしているのではないかと思うのです。 一度は打ち切られた作品ではありますが、皮肉にも次巻で「MAMA」の巻数に追いつき、作者最長の作品になりつつあります。それに適う作品であることは保証しますので、興味を持って頂けた方は、是非土台となる幻冬舎版「ルポルタージュ」から手に取ってみてください。 2巻まで読了ルポルタージュ‐追悼記事‐売野機子4わかる
sogor252019/03/24実はKissで今一番楽しみにしてる作品タイトルは所謂ネット上の炎上ではなく、御手洗家、つまり自宅が火事で物理的に炎上するところから始まる物語。その火事によって全てを奪われた姉妹が主人公のリベンジ・サスペンスなんだけど、少女漫画然とした人間関係の複雑な絡まり方や感情の起伏の様子が見事にサスペンスに落とし込まれてる。それぞれのキャラが個々に自分の思惑のために動き回るので、作品全体の緊迫感は常に高い位置でキープされている。 電書で各話販売もやってるからなのか1話ごとの引きも素晴らしくて、かつ単行本単位で読むと着実に事態が進展していて次の巻が楽しみになる。 そして4巻の引きを見る限りおそらく次の5巻が一番の盛り上がりになりそうなので、興味を持って頂けた方は是非今のうちに一気読みしてほしい。 4巻まで読了御手洗家、炎上する藤沢もやし13わかる
sogor252019/03/24百合好きでない人にこそ読んで欲しい百合作品綺麗な表紙に引き込まれて買ってみたけど、1話を読み終わる頃には丁寧な導入に心を掴まれた。雨音・寧々の2人と主人公の光との出会いは運命的な雰囲気を出しつつ、2人の写真を撮る~2人の関係性に気付くまでの展開は百合作品であるからこそ自然に流れてゆく。 画力の高さもさることながら、登場人物たちの様子を刹那的にを切り取るような表現に写真部という舞台装置が絶妙に生かされている。また、カメラの存在が第三者視点のメタファーのようにも見えていたので、1巻後半の展開はかなりの衝撃をもって迎えられる。 ストーリー自体も先が気になるし、もっと各キャラの想いや感情に触れたいので早く続きが読みたい。 1巻まで読了。ルミナス=ブルー岩見樹代子3わかる
sogor252019/03/24「可愛い」を再定義していく両片想い系ラブコメクール系無口男子と引っ込み思案系女子、お互いが好意を持っているけど恋愛感情とまでは思っていない"両片想い未満"な雰囲気。相手に対して芽生えた感情ををお互いが「可愛い」と表現していて、その「可愛い」という感情が実際どういうものなのかを再定義していく過程を描くことで関係性を進展させていく、という面白い描き方の作品。その結果、キャラ同士の会話は少なめだけどモノローグが丁寧で好感が持てる作風になっている。恋愛にすらなっていない2人の様子はなかなかにもどかしいけど、不器用なキャラのラブコメが好きならぶっ刺さりまくる物語。 1巻まで読了。特別に可愛く見えるのです。魚森タラ4わかる
sogor252019/03/20フィクションと事実の織り交ぜかたが巧みな作品狂科学者っぽさのある薬師の主人公・猫猫(マオマオ)が宮廷内で起こる様々を解決するという物語。作品の雰囲気は「応天の門」にも近いが、そちらが時代考証も交えつつ日本の史実に基づき物語を編んでいるのに対し、今作は中世の中国を思わせる架空の世界観の中に現実世界に即する事実や通説を見事に溶け込ませるストーリーの巧みさがある。2巻の園遊会の話では現代人であればすぐにピンとくるテーマを上手く織り交ぜたり、かと思えば4巻では最近話題になったある食べ物を物語のキーに置くという、バックグラウンドの知識があればあるほどニヤリとできるニクい構成になっている。 要所要所でハードな設定が織り交ぜられつつも重くなりすぎないように雰囲気が作られている点や、ぶつ切りのようにも見える個々の事件が絶妙にリンクしているのもポイントが高い。 主人公の猫猫が薬師というのもあるけど、主人公の猫猫が謎を解く思考の過程が面白い作品でもあるので、理系の人に特に刺さりそうな作品。 最新4巻で原作1巻を消化したようなので、新規開拓するなら今。 ちなみにどうやらビッグガンガン版とサンデーGX版があるらしいけど、どちらも原作準拠でストーリーはほぼ同じっぽいので絵の好みで選べばいいのかも。 4巻まで読了薬屋のひとりごと日向夏 ねこクラゲ 七緒一綺 しのとうこ6わかる
sogor252019/03/19"たりないふたり"の繊細な関係性が愛おしくなる作品年の差百合であり社会人×不良でもあるんだけど、何よりこの"たりないふたり"感が絶妙。たりない部分の大きさも重さも全然違う2人なんだけど、その不揃いなはずのお互いの欠けたピースがなぜかピッタリ嵌る、その感覚が堪らない。 それぞれの過去もあってお互い不器用ではあるんだけど、すれ違いの感じられない、気持ちの通じ合ったディスコミュニケーションとして描かれるのでむしろ心地よく読める。 物語の導入こそ酔った勢いで一夜を共にしてしまうっていう軽い感じだけど、読めば読むほど2人のバックグラウンドや内面の気持ちが見えてきて関係性の繊細さを感じられる作品。 1巻まで読了不揃いの連理みかん氏5わかる
sogor252019/03/19これは哲学ではなく人生の指南書ニーチェを始め様々な哲学者が現代に現界し、ごくごく一般的な女子高生であるアリサに哲学の教えを伝授していくという、あらすじだけを書くとかなり突飛な設定の作品のように見えるかもしれません。しかしながら実際に読んでみると、聞き手を普通の女子高生にすることで説明自体もかなり噛み砕かれて解りやすく配慮されており、かつ誰もが生きてて普通に体験する人間関係や自我の悩みに対してアプローチをするので話がすんなり入ってきます。 そして様々な教えを説いた後、最終的にはその教えを押し付けるのではなく、哲学の教えをどのように人生に活かしていくか、アリサを通して読者に優しく問いかけるような構成になっています。つまり、哲学の教えはあくまで道標であり、道標があることを知った上で自らの進む道を自分自身で決めてほしい、この作品はそのように問いかけているように感じました。 読むと思考が整理されて自分の人生に対して前向きになれる、不思議な感覚を味わえる作品。きっとこの作品は単なる哲学ではなく、哲学の教えに沿った人生の指南書になってくれるはずです。 上中下、全3巻読了ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。荒木宰 杉基イクラ 原田まりる3わかる
sogor252019/03/18凄い短編の名手が現れた10篇からなる短編集。各話とも大きな仕掛けがないのに20ページ程の短い中にすごいドラマがある。どれを取っても長編作品に膨らませられるのに、それぞれのいいところだけをギュッと詰めこんだ1冊。 内容のバリエーションを見ても、ファンタジーあり、青春劇あり、ホラーあり、ホラーあり、セリフ無しのサイレントマンガありと多彩。 短編集だとどの作品が一番好みかなって考えるんだけど、この中からは選べない。短い話の中で世界観がしっかり出来上がってる、最初と最後の話が繋がってて全体が締まっている等々、読後感は「ひきだしにテラリウム」を想起させる。それくらい個々の作品の完成度が高く、かつ色の違う作品が揃ってる。プリズムの咲く庭 海島千本短編集海島千本4わかる
sogor252019/03/18「こんなんズルいわ」読み始めは演技で1人何役もやるって面白い設定だなーとか、そっか先輩のほうは大道具なんだとか、いろいろ思いながら読んでたんですが、読み終わったら感想は一言しかありませんでした。 「こんなんズルいわ」 1巻に30話も入っているので、1日1話ずつ読んで長く楽しんでいたい。 1巻まで読了疑似ハーレム斉藤ゆう2わかる
sogor252019/03/18「学ぶ」こと「教える」ことと真剣に向き合う作品表紙のオーラから割とダークな感じのお話なのかと思ったけど、いや確かに雰囲気は暗めなんだけどその実はとても前向きな物語。「学ぶ」ことによる成長と「教える」ことの困難さの両方を感じられる作品。 1巻では徐々にディスコミュニケーションが解消されていく感じが微笑ましかったけど、1巻の最後で明確な仮想敵が現れて今後どうなるのか。 1感まで読了せんせいのお人形【フルカラー】藤のよう5わかる
sogor252019/03/07ネタバレ雨野さやかさんが満を持して送る長編ファンタジーこれまで単巻作品「なつやすみの友」短編集「星の砂」と発表してきた雨野さやかさんが満を持して送る初の長編作品。がっつりファンタジーの世界観で、これまでの作品同様に優しい雰囲気でありながら1話完結スタイルの物語の中にも繋がりがありストーリーが見えてくる。今後もっと大きく展開していきそう。 …と、ここまでの感想は建前。実際読むと9割は本当に優しい世界なんだけど、残り1割でファンタジーはファンタジーでも完全にダークファンタジーの様相を見せる。この抑揚が付きすぎてると思える程の二面性が堪らない。しかもこの闇の部分を単行本の表紙やあらすじでは全く見せてこない。それどころか1話の途中まで読んでもその影は姿を現さず、1話終盤で突如として現れる。もはやこれまでの雨野さんの作品すらもフリにするかのようなこの徹底ぶりに並々ならぬ意欲を感じる。 1巻まで読了。ナナホシとタチバナ雨野さやか5わかる
sogor252019/03/07この作品、ラブコメと言う勿れ人はこの作品をラブコメだと謂うのかもしれない。性格をこじらせた江古田さんが主人公のすれ違いラブコメなのだと。しかし、私には解る。これは自らの理想に向かって邁進する江古田さんが周囲の悪意なき悪意に全力で抗う闘いの記録なのだ…! 1巻まで読了。こじらせ☆ルサンチガール裏ロジ5わかる
sogor252019/03/06所謂マンガ好きの方々が読んでどう感じるかを見てみたい皆さんは「〇〇の主役は我々だ!」という方々をご存じでしょうか。ニコ動やYouTubeで活動する10人以上のメンバーからなるゲーム実況グループで、YouTubeだとチャンネル登録者数30万人超(2019年3月現在)という、その界隈では絶大な人気を誇るグループです。 私は元々ニコ厨だったのでニコ動に上がっているHearts of Ironという歴史シミュレーションゲームの実況で始めて知ったのですが、明確な偏差値の高さを感じる会話劇(例えば「レコンキスタ前ってイベリア半島はトルコの物だよな?」「申し訳ないが後ウマイヤ朝の話はNG」みたいな歴史ネタを自然に会話中に放り込んでくる)と、その偏差値に反した醜い争いっぷりが面白くて、ニコ動からほぼ離れてしまった今でもまだ動画を追いかけています。 そんな彼らが、自分達を登場人物に見立てたインディーゲームを作製し、それを原作としてコミカライズされたのがこの「異世界の主役は我々だ!」という作品です。 という、そもそもの成り立ちを説明するまでにこれだけ文字数を要する、一見さんお断り感の強い作品で、所謂マンガ好きの方々が恐らく手を伸ばさないであろう作品なのですが、そんな中にも私がこの作品に注目している点が2点あります。 1点目は、2巻中盤辺りから見られるようになる、極論全振りの会話劇。モデルとなったメンバーの実際の思想を反映させているようで、1人は隣人を愛する大切さを説き、1人は感情より合理的な利益最大化こそが正義と信じ、また1人は全力で利己主義を語る。元々のキャラを把握しているからこそ楽しめている感は正直否めませんが、雰囲気としては「テロール教授の怪しい授業」のような、正論にも詭弁にも聞こえる会話劇が繰り広げられます。 この会話劇を、「我々だ!」の存在を全く知らない人が読んで楽しめるものなのかというのがすごく気になっています。 (2巻までは内輪ネタにも全振りなので、そこを乗り越えることが前提にはなりますが…) そしてもう1点の注目ポイント、実はこの作品、現状でかなり売れているようなのです。現在4巻まで刊行されてますが、3巻の帯に"10万部突破"の文字があったので、1~2巻でそこまでの数字を重ねたということなのでしょう。 内輪ウケ要素の強いこの作品でこれだけの売上ということは、元のニコ動の視聴者がマンガまでちゃんと追いかけてるということじゃないかと思っています。 ニコ動はプレミアムアカウントが有料なことが一時期かなり叩かれてましたが、裏を返せば、ニコ動にいる人は趣味に対してある程度お金を使うことを厭わない人たち。お金を使うことのできる層にターゲットを絞ってコンテンツを作ればちゃんと利益に還元される、ということをこの作品は証明しつつあるのではないか、と思っています。下手に部数だけ見ればアニメ化もあるかもと思えるだけに、長期的にこの作品の動向に着目していくのも面白いかもしれません。 ということで、マンガ好きが集まるこの場で敢えて感想を投下して何かの間違いで読んでくれる人が現れないかなと期待しつつ、読まなくてもいいのでこの作品に注目する人が増えればいいなと漠然と思っています。 4巻まで読了。異世界の主役は我々だ!加茂ユウジ グルッペン・フューラー せらみかる せらみかる+ユーザーのみなさん12わかる
sogor252019/03/01男性・女性・無性別、それぞれの目線で恋愛感情を因数分解していく作品1巻で物語の設定と主要キャラ3人の関係性について描き、2巻では3人のキャラクターの感情の表現を深めていく。しおりとりつは男性・女性の目線で好きの感情を、ひなせはそのどちらでもない位置からの2人への感情を因数分解していく。その感情の掘り下げ方が凄く丁寧。 しおりとりつの2人は「ひなせの性別を決めさせる」という大きな目的がある分、より性差を強調した感情の表現を見せる。一方のひなせは、無性別という立ち位置ながら、中庸ではなく両性を持ち合わせたような感情を見せる。本人たちにそこまでの自覚がなくて戸惑いを見せる所も含めて実に面白い。 後天的に性別を選択できる世界を扱った作品としては最近では「境界のないセカイ」「選択のトキ」などもあったけど、今作は性選択≒恋愛対象の選択という意味合いが強くて、性別と恋愛感情というところに強くフォーカスしている印象がある。その上で、(ゼロではないけれども)安易に性愛の話に持っていかずに、性別と感情の結びつきに重点を置いてモノローグが展開している。その辺りが革新的でもあり、自身の感情を重ね合わせての考察が捗る。 ミクロでこの作品を見ていくとこういう感じなんだけど、物語をマクロで見ていくと突然「無性別のまま20歳を迎えた人間は存在しない」という新たなテーマが出現する。2巻の展開で、実はPSYCHO-PASS的なディストピアっぽい裏設定が隠れているのかもしれないと想起もさせる。3人の関係性も含めてまだまだ作品の底は見えない。 2巻まで読了。性別「モナリザ」の君へ。吉村旋5わかる
sogor252019/02/26性癖の鈍器で殴られ、世界観に嵌っていく「性癖の鈍器でぶん殴られる覚悟はよろしいですか??」と望月淳さんが帯に書かれてるけど、性癖の鈍器でダウンを取られた後にぎっちり作り込まれた世界観に飲み込まれるという恐ろしく懐の深い作品。 「性癖~」の言わんとすることはモチロン分かるけど、そもそもが上質なダークファンタジーの土台の上に成り立ってるので性癖が刺さらなくても十分面白い。というかそんなニッチな攻め方をせずとも、もっとド真ん中ストレートにファンタジー好きに推していける作品だと思う。「亜獣譚」「魔女と野獣」「この愛は、異端。」のような、一癖あるファンタジーが好きならたまらない作品のはず。 真面目なストーリーの考察をすると、多分だけどグレゴールに必要なのはストルゲーではなくエロスじゃないのか…もし当たってたなら、それに気付いた時グレゴールはエンデをどうするのか。その瞬間に最も性癖が爆発する気がする。 余談ですが、『死神のラメント』巻末のspecial thanksにアシスタントとして「さんさん桜」のくらのさんの名前がありましたが、そう言えば作品の雰囲気は全然違うけどなんかキャラクターに共通点がある気がしますねぇ。。。 1巻まで読了。死神のラメント青辺マヒト2わかる
sogor252019/02/25twitter発マンガの単行本化のお手本にしたい元々はtwitterに載せてた作品なのでタイトル通りのワンアイデアで突き進むのかと思いきや、各登場人物に繋がりがあって話数が重なるにつれてどんどん世界が広がっていく。単行本では4ページ前後の話を数話続けたところでコミックス描き下ろしの20ページ程の話を差し込んでいる。これによってキャラ同士の相関図もより明確になるし、人物のキャラクターや作品全体のストーリーも浮き出てくる。単なるtwitterマンガを繋ぎ合わせただけの作品になっていない巧い構成。twitter発マンガのお手本にしたい作品。 1巻まで読了。通りがかりにワンポイントアドバイスしていくタイプのヤンキーおつじ2わかる
sogor252019/02/25谷和野さん、実は長編のほうが相性がいいのでは?これまで短編メインだった谷和野さんが思いっきり長編に振り被った作品。1巻が終わっても全く緊迫感が取れない、これまでにない読み口。 タイトルの「アドレス」はおそらく英語の直訳の"住所"を意味してそう。というのは何となく察せるけど、それが物語の中でどういう意味を持つのかはまだ解らない。長編を見据えたこの先の見えない感じが谷さんの作風に想像以上にマッチしてる。 このままガンガン世界観を掘って深く突き進んでほしい。 1巻まで読了。アドレスどちら谷和野1わかる
sogor252019/02/23「人が死なない」世界のガンアクションSFその世界では、人間は死なない。正確には、死んだ瞬間に体が元通りになり生き返る。人間は寿命以外で死ぬことはなく、故にその世界には病院も薬局もない。だから例えば風邪をひいたらその治療法はピストルで頭を打ち抜き文字通り『生き返る』という方法。 そんな世界で、"人間が死ぬようになる"謎の感染症「復活不全症(RDS)」が発生したーーーという物語。 というSF設定盛り盛りでかなり難解な設定の作品で、しかも上記のような設定なので戦闘になったら血しぶきマシマシという感じなので、かなり人を選ぶ作品ではあるし、文字だけで魅力を伝えるのは難しいんだけど、何よりあのハルタで「乙嫁語り」「ヒナまつり」「ハクメイとミコチ」に次ぐ長期連載(休載や不定期連載を除く)を続けているというのがこの作品の面白さを証明してくれるのではないだろうか。 1~6巻までは「不死の猟犬」というタイトルで、RDSの感染源となる人間「ベクター」を匿う「逃がし屋」という存在と、RDSの根絶のために逃がし屋を追う警察との対決構造を中心に物語が展開しするのでガンアクションがメイン。そしてその抗争の中で徐々に明らかになるRDSの謎。最終6巻でRDSの正体が明らかになった瞬間には思わず鳥肌が立った。 そして現在はナンバリングを1巻からに戻し「不死の稜線」というタイトルで連載中。こちらは前巻までで明かした謎をそのまま明示しつつ新基軸の物語を展開し、主に登場人物の人間関係、心情描写にスポットを当てている印象。構図としては例えるなら「不死の猟犬」が『PSYCHO-PASS』テレビ本編で「不死の稜線」が今やってる映画3部作という感じ。 なので、本屋で「不死の稜線」を見かけて気になってる人がいたらまずは「不死の猟犬」1~6巻までを読んでみてほしい。そこまでしてくれたら「不死の稜線」は間違いなく面白いから。 「不死の猟犬」全6巻、「不死の稜線」2巻まで読了不死の猟犬八十八良8わかる
sogor252019/02/23電書のみの発売、見逃してた方は是非。小学館の雑誌で発表された読み切りに未発表作を併せた短編集。今井さんの作品はどれも単純な結末ではない悲喜劇っぽさがあり、今回の作品も確実に心に爪痕を残す読後感。そして作中に登場する設定や背景が単なる舞台装置ではなく物語やキャラの心情とリンクしているので、マンガとして意味のある表現になってるのがまた良い。 作中の注釈でも述べられてるけど確かに現行の作品と比べると画力に不精巧さを感じる所もあるけど、短編で確実に心に残るストーリーはこの頃から間違いない。 全1巻読了モノクロイエスタデイ今井大輔4わかる
sogor252019/02/19乙女回路がフル回転するソフトBLBLとしてはかなりソフトな部類の作品だけど、2人のコンプレックスや相手に対する感情の変化などを丁寧に描きながら進む。2人の距離感が近づいたり離れたりする過程を一喜一憂しながら読み進め、気付いたら物語の最終盤まで読んでしまっており、丁寧でありながらもテンポ良くストーリーが進む。そしてその上での物語の締め方の美しさに、読み終わった瞬間はひたすら机をバンバン叩きまくっていた。久々に出会えた乙女回路がフル回転するBL。 ストーリーもいちいち可愛らしくていいんだけど、序盤の何気ない一言が心にダイレクトに刺さる表現とか、濡れ場のシーンで極端にトーンの使用を減らして全体に淡い感じの画面作りなど、演出もかなり凝って創られてる感じがする。脇で登場するキャラたちもいい味を出していて、群像劇のような形でもっとこの世界を見てみたくなる。 全1巻読了女装男子と嘘つき王子様【電子特典付き】米子2わかる
sogor252019/02/17あらすじでは語れない「空白」を読ませる作品嘘に触れると痛みを覚える目を持つ少年"珊瑚"と不老不死の肉体を持つ"人魚"と名乗る女性のお話。 基本的な設定はこれだけ、登場人物は"珊瑚"と"人魚"を含めてほぼ3人のみ、絵の密度はかなり低い、と見える情報量のかなり少ない作品なんだけど、その空白、無言の中にもの凄い中身が詰まってる、ある意味でとてもマンガらしい作品。 コマ割りを大きく取って背景なしの人物のみのコマを続けたり、時には数ページに渡ってセリフなしのページが続いたり、意図的に視覚情報の密度を低くしているんだけど、その分、キーとなるひとコマ、ボソッと呟くセリフが質量を持って感じられる。 この余白を読ませるというか、あらすじには載ってこない部分をページ全体で描くというのがninikumiさんの作風ではあるんだけど、前作「シュガーウォール」と比べると今作はその抽象表現で留めてる部分と解りやすく描いてる部分のメリハリがあって、より広い層の方々に楽しんでもらえる作品になっている。 まずは試し読みを読んで見てもらって、この作品の独特な雰囲気を味わってみてほしい。 2巻まで読了。珊瑚と人魚ninikumi2わかる