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同人イベントに行きたすぎて託児所を作りました

子供も大人もハッピーになれる取組 #1巻応援

同人イベントに行きたすぎて託児所を作りました マツダユカ 四辻さつき
兎来栄寿
兎来栄寿

寡聞にしてにじいろポッケさんの活動のことは詳しく知らなかったのですが、この時代においてとても素晴らしい取り組みだなと思いました。 タイトル通りの実体験をした原作者の四辻さつきさんによるエッセイマンガです。 二児の母で、旦那も激務であまり育児に参加してもらえず、常に「ママ」を強いられて、「私」も「私の居場所」も失くしてしまいストレスの限界を感じていた四辻さん。しかし、ある日出逢った深夜アニメの沼に一瞬でハマり、pixivで二次作品を漁り、語るためのTwitterアカウントを開設し生まれて初めて二次創作小説を書いて投稿して感想をもらうなど、推し作品によって生きる喜びと「私」を取り戻していきます。 子育てとオタク活動の両立。どちらかだけでも修羅場となるものなのに、両方やるとなればそれはもう大変でしょう。そんな辛さから始まりながらも、作品に救われオタク活動によって息を吹き返していく様子がマツダユカさんの魅力的な絵で描かれます。マツダさんは今まで主に鳥系の作品を描かれていましたが、人間も十分に魅力的でシリアスなシーンもギャグシーンも良いです。溢れるさまざまな感情が強く伝わってきます。 そして、四辻さんは遂に本を作って同人誌を発行するに至るのですが、そこで困ったのが子供たちのこと。会場には連れて行けないし、頼れる人もほとんどいない。そこで、世の中には同じように困っている人がたくさんいるのではないかと気付き、そんな人々のためのサービスを新たに創出していきます。 炎上するのが必至のサービス内容であったことからサービスの打ち出し方やレスポンスへの気の遣い方も非常に丁寧にやっていったことが解ります。根底にある動機(「同人活動死ぬほど楽しい」)によって困難を乗り越えていく姿なども含めて、良質なビジネスマンガとしても読めます。 とても良いなと思ったのが、「自分が楽しむために子供を預けることに罪悪感を抱くのは実体験として解るので、託児所を思いっきり楽しい場所にしてしまうことで子供も大人もハッピーになる」として、超巨大プラレールを設置する件。実際、楽しすぎて帰りたがらない子が続出したそうです。私も子供のころはプラレール大好きだったので、もし行ったら相当テンションが上がっただろうなと思います。自分が楽しんでいる時間に、子供も同じように夢中になって楽しむことができていたら最高ですよね。 同人イベントの空間に行くと元気になる人間のひとりとして、最高の取り組みで応援したいと思わせられました。 ひとりの育児に疲れた女性の物語としても面白いですし、シンプルに絵が良くて読みやすいので広くお薦めします。

このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉 アンソロジー 埼玉解放戦線調査報告書

埼玉県民にはこのアンソロでも読ませておけ! #1巻応援

このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉 アンソロジー 埼玉解放戦線調査報告書 魔夜峰央
兎来栄寿
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高橋留美子 桜沢エリカ 田中圭一 東村アキコ 奥嶋ひろまさ おおのこうすけ 碓井ツカサ 佐々木陽子 いそふらぼん肘樹 地球のお魚ぽんちゃん 並庭マチコ 山田マリエ 川上ちまき 黒崎冬子 久世岳 大川ぶくぶ 金田一蓮十郎 (敬称略) 執筆陣の名前を見たとき、あまりの豪華さに顎が外れました。『翔んで埼玉』を復活させた宝島社、さすがだなと。「やってる」なと。 現在、映画2作目の『翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜』が大ヒット上映中ですがそれに合わせて1作目の映画及び原作に準拠した超豪華アンソロジーが発売されました。 本の表紙では「監修:魔夜峰央」となっていますが、魔夜峰央さんもしっかりマンガを描かれていますのでファン必見です。 とにかくトップバッターからして高橋留美子さんですからね。魔夜峰央ワールドへのリスペクトも短いページ数で感じさせてくれながら、しっかり高橋留美子さんの百美と麗と埼玉ネタが見られます。 田中圭一さんは期待通りの酷いネタですし、地球のお魚ぽんちゃんさんがそこにシンクロニシティしているのもアンソロならではです。 並庭マチコさんの「幻影の飯能市」 金田一蓮十郎さんの「梅田地下迷宮」 などただでさえギャグが上手い方々が、タイトルから既に面白いことが確信できる強力なローカルネタのオンパレード。 久世岳さんが要請されて描いたという関西ローカルネタは、今回の映画2作目に繋がる部分もあって笑います。 黒崎冬子さんの埼玉に咲く百合物語もとても素敵でした。 ラブコメもギャグもグルメもごった煮で、最高のアンソロジーです。 原作の『翔んで埼玉』を読むか映画1作目を観てから読む方が楽しめると思いますが、まったく原作を知らなくてもこのアンソロジーから入るのもある意味アリかもしれません。

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フェアウェイの声をきかせて【電子単行本】

正統派スポ根美少女ゴルフ! #1巻応援

フェアウェイの声をきかせて 椎葉裕巳
兎来栄寿
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昨日『ライジングインパクト』のアニメ化が発表されたり、福本伸行さんも『二階堂地獄ゴルフ』を連載していたりでゴルフ関係の作品が熱くなっている今日このごろ。 『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』は2期を終えてこれ以上続きはなさそうだなぁ……と少し寂しくなっていたところでしたが、その心の隙間を埋めるように現れてくれた熱い美少女ゴルフマンガがこちらです。 「すごい人たちがいっぱいの舞台でわくわくするゴルフがしたい」という雛守日和(ひなもりひより)。 日和が出逢うのが、2年連続全中準優勝の小鳥遊衣鈴(たかなしいすず)。オーバーワークによる怪我で一度夢破れてしまった衣鈴ですが、日和に初心を思い出させてもらい改めて高校ゴルフ界の頂点を目指していきます。 そんなふたりに絡んでくるプライドの高いお嬢様の頬白冬子(ほおじろとうこ)も交えて、3人はゴルフの名門校鳥座(とぐら)女子へと入学し覇を競っていきます。 まず、椎葉裕巳さんの絵がとても良く、キャラはかわいく魅力的でありつつ肝心なゴルフのアクションも派手で迫力があり見応えがあります。 筆者がゴルフにハマりすぎた結果、担当編集に「もうゴルフマンガ描きましょう!」と言われて生まれた作品ということで、ゴルフ周りの描写も実体験に基づき愛を持って生き生きと描かれているのが伝わってきます。 ストーリーも競技スポーツマンガの王道を行く形で、真っ直ぐな面白さが展開されていきます。 監督の霧生秋沙(きりゅうあいさ)、部長で生徒会長の星ノ宮つばめ(ほしのみやつばめ)、2年生の鳳(おおとり)たまきなど、魅力的なキャラクターたちがどんどん登場していきお話を盛り上げていってくれます。主要キャラは概ね鳥に関係した名前を付けられているのが特徴的です。元々、ゴルフのバーディやイーグル、アルバトロスなどの用語も鳥由来ですからね。それに因んでいるのもあってか主人公はまだ空を知らぬ雛、衣鈴は一度地に落ちた小鳥という対比がなされているのも良いですね。 日和たちが試練を乗り越えて成長していく姿を、ライバルたちとの熱い闘いを、その中で育まれる絆を何十巻でも見ていたくなる作品です。

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うるしうるはし【電子単行本】

漆芸×純愛 #1巻応援

うるしうるはし もりちか
兎来栄寿
兎来栄寿

金沢を舞台に伝統工芸である漆を使った工芸品を生み出す「漆芸家」を志す高校生の少年・海尋(みひろ)を描いた物語です。 漆の性質から漆器を実際に作る作業工程など、日本の古来から伝わる伝統工芸とその職人にまつわる話の部分も興味深く面白いのですが、そこに加えて本作はもうひとつ大きなボーイミーツガールとしての軸もあります。 海尋は旅館で働く年上の女性である紬に転んだ所を助けられ、また後日再会を果たしてほのかな想いを芽生えさせていきます。漆はものとものを繋ぎ合わせる接着剤ですが、海尋と紬も漆器を通して少しずつ繋がりを強めていきます。純朴なふたりが、穏やかでかわいいエピソードを重ねて絆を強めていく姿はたまりません。 髪を下ろした状態の黒髪ロングの紬の、品のある日本美人然とした佇まいは最高です。特に描き下ろしの金沢弁パートは、何気ないシーンなのに花山薫の渾身の一撃のような超威力。2023年黒髪ロング界新人部門最強候補です(シーンによってはセミロング判定を受けそうな時もありますが、最大値を取るので黒髪ロングヒロインとして扱います)。 人物の絵も可愛らしくて魅力的ですが、金沢の街並を描いた背景もまた情趣があります。1話目が始まり最初にページを捲ったときに現れる見開きから、とても引き込まれました。 伝統工芸×小さな恋の物語。学びもあり、面映さもありながらそっと見守っていたくなる作品です。

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埼食主義の女

埼玉指数カンストのグルメマンガ #1巻応援

埼食主義の女 なかじまもりお
兎来栄寿
兎来栄寿

『翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜』が大ヒット上映中で2週目で興行収入11億円を超え、話題となってい今日このごろ。 前作もとても楽しんだのですが、どうせ映画館で観るなら埼玉の映画館で観れば良かったという後悔を抱いていたので今回は初日にさいたま新都心まで行って観てきました。すると本編前のCMから埼玉ローカルてんこ盛りで、しかも周囲の埼玉県民がそれに対してボルテージ爆上げしている様子も体感できて大満足でした。 再び埼玉旋風が吹き荒れている今、タイミングよく発売となったことで併読をお薦めしたい作品がこちらです。 蕨市在住の美人が、半ば仕事で埼玉県内を駆け巡りながら半ば自分の食欲を満たすために奔走していく物語です。 この作品、何が良いって主人公が女性ながらそこらの男性よりもたくさん食べる健啖家なことです。美味しいものへのリスペクトがしっかりありつつ、実に美味しそうに綺麗に平らげていく姿がとても気持ち良いです。その中で、 ″しば漬け茶漬けは日本人の魂 昆布茶漬けは日本人の命 梅茶漬けは日本人そのもの″ ″東松山のやきとりはやきとりと言いつつ実は豚そんな裏切りも女心をゾクっとさせる″ ″う…うまい! しっとりやわらかなパンで焼きそばが…辛モツが…他の具材が手に手を取ってマイムマイムを踊ってる!″ などなど、『孤独のグルメ』もかくやというワードセンスが光ります。 また「ほぼ東京の私」と書いて「県南の私」と読んだり、 ″どういうこと!? 7万5千の蕨市民を敵に回したわね″ といったセリフなどから滲み出る県南民のプライドがたまりません。ニッチな県民性からしか取れない栄養があります。 わらじかつ、五家宝、大宮ナポリタン、味噌漬けまんじゅう、川幅鴨汁うどん、なまず料理、雪白体菜などなど、さまざまな埼玉名物を知ることができます。 また、渋沢栄一記念館や大高鳥山などさまざまな観光名所も出てきて、埼玉県民でないとあまり詳しくは知らないであろう埼玉県内の地図にも読むだけで詳しくなっていきます。 田山うどん、東武動物パーク、はにゅう水族館、ふっかちゃん(シルエットのみ)など、ところどころ固有名詞に配慮は感じますが、わかる方にはきっと全部伝わることでしょう。 グルメが中心ではありますが、男にモテる主人公の着拒芸も見どころです。 この解像度で、全国のいろいろな都道府県のグルメマンガを読みたいなぁと思ってしまいます。

生きとし生ける

門司港の空と海と人を照らすもの #1巻応援

生きとし生ける 長谷川未来
兎来栄寿
兎来栄寿

戦時中から今に繋がる人間模様と、小説家の業が交錯する物語です。 40歳の売れっ子小説家・古賀照人が、祖父のルーツを辿って北九州・門司港を訪れ、実家の居酒屋を手伝いながらアイドル稼業を行う望と運命的な出逢いを果たしていきます。 照人は、祖父が「書かずにはいられなかったもの」を求めて過去を手繰っていきます。人間誰しも自分のルーツがあるもので、それを巡る部分は普遍的な感慨を与えられます。映画化もされ売れている小説家でありながら、祖父の文章から感じるただならぬものの正体を知るために門司港まで来る執着。そして、ある人物からは「傲慢」とも称される小説家としての性質。穏やかな性格の内に燻るものに興趣をそそられます。 戦争については実体験を語れる人もどんどん鬼籍に入ってしまっており、話を聞ける内に聞ける人から聞いておくべきだと強く感じます。教科書に書かれている歴史的な事実は事実として、当時を実際に生きた人の所感はまた違ったもの。本州初めての空襲として知られる門司への空襲ですが、それを6歳のときに体験しているシゲさんが高射砲や曳光弾の光が空を照らすのを見て「きれい」と思った素朴な感情などは、不謹慎で不適切だとして教科書には載らない類のものです。しかし、それは確かにそこにあったものでもあります。そうしたものをいろいろな形で残しておくこともまた意義あることです。 生と死をより身近に感じられた戦時中から連綿と続く人間関係が織りなす数奇な物語、その中で鮮烈に生じたさまざまな感情に惹きつけられます。 戦争を戦っている最中には、まさか曾孫がアイドルになるなどとは想像もできなかったでしょうけど、少なくとも子々孫々の繁栄と平和は祈っていたことでしょう。そして、結果的には日本は今世界の中でも有数の平和な暮らしを享受できています。その礎を築き上げてくれた先人のことを想い、改めて感謝を捧げたくもなりました。 歴史ある門司港がたびたび美しい筆致で描かれるのも趣深さがあります。人間ではなく門司港の海と空にフィーチャーした、淡い色彩の表紙も文学作品との中間のような印象を与えられ素敵です。私はこういう色合いの空が大好きなので、実際に現地で見てみたいと思いました。ついでに、瓦そばも食べたいです。 生きる上で忘れてはならないものを、思い起こさせてくれる作品です。

L.A.猫物語 the walking catお気に入り度
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