たか
たか
10ヶ月前
2011年9月。高校・大学の7年間オーストラリアに留学し就活を機に日本に戻ってきたなつみは、すっかり「一般的な日本人の感覚」を失っていた! TOEIC900点超えだからなんとかなるっしょ〜と思っていた就活は全く上手くいかず撃沈。そんなとき、道端で日本人の女性に詰問されている外国人のおじさんを見つけ英語で助けに入る。世間話をしてみるとおじさんはパキスタン人だそうで、なんと英語ができる子を探している社長を紹介してくれることに…! https://comic-days.com/episode/14079602755425506172 もう、なつみさんの日本社会不適合ぶりが愛おしかったです(他人事とは思えない)。 読んでいて一番大変そうだなと思ったのは「人と違う行動をする=協調性がない」ことではなく、「どんな行動が協調性がないように周囲に映るか」ご本人には全く気づけないところ。 私も子供の頃から多数派と違う意見を持つタイプでしたが、「この辺までは大丈夫」「こういう態度は嫌われる」というのは、小中高と部活などを通じて肌感覚として身につけているので和を乱さないやり方や線引はわかっているのですが、なつみさんの場合はそれがないので苦労も大きく、思わず感情移入してしまいました。 また2011年というのがまた絶妙で、この頃はまだ「乾杯のときにビール以外頼むやつは(全員の注文が届くまで余計な時間がかかるから)空気が読めない」、「サラダは後輩が分ける。女子がやると気配りができる子と思われる」というような風潮がまだまだ残っていたように思います。 人と同じことが出来なくて苦しい一方で、人とは違うからこそなつみさんはチャンスを掴んでいく。 リクスーで知らん社長の車にダッシュしたり、知らないおじさんとの飲みは危険と理解しつつ自分の判断で飛び込んだり、ビジネスの場で立場を恐れず自分の意見を言う。 これらの行動は「下品・防犯意識の欠如・立場を弁えない無礼者」と、眉を顰め批判する人がいても全く不思議ではない行為です。 でもじゃあこんな度胸のある行動が出来る人は一体どのくらいいるのか?と考えると、数%にも満たないのではないでしょうか。 なつみさんの個性は履歴書には書き表せませんが、間違いなく貴重ですし光るものがあります。 そのなつみさんの良さを、仕事ぶりや振る舞いを通じて自分の目で見抜いたパキスタン人の社長は流石だなと思います。 「実体験を基にしたフィクション」とのことですが、どんな状況でも自分次第で道は先に繋がっていると勇気をくれるパワフルな読切でした!
2011年9月。高校・大学の7年間オーストラリアに留学し就活を機に日本に戻ってきたなつみは、す...
兎来栄寿
兎来栄寿
10ヶ月前
「カレー沢薫さん×劇画狼さん」 もう圧倒的に勝ち確でしょう。混ぜるな危険ですよ、面白すぎることが確定しすぎていて。 何をやっても面白くなりそうなお二方ですが、このお二方をして「いろんな作品の男キャラクターを語る」。はい、勝率400%を超えました。5打数10安打打つ全盛期のイチローもビックリの、チート付与魔術師も裸足で逃げるチートです。 この第1巻では 『THE KING OF FIGHTERS』の八神庵 『ガン×ソード』ヴァン 『HELLSING』ペンウッド卿 『忍者と極道』殺島飛露鬼 『ラーメン発見伝』芹沢達也 『シグルイ』藤木源之助&伊良子清玄 『鉄鍋のジャン!』秋山醤 『疾風伝説 特攻の拓』浅川拓 『どす恋ジゴロ』恋吹雪 『孤独のグルメ』井之頭五郎 『シティハンター』『エンジェル・ハート』冴羽獠 『刃牙』シリーズ 愚地克巳 『ゴールデンカムイ』月島基 『嘘喰い』佐田国一輝&目蒲鬼郎 『ザ・ファブル』佐藤明 について語られます。目次だけでこんなに面白いことあります? キャラチョイスも主人公だけでなく、絶妙なところを選んでいて堪りません。『HELLSING』のペンウッド卿や『嘘喰い』の佐田国&目蒲など、本当に絶妙なところをそれはそれは熱く語ってくださっています。 この全部を解る人がどれくらいいるのかは解りませんが、恐らくミリ知ら状態であったとしてもかなり楽しめるのではないかと思います。何せ、カレー沢薫さんと劇画狼さんですから。 担当編集者も八神庵が生まれた頃はまだこの世にいなかったと聞いて隔世の感がありますが、歴史上の人物よりはネットミーム化しているところもあってもう少し身近なキャラたちについて、独特の感性を惜しみなく披瀝しながら面白おかしく語っていく様子は最高です。 例として一箇所引用すると、『ザ・ファブル』の兄さんについて 「おっさんの母性本能を刺激しているところがある」 「…おっさんの母性本能?」 「男が魔法少女になる時代だ  おっさんに母性本能ぐらいあるだろ」 と語るカレー沢節全開のところなど大好きです。 全然知らない作品でも、この紹介をきっかけに読んでみようという気持ちが湧くのではないでしょうか。実際、劇画狼さんもカレー沢さんの目線で再読することにより新たな楽しみ方を発見するなどしており、これはもう立派な批評と言えるでしょう。 現代では、物語よりもまずキャラで作品に入る方も多いです。そういう意味では、本著で気になるキャラを見つけてそこから原作を読んでみるというアプローチが生まれることはとても素敵だなと思います。 なお、コミックス開いて数秒で「マイナー漫画・エロ劇画紹介ブログ『なめくじ長屋』はログインパスワードがわからなくなって休止」の文字列に笑わされました。去年話題になってた気がしたんですが未だに不明なんですね。「このマンガがひどい!」を読むのが年の瀬の楽しみだったのに残念です。 個人的にお二方に他に語ってみて欲しいキャラとしては、 『COBRA』のコブラ 『北斗の拳』のラオウ 『ジョジョ』のDIO 『魁!!男塾』の富樫 『聖闘士星矢』のデスマスク 『スラムダンク』魚住 『幽☆遊☆白書』の樹 『ヒカルの碁』の緒方 『はじめの一歩』の伊達 『今日から俺は!!』三橋 『クローズ』のリンダマン 『弱虫ペダル』の巻島 『ベルセルク』のグリフィス 『ジャンケットバンク』獅子神 『天』『アカギ』の赤木 『最強伝説 黒沢』シリーズの黒沢 『エアマスター』の坂本ジュリエッタ 辺りです。