たか
たか
9ヶ月前
ひょうげものの1巻が出た頃はちょうど大学生で、流行っているからと読んでみたのですが、焼き物はよくわからないし日本史は苦手だしオジサンしか出てこないし全く楽しめませんでした。 が、今になって読むと武人と趣味人の間をグラグラしてる人間味溢れる主人公・左介が愛おしくてしょうがない…! **(自ら手をかけそうになった妻を抱きしめながら)俺はもう全身武人だ…名物に目がくらんだなど過去のこと** ↓ **大名物「荒木高麗」を見て膝から崩れ落ち敵を見逃がす代わりに手に入れる** いや手のひらクルックルで草。まだ1話も経ってないぞ!!! 左介の焼き物への造詣の深さ、良いものを見ると思わずテンションが上がってしまうところ、より深い知識を持つ人への敬意。そして自分なりの審美眼。 初めて読んだ大学生の頃から10年以上たち、会社員として働く傍ら趣味人(※アニメ・漫画オタク)として知識もコレクションもどんどんと深みを増している今、左介には共感しかありません。友人の結婚式と推しの誕生日が被ったときは左介みたいに口をキュッとさせながら出席しました。 そしてなにより、左介の食レポならぬ「美術レポ」がうますぎて、骨董品なんて集めてないのに城一つ買えるバチクソ高い茶碗が欲しくなってくる。YouTubeで美術チャンネルやって欲しい。 日本史の中でも戦国〜安土桃山時代が一番苦手なのですが、美術品という「趣味」を切り口に描かれるため、名前は聞いたことある有名なおじさんたちのプライベートが垣間見えて、親近感が持てて読んでいてすごく楽しい! 再読ってしてみるものだなとしみじみ思いました。
ひょうげものの1巻が出た頃はちょうど大学生で、流行っているからと読んでみたのですが、焼き物はよ...
兎来栄寿
兎来栄寿
9ヶ月前
『シマシマ』、『サイレーン』、『はるか17』などでお馴染みの山崎紗也夏さんが描く、「猫」×「グルメ」×「恋愛」という美味しいものをたっぷり詰め込んだお子様ランチのようなマンガです。 雨の中、怪我をしている猫のミケを助けたことで知り合ったシュウとアヤ。ふたりは何やかんやで同棲するようになったものの、シュウは親の不動産業の手伝いをしており、アヤは看護師で夜勤もあり生活時間帯が異なり少しすれ違う日々。 しかし、それを埋めてくれるのが毎週火曜日にミケが恩返しで人間の姿になって作ってくれる美味しいご飯。シュウもアヤも、まさかミケが作っているとは思わずお互いに料理が上手だなと勘違いしながら食べていく様子が面白いです。 ミケは、毎回共用財布から持ち出した1000円札1枚くらいを使ってスーパーで買い物をし、その日のお得な食材を調達して料理をするので登場するレシピは日常手にできるものばかりで、作ろうと思えば作れそうなものばかりです。作中でも卵1パック220円で買っていましたが、ようやく卵の値段が下がってきて一安心している庶民としては、安心するメニュー。野菜もたっぷり使われていて健康的なので、読んでいて作ってみたくなるものも多いです。コンソメスープに油揚げを入れるのは今度確実にやります。 生活時間がズレているふたりなので個別に食べるのですが、面白いのは後に食べるアヤはいつも残り物を少しアレンジして食べるところ。調味料を少し加えて味変したり、パンやうどんを追加したり。それに対してミケが「ご自由にどうぞ」と優しく見守ってくれているのが癒されます。 猫とご飯部分はひたすら癒されつつお腹が空くのですが、シュウとアヤのふたりの煮え切らない関係性は読んでいてもだもだし、作中のミケの気持ちに同調します。 本編のミケのモデルとなっている山崎さんが飼っている保護猫を描いた巻末のおまけマンガは、我が家の保護ポメも似たような所があり笑ってしまいました。我が家のポメも不在時に美人になってご飯を作ってくれたらなぁ。
兎来栄寿
兎来栄寿
9ヶ月前
惜しまれながら終わってしまった『ひかるイン・ザ・ライト!』の松田舞さんによる最新作です。 『錦糸町ナイトサバイブ』はローカルかつニッチな面白さがあり、『ひかるイン・ザ・ライト!』はまっすぐな情熱にあてられるのが気持ち良い作品でしたが、本作はそれらともまた違った雰囲気をまとっています。 主人公の佐藤瞬は、中学時代はサッカーの県大会でMVPに輝き将来を期待されていたものの、足のケガにより運動全般ができなくなってしまった少年。そんな瞬が、「直帰ちゃん」と渾名される佐藤直希の「ハイパー帰宅部」に強引に誘われていく物語です。 私も中学までは運動部だったのですが肺を患ってしまい、高校では本気で運動をして上を目指すことができなくなってしまっていたので、運動は諦め文化系活動を極めようと方向転換しました。その結果、今があるので人生万事塞翁が馬です。ともあれ瞬くんの気持ちは多少なりとも解ります。 本当に夢を叶えられる人というのはほんの一握りで、多くの人の人生には挫折や諦念をする瞬間が訪れます。それでも、その先に人生は続いていきます。そこで何を見て、何を為していくのか。その分岐の先でしか見られなかった景色も、案外悪くなかったりします。そういった意味で、この物語が響く人は少なくないでしょう。 学校の帰り道にある何気ないものからもロマンを感じられる直希の影響により、瞬が少しずつ変わっていく様子に心が解れます。明けても暮れてもサッカーに打ち込んでいて夕陽に染まる町並みを見る瞬間もなかなかなかったであろう瞬が、高校生になって初めて味わうゆっくりと過ごす時間に人生の機微や大切なものが詰まっています。 瞬と直希の何とも言えない関係性、ラブのコメり具合もとても良いです。5話や6話を経て8話で見せる瞬の表情など堪りません。3話のエピソードも好きですが、その最後に出てくる直希のセリフから滲み出る感性が本当に良いし、瞬が絆されるのも解ります。 余談ですが、文化祭の出し物が「赤ずきんオブ・ザ・デッド」だったり、「サイバーパンクメイド喫茶」だったりする自由な校風も、私が通っていた学校に近いものがあり親近感が湧きました。
Miyake
Miyake
9ヶ月前
日本で取られているアワビの45%は密漁品、安く食べられるアワビは暴力団が密猟したもの…っていう中々衝撃的な事実から物語が始まる。 密漁をする暴力団によって収穫を奪われ、貧困に喘ぐ磯貝家。 母は、家計のために暴力団に体を売っていて、あるとき、熊澤一味に殴られて鼻の骨を折られる。 ここからがもーほんと胸糞。 で、事の顛末を知った海斗はブチギレて、暴力団を潰すために、自分たちも密猟をする決意を固める。 自分たちで密漁したアワビを格安で売り捌き、暴力団のアワビが売れなくなるまで、立ち行かなくなるまでやる、という作戦だ。 だがこの作戦は一緒に密漁をやった鮫島の裏切りにより失敗。逆に暴力団に囚われ、密漁を続けさせられることになる。 ただ、ここで海斗は腹を決め 「密漁しながら、取引先ルート、取引場所、密漁場所の情報を集め、その全ての情報を持って自首をする」 という自爆作戦を決行する。 ーーー テーマがあまり他に見ないもので、密漁やる上での法の抜け道とか海の危険性とか、読んでいて興味がつきなかった。  ストーリー展開も、「法的には悪ではあるけど、状況的にはこれしかない」という海斗の境遇と胆力と行動力に筋が通っていて、引き込まれた。 ただ、なんか常に、あと一歩足りない感じがあった。 変に展開が早過ぎたり、感情移入するにはキャラの性格が見える描写が少な過ぎたり。 他にも、おとん情けなさ過ぎない…?とか、最後の熊澤あまりにも素直すぎないか、とかちょちょこ気になった。 鮫島とか途中から何も喋んなくなるし。 プロットは面白いんだけど、キャラクターの手触り感というか生々しい人間味というか解像度が常に低い感じだったのがちょっとだけ残念。 面白かったけどね! ーーー 暗い夜の海に海に潜るシーンが印象的。 少し幻想的な感じもしつつ、やってることはめちゃくちゃ危険な犯罪、っていうコントラストが良い。 特に密漁団員が街の光を見て、俺たちもあっちに行きたかったな…って呟くところとか。