六文銭
六文銭
8ヶ月前
「夢なし先生の進路指導」も、そうだったのですが、やりたいことや夢を追うこと美化しすぎる昨今に、現実を突きつける作品です。 主人公は25歳でアイドルを目指している女性。 弱冠アイドルとしての旬は過ぎている感は否めないが、それでも過去、地下アイドルだった時の高揚感が忘れられずズルズルと夢を追い続けていまに至る感じ。 そして、さるオーディションで、主人公のアイドルを諦めない姿勢 「どこまでもしがみつく根性」 の点が、プロデューサーの目にひっかかり再デビューを果たす。 が、現実はそんな甘くなく、業界人や財界人とギャラ飲みやら枕営業などを強いられるという展開。 プロデューサーが目をつけた「しがみつく根性」には「何をしてでも」という枕詞が隠されていたってオチ。 まぁ、タイトルからしてそんな予感はしてましたが、それを知った上でもなかなかエグい。 プロデューサーのセリフも、わかった上でやっているんだから鬼畜そのもの(添付参照) また主人公のバイト先に、夢を追う主人公を現実路線で冷ややかな目でみる男子大学生の対比も良い感じです。 1巻の最後がなかなかのヒキなので、続きが気になる。 そして、この枕を強要された事実を武器に文◯砲をもって裁判で闘う元アイドル的な(現代風刺的な)展開になったら、歓喜します。
「夢なし先生の進路指導」も、そうだったのですが、やりたいことや夢を追うこと美化しすぎる昨今に、...
兎来栄寿
兎来栄寿
8ヶ月前
山形県在住の庄司七さんが描く、車中泊旅マンガです。 かけだしのマンガ家・葉月と、幼馴染のフリーター・ほのかが「スペースラビット号」に乗って東北の名所を中心に、1巻では 山形県 鶴岡市・村山市 宮城県 伊豆沼・内沼 青森県 十和田湖・奥入瀬渓流 秋田県 大曲 を巡っていきます。 東北はあまり行けていないところが多く、個人的には新鮮味もあって楽しめました。宮城だけは複数回行ったことがあるのですが、遊覧船に乗って周遊する伊豆沼内沼のハスの群生沼は未体験。実際に行ってみたいなと思いました。 キャンプマンガ的な、ご飯を作って食べて寝てという部分も楽しく描かれています。回を追うごとに少しずつ車中泊・キャンプ用品を揃えていくのが、RPGで段々と良い装備を整えて強くなっていく感覚に似ていて楽しいです。『ゆるキャン△』などがきっかけでキャンプに入門した人は特に共感も深いのではないでしょうか。 高いキャンプ用品はなくとも、300円ショップなどで何とか工面して 「こういうのでいいんだよねー あたし達は」 とできる友達がいることが何よりの財産です。 1話からエビフライカレーとチャーシューメンと日替り定食とカツ丼を一度に頼んで一口もシェアしない大食いのほのかが、毎回ご当地グルメを爆食いする様子も見どころです。 布海苔を使った西馬音内そば 羽後牛の焼肉丼 五葉豆のジェラート など、知らなかったものも多く行ったら一度食べてみたくなりました。 山形弁全開の葉月は、山形県民の方が読めば安心するのではないでしょうか。山形県の方には特に、そうでない方でも旅やキャンプが好きな方にお薦めです。 余談ですが、私は日本酒が大好きで特にお米が美味しい東北の日本酒にはリスペクトしかなく、とりわけ一番好きなのは山形の十四代。また、あとがきにも書かれていましたが冨樫義博さんを育んだのも山形県。最高のお酒と最高のマンガは山形県なくしては存在し得なかったわけで、山形県に感謝です。
さいろく
さいろく
8ヶ月前
まさかのe-Sports系。 1巻の表紙買いをしてしまった自分が悪いんだけど、初めて手に取るタイトルは買う前にあらすじを読むのも重要ですね。 せっかく買ったから読もう→気づいたら6巻まで読み終わってた! クチコミ残そう、と思ったらマンガ沼webでピックアップされてて、川島さんがザックリ説明してくれてました。 https://manba.co.jp/manba_magazines/26332 個人的にFPSはPUBG・APEX・フォートナイトぐらいしかやったことないんですが、本作ではAPEXっぽいゲームを、伴侶に先立たれたお爺ちゃんマタギがひょんなことからプレイしてみるというマンガ。 どうも原作者がスペイン人らしい。スペインで原作書いて日本人が日本でマンガ起こしてるのってすごいな。 ただ、なんでそんなにいきなりFPSが上手になれるのか…?とか無粋な事も正直思ったのでそこら辺を割愛せずに説得力持たせてくれたほうがよかったのでは、とかは思いましたが、そんなこたーいいよっていうぐらいサクサク話が進みます。 大枠を俯瞰すると典型的な展開ではあるものの、そういう典型的な徐々に仲間が増えていったりする物語をスピード感持ってサクサク描かれているのは人気が出るのもわかりますね。スナック的に楽しめるので(悪い意味ではなく)ご時世的にはとっつきやすいのかな。 1巻を読んだ時点では、川島さんも言ってますが2巻ぐらいで終わっちゃいそうな雰囲気がしてましたが現在6巻まで。また続き出たら読むと思います。
まさかのe-Sports系。
1巻の表紙買いをしてしまった自分が悪いんだけど、初めて手に取る...
兎来栄寿
兎来栄寿
8ヶ月前
先日、これまでずっと元気で数秒前までも楽しく飛び跳ねていた我が家の愛犬が突然意識不明になってしまい動物病院へ駆け込みました。 そのとき、最初に診てもらったところは 「診療費がやたら高く必要なのか解らない検査を一杯する」 「ガンがあったのに見逃されて、他の病院に行ったらもう少し早く発見できていればと言われた」 など評判が芳しくないところでした。しかし、緊急でそこ以外に選択肢がなかったために仕方なく行きました。 結果的には、もう二度とそこへは連れていくまいという診療を受けました。セカンドオピニオンのために改めてかかりつけへも行ったところ、同じレントゲンを撮っての診断ひとつとってもまったく違うものでした。 最初のところは「心臓に肥大があるかも」として、もし原因が心臓の疾患であったなら余命は長くて1年ということで覚悟を決めていたのですが、セカンドオピニオンでは「心臓に異常はありません」ときっぱり言い切った上で最初のところではまったく触れられなかった「気管の形が少し変です」という指摘と共に適切な治療を施してくださり、その後は大事なく順調な回復を見せてくれています。もし、最初のところだけで治療を進めていたらどうなっていたかと考えるとぞっとします。 そんなことがあった直後に読んだこちらの作品は、あまりにも身につまされました。 犬や猫を始めとして、さまざまな動物が来院するシーナ動物病院。そこに訪れる飼い主たちの切実な気持ち。我が子のために少しでも良い治療を受けさせたい。少しでも良い先生に診てもらいたい。お金なんて、たとえ自分がどうなろうといくらでも払いたい。 でも、飛び抜けた知識を持つイギリスの王立大卒の宗野であっても、少しプライドが先立ってしまうと本当はもっと上手くできることができないこともあります。 彼を窘める役割を担う池ノ谷も、かつて起こった苦い経験があるからこそ厳格すぎてときに人に嫌われてしまう部分があります。 人間のやることなので完璧はありませんし、本当は誰もが根本では命を救いたいと願っているはずなのに、悲しいすれ違いや摩擦は往々にして起こってしまう。 「お前こそ俺を何だと思ってるんだ?  お前と同じ獣医だよ」 というセリフに、その辺りが詰まっています。過ちを通して人は成長していきますが、その前に大事な子を喪ってしまった飼い主には、そんな事情など関係ないということも痛いほど解ります。 私はペットショップは無くなって欲しいと願っていますが、本作で描かれている面も一理あります。悪意ある人間や蒙昧な人間を根絶することは原理的にほぼ不可能な中で、どういう選択をしていくか。読んでいてあまりに辛く、泣けてきます。 それでも、ペットを取り巻くさまざまな問題を取り扱いながら前を向いて現実的にできる営為をする中で可能な限りの命を救おうとする姿が、美しい絵で紡がれるこの物語から目を離すことはできません。 獣医という職業の大変な面も含めて真摯に描いた作品で、動物を飼っている人、飼いたいと思っている人、また職業マンガが好きな人にもお薦めです。