吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
1年以上前
2巻も良かった。 1巻で描いた「自分らしく生きる大切さ」に対して、そこで終わりじゃないと痛烈に叩きつけてくる。 家族は最も近い他人とはよく言ったもので、無償の愛はあれど100%理解し合えるものではない。 しかし理解はなくとも愛せるのが家族だ。 理解できなければ愛せないのが本物の他人だ。 自分の想いのルーツを、原点を探し、再び志を強く持つのだ。 僕も芸人をやっているが、最近になってようやく目立ちたい理由に気付いた。 僕の原点は、転勤が多く地元が無い、つまり定期的に自分を知る人のいない土地へ行くことの哀しみだった。 「自分を知ってる人を増やしたい」ではなく、「自分を知らない人を減らしたい」という妙な感情を持ってることでそこに気づけたのだ。 自分を知らない土地へ行くのが悲しかった。地元が欲しかった。 そこをルーツにしていることに気づけたときに少し楽になった。 それまで何のために頑張っているのか分からなくなっていたからだ。 そして次のステージだ。 他人と違う目立つことをするとき、自分一人なら覚悟できる。すべての責任と視線は自分に降りかかってくるから我慢さえすればいい。 しかし、それが他の誰かを伴った場合は? 3巻ではどんな答えを見せてくれるんだろう。 楽しみだ!
スカイフォール ~消し尽くせぬ夏の光~

とにかく複雑な気持ちになり考えさせられる

スカイフォール ~消し尽くせぬ夏の光~ 三門ジャクソン
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

子供の頃、広島に住んでいて、原爆や戦争に関する授業はたくさん受けてきた。 当時の感覚は分からないまでも、広島に住んでいる人から語られる話はとても強く、嫌というほどに擦り込まれてきた。 通っていた小学校は全ての教室の本棚に『はだしのゲン』が置いてあり、雨の日に少しずつ読み進めていた。 読むたびに冬だろうが手汗をかき、夏だろうが血が冷えるようだった。 とにかく恐ろしく、こんなことは二度と繰り返してはならない、誰にも経験させてはならないと強く思った。 そして、この漫画である。 まさか、現代の原爆資料館から原爆投下されるその日にタイムスリップしてしまう主人公。 それを考えただけでもう恐ろしすぎる。 主人公にとってあまりに突然のことでリアリティが希薄なのかわりと平然としていて、ほんとに?と思うが、そうか、生きるのに必死なのかもしれない。 ダメだ、読むのがつらい。 と思うものの、どういう話に落としどころを持っていくのか行く末を見守りたい気持ちとせめぎ合う。 戦争を、原爆の辛さを机上で知っている主人公が現場で何を見出すのか。 現代の人にとっては3.11の記憶がいまだに鮮烈に残っているはずなので、状況が違うとはいえ、その記憶と3.11当時の感覚を上手く利用してその恐ろしさを伝えようとしてくれている。 彼は現代に帰れるのか。 この経験を経て何を志すのか。 我々は、決して忘れてはならない。これが何を意味するのか改めて考え、伝え引き継いでいかなければならないのだ。 風化させてはならない。 デリケートな原爆や3.11のことを扱うことで批判するひとは出てくるだろうけど挫けず最後まで描ききって欲しい。

ワンナイト・モーニング

ワンナイトからの朝ごはん

ワンナイト・モーニング 奥山ケニチ
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

一話完結でタイトル通り、男女のワンナイトとそのあとの朝ごはんの話。 読切の第一話が読めていないのだけど、連載開始の2話から読み始めた。 面白い。 奥山ケニチさんのこちらの読切『磯辺くんとパンツ』も読んですごくよかったので今後追っていきたい。 http://www.moae.jp/comic/thegate_isobekuntopants 本当にワンナイトこっきりもあれば、二人の続きを想像させてくれるものもありニヤニヤする。 それにしても、なんだろう、ワンナイト明けの朝ごはんがもう美味しそうで美味しそうで。 前日から漬けておいたフレンチトーストみたいなもので、ワンナイト→朝ごはんの時間経過で、二人の間の親密性という甘い隠し味が読者によく沁みていて食事単体よりも美味しそうに見えるのかもしれない。 不思議だ。 これは発明なんじゃないだろうか。 その朝ごはんにはなにか儀式や通過儀礼にも似た神聖ささえあるような気がしてくる。 暗黙の了解、無言の約束事みたいな気持ちの良いものがそこにはある。 そういえば、映画『モテキ』で森山未來と長澤まさみがベッドで目覚めて、水を飲むか聞いた長澤まさみが、口に含んだ水を森山未來に口移しで飲ませるシーンなんかはもう最高だった。 これは僕の人生ベスト朝ごはん賞に入れたいシーンだ。水だけど。 一晩明けたあとの男女の少し曖昧で甘くて気持ちのいい関係に浸れるいい漫画。 これからはどんなパターンで見せてくれるんだろうと楽しみになってくる。 普段ヤングキングはあまり手に取らないのでこれがきっかけで他の作品も読むことがあるかもしれない。

吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
1年以上前
奥山ケニチフォローをしました
ダブル

これはいい三十路の役者漫画だ!

ダブル 野田彩子
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

これはいい! 現時点で三話まで読んだけど、これからどんどん面白くなりそう! 高橋一生みがあってめっちゃいい。 二話あたりから勝手にあの声で台詞が再生され始めてしまった。 「わたしの宇宙」 「いかづち遠く海が鳴る」 「潜熱」 の野田彩子の新連載。 https://viewer.heros-web.com/episode/10834108156642488617 いまだ無名の天才役者・宝田多家良と、同じ劇団で彼の才能を見出して絶望し彼を世界一の俳優にするべく奔走する役者仲間(友人)の鴨島友仁。 世界はまだ天才を発見していない。 が、明らかな天才の片鱗はそこかしこにばら撒かれ少しずつバレ始める。 自分より明らかに突出した才能を持つ人がいたら、その人がその才能以外の社会生活能力が欠如していたら、どうにかうまくいくよう手伝いたくなる、光の当たるところまで押し上げたくなるという気持ちは分かりたくないが、すごく分かる。 二人の関係性は光と影というよりは、光と光の影というような感じ。 相反するものではなく、二人は共生し追随していく形がしっくりくる。 人前に出て脚光を浴びるのは宝田多家良だが、ある意味で前を行き手を引くのは鴨島友仁なのだ。いや、二人にはそうであってほしい。 事務所のマネージャー冷田一恵は一見クールな反面、冷ややかに熱い情念を持っていて、それが宝田多家良に対しての感想に現れててグッとくる。 淡々としているようで宝田多家良の魅力に冷静に熱を上げている。 これはとてもいいものだ! 細部にいたるまで褒め挙げ連ねるそれはもはやファンやオタクのようだ。 おかげで宝田多家良がそれほどまでに魅力があり、世界にバレるのを待っているような説得力が生まれている。 野田彩子さんは人と人の関係性、間にある空気、感情の機微、隠した感情と表れる表情を描くのが上手だな~と思っていたのだけど、なんて言えばいいのか今作でそれがより立体的になっているような気がする。 「わたしの宇宙」「いかづち遠く海が鳴る」のような少し変わった設定のSFめいたものでもなく、「潜熱」のような限定的な関係性でもない、その一歩先の、地に足の着いた社会や影響力、人生のような部分を描いているからかもしれない。 天才と、彼を取り巻く人々、その人生。 この作品を毎月webでの更新を待つか、単行本で一気に読むか迷うけど、うーん、これは毎月チェックしてしまうかな~。 楽しみ!

ぽんこつポン子

これはいい新連載がきた!

ぽんこつポン子 矢寺圭太
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

ちょっと未来のちょっと田舎の海辺に住む頑固おじいちゃん。 家族が心配して送ったのは、この仕事が終わったら廃棄が決定している30年動いているメイドロボ。 ガタがきてて首はすぐ落ちるし、包丁を持つとロボット三原則により人間を傷つけてはいけないから震えちゃうし、いろいろぽんこつだけど、とても愛らしくて構ってしまいたくなる。 しかし、500円玉のシーンほんとよかった。妙に説得力があって存在感と寂寥感が漂っててとてもシュールで最高の俯瞰の構図だった。 大ゴマの使い方がとても大胆で潔いので切れ味があって気持ちがいい。 そして、包丁の場面にしろ、イオンにしろ、500円玉にしろ、コマ割りが上手いので間が上手く表現されていてテンポがすごく気持ちいい。 あと単純にかわいい。 ああいう丸い目が好き! 基本的にキャラクターのデザインとか背景の描きこみとか、絵のバランスがすごく良くて好みだ。 最初は、設定的にはベタで手垢がついてるようにも感じたが、いままでの全然上手く描けてなかったんじゃないかって思うくらいすごくよく描けてていいなと思った。 おじいちゃんも「アリスと蔵六」の頑固おじいちゃん的で気持ちがいい。 ドラえもんのような家に転がり込んで一緒に住むタイプになるとは思うけど、のび太君の面倒を保護者の観点から見るような昔のドラえもんとは立場が若干違って、介護という意味では面倒をみられるのはおじいちゃんでも、おじいちゃんの方がより大人だしぽん子の方がトラブル起こすことになりそうだから逆転しそうな気もする。 二人のいい関係性が構築されていきそうで楽しみ。 おじいちゃんのボケ防止になって賑やかで寂しくなくなればいいな。

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