吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
1年以上前
全3巻読み終わった。 若干ネタバレあります。 ありがたいと思えるのは、4人それぞれがそれぞれのきっかけでしがらみで狭くなってしまった視野から外に脱して俯瞰して現在の状況を見れるようになったことだ。 他人には他人の、自分には自分の事情がある。 それはどうしようもないし、特に他人の状況は友達がどうこうしようと無駄だったりする。 「それでも友だちが友だちにできるのは それでも友だちでいることだけだ」とは継の父さんのセリフ。 全員がこじれたまま会わずに大人になっていたらこういう結末にはならなかったろう。 高校生の柔軟さだからこそ出来得る着地点だと感じた。 もっと読んでいたかったが、これくらいがちょうどいいのかもしれない。 現状の人生に気負いすぎてる全ての思春期に読んでもらいたい。 巻末に載っていた読み切り「ラブレター」も素晴らしかった。 世論的には幼児をネグレクトした母親を責めるのは当然だし、そういった流れをある程度は否定しないが、こういう視点もあるという提示が愛おしい。 誰しも望んでそうなったわけじゃない。 全ての生命は素晴らしく、漏れなく素敵だという神視点。 人は変わる。 一度犯罪を犯してしまった人間を苛烈に叩き、再起不能レベルに貶めるのはどうだろうかとは思う。 人生は素晴らしくあるべきだ。 顔を上げて楽しもう。と思った。
オカルトちゃんは語れない

すごく興味深く読める妖怪などへの新しいアプローチ

オカルトちゃんは語れない ペトス 橋本カヱ 本多創
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

『亜人ちゃんは語りたい』のスピンオフ作品ってだけじゃなく単体として面白い漫画になっている。 ヨーコには他の人には見えないものが見え、感じることができる。 一般的にそれは霊感と言われるようなものだが、この亜人がいる世界では違うように考えることができる。 むしろ、幽霊や妖怪、怪奇現象などはすべて亜人で説明できるのではないか、と。 その発想をきっかけに、ヨーコの周囲で起きる不可解な出来事、存在を分析しその姿をあらわにしていく。 このアプローチは素直にとても面白い。 オカルトめいたものを亜人なんじゃないかという仮設をもとに科学的っぽい切り口で検証、実験し、そして姿を現す亜人の存在によって、あれも亜人なんじゃないかこれもといった具合に可能性がより開けてくるのだ。 僕たちはその世紀の発見を目の当たりにすることができるのだ、一人の女子大生ヨーコの傍らで。 亜人と普通の人間を繋ぐ存在として描かれるヨーコの先入観の無さというか偏見やバイアスがかかっていない感じがとてもいい。 これは現象や妖怪が尽きない限りずっと読んでられるなーと思う。

バトルグラウンドワーカーズ

第一話からぶっ飛ばしてて面白いSFアクション

バトルグラウンドワーカーズ 竹良実
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

第一話からぶっ飛ばしてて面白かった。 『辺獄のシュヴェスタ』 『不朽のフェーネチカ』 の竹良実、最新作! 天涯孤独・30歳男性に届いたのは世界を守る公務員の採用通知。 それは、25年前から世界各地に襲来し始めた未知の生命体「亞害体」を水面下で撃退する組織だった。 行ってみるとそこには、不良、オタク、コミュ障等、社会不適合者がずらり。 人型のロボット兵器「RIZE」と神経接続によって遠隔操作し、誰かの役に立つべく、地道に頑張る主人公だったが・・。 わりとガッツリSF感あって楽しい。 いまのところ主人公がとてもいい人に見えるし、地味に頑張っているので応援したくなるのだが、どこかにでっかい落とし穴がありそうでめちゃくちゃ怖い。 希望を胸に抱き、ここで幸せを掴もうと最初は頑張ってるが、そんなんじゃないとどこかで絶望してしまうはず・・こわい・・報われてほしい・・でも絶望もしてほしい・・。 痛みはダイレクトに伝わってくるが、「通信機」を破壊されるまで死なない身体をどう使うのか、第一話の見所だ。 そして後出しで告げられる大事なルール。 やはり闇は彼にしっかりと寄り添っていた。 亡くなった両親の直接の描写は無く、言葉で語られるのみなのも実は意味があるんじゃないかと勘繰ってしまう。 幸せな人生にしなきゃと自分のためのように見えてあくまで人の願いのために頑張ってきて、素直でいい人すぎる主人公がどうなるのか見ものだ。

五月に隕石、六月には京都

ポップでキュートでコミカルな童貞3人組! #読切応援

五月に隕石、六月には京都 安彦晴
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

毎日昼休みに校庭に出てバレーボールで遊ぶ日常系四コママンガのように和やかな女子高生3人組、を見る野暮ったいクラスの端っこにいるような3人組がこの話の主人公。 漫研でもないのに生身の女子3人組の二次創作漫画をそれぞれノートに描いてきては交換するというキモ日課を送っていた。 彼女らのことはずっと見守るだけでいい、と距離を取っているが、その中の一人今井君は違う感情を抱いていた。それは・・・。 めちゃくちゃいい! まずページをめくってパッと目に入ったときの絵の印象が最高で、キャラのデフォルメ具合がたまらなくて見やすい。 イケてない彼らでさえとってもキュートだ。 キュートな絵柄なのに、女の子の描写はたまにエロくも見える色気がある。 団子っ鼻でメガネで白目でニヒルな女の子もいい味出してる。 これでいいのかと自問自答し大いなる一歩を踏み出す今井くんが素晴らしい。 いつまでもそのままずっと、ぬるま湯に見える薄めの硫酸風呂に入り続けることもできたのに。 「眺めるだけで本当にいいんですか!?」「小さな決断があとあと効いてくるんです!!」は自分たち自身に問いかけ続け毎日小さい後悔を積み重ね続けた言葉だろう。 沁みる。 最終的にもなんだかポップでかわいらしい結末が待っている。 ここで、なるほどそうだったのかと腑に落ちる。 そしてもう一度読み返すと、あーほんとだ、と。 とても好きな読切だった。 コンプレックスやダークサイドの描き方も傷心も全部ポップ! 全くエグくならず、コミカルで楽しい読み味が続く。 自分の中で早く連載を読みたい作家さんの一人になった。

吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
1年以上前
2巻も良かった。 1巻で描いた「自分らしく生きる大切さ」に対して、そこで終わりじゃないと痛烈に叩きつけてくる。 家族は最も近い他人とはよく言ったもので、無償の愛はあれど100%理解し合えるものではない。 しかし理解はなくとも愛せるのが家族だ。 理解できなければ愛せないのが本物の他人だ。 自分の想いのルーツを、原点を探し、再び志を強く持つのだ。 僕も芸人をやっているが、最近になってようやく目立ちたい理由に気付いた。 僕の原点は、転勤が多く地元が無い、つまり定期的に自分を知る人のいない土地へ行くことの哀しみだった。 「自分を知ってる人を増やしたい」ではなく、「自分を知らない人を減らしたい」という妙な感情を持ってることでそこに気づけたのだ。 自分を知らない土地へ行くのが悲しかった。地元が欲しかった。 そこをルーツにしていることに気づけたときに少し楽になった。 それまで何のために頑張っているのか分からなくなっていたからだ。 そして次のステージだ。 他人と違う目立つことをするとき、自分一人なら覚悟できる。すべての責任と視線は自分に降りかかってくるから我慢さえすればいい。 しかし、それが他の誰かを伴った場合は? 3巻ではどんな答えを見せてくれるんだろう。 楽しみだ!

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