終末を旅する少女が、人々の想いに触れ、出会い、別れウスズミの果て 岩宗治生starstarstarstarstarmampuku現代よりちょっと進んだサイバーパンクみのある近未来世界のポストアポカリプス。怪物と疫病によって崩壊し汚染された世界を“浄化”しながら人類の生き残りを探して旅をする少女。 説明口調を極力排して没入感を高めてくれているため、「破滅後50年経つのになぜ食料があるのか」「なぜ主人公の少女は感染しないのか」など、読んでいて「あれ?」と思わせる謎が結構あとになってから判明したりする。登場人物に愛着が増して没入度が高まっていくにつれ、情報量も少しずつ増えていく。SF特有の、情報の物量でいきなり殴られるあのハードルの高さがなく、とても読みやすい。mampuku1年以上前『ウスズミの果て』のお気に入り度をstarstarstarstarstarにしました。ウスズミの果て岩宗治生職業漫画の極致でもあり、実は美少女漫画でもある神田ごくら町職人ばなし 坂上暁仁starstarstarstarstarmampukuこの作者の漫画を初めて読んだが、いったい何者なんだ…… トーチらしい漫画といえばそうだが、果たしてどれだけの知識、取材、リサーチがあればこれほどの解像度で江戸の街が描けるのか。陳腐なコメントになってしまうが職人たちの息遣いや染め物や木材の匂いなどさえも感じられるほど。 ただそれだけでなく、職業モノの短編としてとにかくストーリーがエモい。特に1巻後半の『左官』にはクリエイター物の魅力が詰まっている。江戸というひとつの場所と時代を切り取っていながら、悠久の時間をも感じさせる。 少し幼い顔立ちの女の子が主人公の話が多いのも特徴だ。職人漫画というやや堅苦しくなりそうな舞台がぱっと華やかかつ柔らかくなる、という一般的な美少女漫画的な効果も確かにありつつ、三者三様に奮闘する彼女たちの姿に、この時代にも色々な女性の生き方があったのだろうなと想像させられる。mampuku1年以上前『神田ごくら町職人ばなし』のお気に入り度をstarstarstarstarstarにしました。神田ごくら町職人ばなし坂上暁仁mampuku1年以上前『空をまとって』をフォローをしましたmampuku1年以上前■全巻読了 社会の在り方に関心がある人ほど、『BEASTARS』という作品世界観と現実の人間社会にアナロジーを見出したくなるかもしれない。草食動物のか弱さを現実のジェンダーギャップに、肉食獣の立場の弱さを現実の人種差別に置き換えて読めばなにかのヒントが得られそうな気がしてくる。しかし結局、『BEASTARS』のあまりに独特でイカれた世界は、ジェンダー、人種、宗教、世代、文明などあらゆる現実の問題とも似ていないために、無理矢理アナロジーに当てはめようとすれば作品が持つ複雑で深淵でどうしようもなく残酷な魅力が狭まり損なわれてしまう。 科学や歴史を信奉し、貨幣に飼いならされているところは我々人間とそっくりだが、最も異なるのは『BEASTARS』の獣たちが理性の存在をそれほど信じていないところかもしれない。 作品のクライマックスでルイは語る。肉食獣は肉を欲するが、その本能は否定されるべきではない。それでも肉食獣と草食動物は共存できるはずだと。ルソーの言葉を借りれば、肉食、草食どちらの特殊意志も保持したまま、獣全体の一般意志を追求できるはずだということだ。ずいぶんと理想主義的だが、少年漫画としては百点満点の締め方といえなくもないか。 BEASTARS個人的読書録3わかるmampuku1年以上前■12巻まで読了 ルイを“分かち合った”レゴシ。読みながらぶっ飛びすぎててなにやってんの感があったが、のちの大人たちの困惑ぶりとルイの吹っ切れっぷりを見比べて、あぁ青春ってこんなにも視野が狭くて危なっかしくて、大人になると忘れてしまうものなのかとBEASTARS個人的読書録4わかる個人的読書録BEASTARS 板垣巴留starstarstarstarstarmampuku■6巻まで読了 肉食獣たちの反社組織「シシ組」が、「ライオン組」でも「獅子組」でもなくなぜカタカナだったのかが伏線回収される。「ししおどし」の「しし」ってことね。 社会派だったり哲学的だったりする部分がフォーカスされやすいけど、結構しっかり少年漫画してるところも好き。 思春期の時分に読んでいたらがっつり性癖歪められていたかもしれない。mampuku1年以上前『BEASTARS』のお気に入り度をstarstarstarstarstarにしました。BEASTARS板垣巴留アンメット(Unmet)であるということはアンメット 大槻閑人 子鹿ゆずるstarstarstarstarstarmampukuUnmet Medical Need(満たされていない医療ニーズ) これをタイトルに掲げている通り、単に医療という大きなテーマに挑んでいるにとどまらず、いろいろな悩みや欠点を抱えた人間同士の相互のドラマが非常に面白い漫画です。 主人公の脳外科医は外科として優秀なだけでなく常に患者やその家族に寄り添うことによって救おうとする。しかし医療全体の最適化を図りたい経営者たちや、異なる信念を持った同僚たちとしばしば衝突する。また寄り添うべき患者も、患っているのはほかでもない「脳」である。いくら主人公たちが有能かつ真摯だとしても、彼らの苦しみを本当の意味では分かち合えない。数学における不完全性定理のように、医療とは、どこまでいってもアンメット(Unmet)なものである運命なのかもしれません。 医療漫画はどうしてどれもこれも面白いのか、とときどき考えます。膨大な取材や考証、高度な画力、これを社会に訴えかけたいという熱い思い……数え切れないほどに高いハードルが山積みであるため、世に出た医療漫画というのはすべからくハイクオリティでなければならない、という前提はあると思います。ですが読み手の目線から考えたとき、きっと医学とは人間なら誰しも無関係でいられないからなのかもしれないなとも思います。大半の人間は病院で死にますし、日本の制度では死亡確認ができる(=人の生死を判断する)のは医者だけです。病と死について真剣に向き合って本気で描かれたプロの漫画が、面白くないはずなどないのです。mampuku1年以上前『アンメット』のお気に入り度をstarstarstarstarstarにしました。アンメット大槻閑人子鹿ゆずるmampuku1年以上前あと一週早く投稿できればよかったのですが…笑 他にも小ネタがないかどうか要検証ですね二階堂地獄ゴルフ『二階堂地獄ゴルフ』はロシア文学である1わかる « First ‹ Prev 1 2 3 4 5 6 7 8 9 … Next › Last » もっとみる
終末を旅する少女が、人々の想いに触れ、出会い、別れウスズミの果て 岩宗治生starstarstarstarstarmampuku現代よりちょっと進んだサイバーパンクみのある近未来世界のポストアポカリプス。怪物と疫病によって崩壊し汚染された世界を“浄化”しながら人類の生き残りを探して旅をする少女。 説明口調を極力排して没入感を高めてくれているため、「破滅後50年経つのになぜ食料があるのか」「なぜ主人公の少女は感染しないのか」など、読んでいて「あれ?」と思わせる謎が結構あとになってから判明したりする。登場人物に愛着が増して没入度が高まっていくにつれ、情報量も少しずつ増えていく。SF特有の、情報の物量でいきなり殴られるあのハードルの高さがなく、とても読みやすい。mampuku1年以上前『ウスズミの果て』のお気に入り度をstarstarstarstarstarにしました。ウスズミの果て岩宗治生職業漫画の極致でもあり、実は美少女漫画でもある神田ごくら町職人ばなし 坂上暁仁starstarstarstarstarmampukuこの作者の漫画を初めて読んだが、いったい何者なんだ…… トーチらしい漫画といえばそうだが、果たしてどれだけの知識、取材、リサーチがあればこれほどの解像度で江戸の街が描けるのか。陳腐なコメントになってしまうが職人たちの息遣いや染め物や木材の匂いなどさえも感じられるほど。 ただそれだけでなく、職業モノの短編としてとにかくストーリーがエモい。特に1巻後半の『左官』にはクリエイター物の魅力が詰まっている。江戸というひとつの場所と時代を切り取っていながら、悠久の時間をも感じさせる。 少し幼い顔立ちの女の子が主人公の話が多いのも特徴だ。職人漫画というやや堅苦しくなりそうな舞台がぱっと華やかかつ柔らかくなる、という一般的な美少女漫画的な効果も確かにありつつ、三者三様に奮闘する彼女たちの姿に、この時代にも色々な女性の生き方があったのだろうなと想像させられる。mampuku1年以上前『神田ごくら町職人ばなし』のお気に入り度をstarstarstarstarstarにしました。神田ごくら町職人ばなし坂上暁仁mampuku1年以上前『空をまとって』をフォローをしましたmampuku1年以上前■全巻読了 社会の在り方に関心がある人ほど、『BEASTARS』という作品世界観と現実の人間社会にアナロジーを見出したくなるかもしれない。草食動物のか弱さを現実のジェンダーギャップに、肉食獣の立場の弱さを現実の人種差別に置き換えて読めばなにかのヒントが得られそうな気がしてくる。しかし結局、『BEASTARS』のあまりに独特でイカれた世界は、ジェンダー、人種、宗教、世代、文明などあらゆる現実の問題とも似ていないために、無理矢理アナロジーに当てはめようとすれば作品が持つ複雑で深淵でどうしようもなく残酷な魅力が狭まり損なわれてしまう。 科学や歴史を信奉し、貨幣に飼いならされているところは我々人間とそっくりだが、最も異なるのは『BEASTARS』の獣たちが理性の存在をそれほど信じていないところかもしれない。 作品のクライマックスでルイは語る。肉食獣は肉を欲するが、その本能は否定されるべきではない。それでも肉食獣と草食動物は共存できるはずだと。ルソーの言葉を借りれば、肉食、草食どちらの特殊意志も保持したまま、獣全体の一般意志を追求できるはずだということだ。ずいぶんと理想主義的だが、少年漫画としては百点満点の締め方といえなくもないか。 BEASTARS個人的読書録3わかるmampuku1年以上前■12巻まで読了 ルイを“分かち合った”レゴシ。読みながらぶっ飛びすぎててなにやってんの感があったが、のちの大人たちの困惑ぶりとルイの吹っ切れっぷりを見比べて、あぁ青春ってこんなにも視野が狭くて危なっかしくて、大人になると忘れてしまうものなのかとBEASTARS個人的読書録4わかる個人的読書録BEASTARS 板垣巴留starstarstarstarstarmampuku■6巻まで読了 肉食獣たちの反社組織「シシ組」が、「ライオン組」でも「獅子組」でもなくなぜカタカナだったのかが伏線回収される。「ししおどし」の「しし」ってことね。 社会派だったり哲学的だったりする部分がフォーカスされやすいけど、結構しっかり少年漫画してるところも好き。 思春期の時分に読んでいたらがっつり性癖歪められていたかもしれない。mampuku1年以上前『BEASTARS』のお気に入り度をstarstarstarstarstarにしました。BEASTARS板垣巴留アンメット(Unmet)であるということはアンメット 大槻閑人 子鹿ゆずるstarstarstarstarstarmampukuUnmet Medical Need(満たされていない医療ニーズ) これをタイトルに掲げている通り、単に医療という大きなテーマに挑んでいるにとどまらず、いろいろな悩みや欠点を抱えた人間同士の相互のドラマが非常に面白い漫画です。 主人公の脳外科医は外科として優秀なだけでなく常に患者やその家族に寄り添うことによって救おうとする。しかし医療全体の最適化を図りたい経営者たちや、異なる信念を持った同僚たちとしばしば衝突する。また寄り添うべき患者も、患っているのはほかでもない「脳」である。いくら主人公たちが有能かつ真摯だとしても、彼らの苦しみを本当の意味では分かち合えない。数学における不完全性定理のように、医療とは、どこまでいってもアンメット(Unmet)なものである運命なのかもしれません。 医療漫画はどうしてどれもこれも面白いのか、とときどき考えます。膨大な取材や考証、高度な画力、これを社会に訴えかけたいという熱い思い……数え切れないほどに高いハードルが山積みであるため、世に出た医療漫画というのはすべからくハイクオリティでなければならない、という前提はあると思います。ですが読み手の目線から考えたとき、きっと医学とは人間なら誰しも無関係でいられないからなのかもしれないなとも思います。大半の人間は病院で死にますし、日本の制度では死亡確認ができる(=人の生死を判断する)のは医者だけです。病と死について真剣に向き合って本気で描かれたプロの漫画が、面白くないはずなどないのです。mampuku1年以上前『アンメット』のお気に入り度をstarstarstarstarstarにしました。アンメット大槻閑人子鹿ゆずるmampuku1年以上前あと一週早く投稿できればよかったのですが…笑 他にも小ネタがないかどうか要検証ですね二階堂地獄ゴルフ『二階堂地獄ゴルフ』はロシア文学である1わかる
mampuku1年以上前■全巻読了 社会の在り方に関心がある人ほど、『BEASTARS』という作品世界観と現実の人間社会にアナロジーを見出したくなるかもしれない。草食動物のか弱さを現実のジェンダーギャップに、肉食獣の立場の弱さを現実の人種差別に置き換えて読めばなにかのヒントが得られそうな気がしてくる。しかし結局、『BEASTARS』のあまりに独特でイカれた世界は、ジェンダー、人種、宗教、世代、文明などあらゆる現実の問題とも似ていないために、無理矢理アナロジーに当てはめようとすれば作品が持つ複雑で深淵でどうしようもなく残酷な魅力が狭まり損なわれてしまう。 科学や歴史を信奉し、貨幣に飼いならされているところは我々人間とそっくりだが、最も異なるのは『BEASTARS』の獣たちが理性の存在をそれほど信じていないところかもしれない。 作品のクライマックスでルイは語る。肉食獣は肉を欲するが、その本能は否定されるべきではない。それでも肉食獣と草食動物は共存できるはずだと。ルソーの言葉を借りれば、肉食、草食どちらの特殊意志も保持したまま、獣全体の一般意志を追求できるはずだということだ。ずいぶんと理想主義的だが、少年漫画としては百点満点の締め方といえなくもないか。 BEASTARS個人的読書録3わかる
mampuku1年以上前■12巻まで読了 ルイを“分かち合った”レゴシ。読みながらぶっ飛びすぎててなにやってんの感があったが、のちの大人たちの困惑ぶりとルイの吹っ切れっぷりを見比べて、あぁ青春ってこんなにも視野が狭くて危なっかしくて、大人になると忘れてしまうものなのかとBEASTARS個人的読書録4わかる
現代よりちょっと進んだサイバーパンクみのある近未来世界のポストアポカリプス。怪物と疫病によって崩壊し汚染された世界を“浄化”しながら人類の生き残りを探して旅をする少女。 説明口調を極力排して没入感を高めてくれているため、「破滅後50年経つのになぜ食料があるのか」「なぜ主人公の少女は感染しないのか」など、読んでいて「あれ?」と思わせる謎が結構あとになってから判明したりする。登場人物に愛着が増して没入度が高まっていくにつれ、情報量も少しずつ増えていく。SF特有の、情報の物量でいきなり殴られるあのハードルの高さがなく、とても読みやすい。