野愛
野愛
2020/05/20
みんなが自分を否定しないで生きられますように
生きることは難儀だなあ。 読んだ直後なんとも言えない気持ちになって思わずTwitterで呟きました。 激しい被虐趣味を持つペス山ポピーさんが様々な男性とプレイ(というか殴られる)をしながら、自らの性的嗜好や性自認の根源にあるものと向き合っていくお話です。 イケメンにボコボコに殴られて恋してハッピー、なんて一筋縄ではいきません。 殴られたいという欲求に真摯に向き合ったことで、浮かび上がった性自認。殴られて恋をしたせいで、その性自認が再び自分の首を絞めることになる。 なんて生きづらい。 男と女の二種類しかいないのは何故なんだ、恋してセックスしてそれが当たり前だなんて傲慢だ。 人の数だけ性別があっていいし、性的嗜好があったっていい。それで人類が滅んだって別にいいじゃないか。 というのは極論なのかもしれません。 でも、みんなが苦しまないで生きられたら、自分を否定しないで生きられたらそれがいちばんいいことだと思います。 ペス山さんも自分を肯定して元気に過ごしててくれたらいいなあ。 生きることは難儀です。みんな生きてて偉いです。
野愛
野愛
2020/05/15
焼きまんじゅう食べて死にたい
関東地方に住みついて長くなったものの、群馬を訪れたことはない。 高速道路で通過したことはある。下仁田を横目に「ネギのとこか」と思った記憶がある。花火大会に行ったら中止になって予定が潰れたと知人から聞かされたことがある。 それくらいの認識しかなかった。 こんな危険な場所なんて知らなかった!!!!焼きまんじゅう旨そうって思ってたけど県外なので食うと死ぬ!!!! 和算の大家関孝和!!!!誇る文豪田山花袋!!!!上毛かるたガチ勢と一戦交えたいなんて思ってごめんなさい。 でもね、故郷への誇りって素敵なものです。 わたしもど田舎出身なので自虐として出身地のお話をすることはあるけれど、やっぱりそこには愛と誇りがあるのです。 きっとグンマの人達もそう。だから栃木とバチバチしちゃうんだね。餃子もレモン牛乳も美味しいけど井森美幸も中山秀征も好きだからグンマ自信持ってねグンマ。焼きまんじゅう食べたいよ。グンマがなけりゃ静かなるドンの実写ドラマはなかったんだよ。 生まれ育った地に対してプラスでもマイナスでもどっち向きでもいいから、アイデンティティ抱えてる人って幸せだと思いますよ。帰る地があるということ、人に語るべきことがあるということ、幸せでしょ。 死んでもいいからわたしは焼きまんじゅう食うぞ。
野愛
野愛
2020/05/13
ネタバレ
リアルガチクズほのぼの漫画
ここ2日間くらいTwitterでバズりにバズっていたので興味本位で読みました!! 主人公が完全無欠のクズ!年中無休のクズ!電光石火のクズ! 主人公がパチンコで借金を作った嫁に逃げられたところからはじまるので、嫁がクズなのかと思いきや主人公がクズです。嫁もですけど。 ナニワ金融道に出てくる嫁の貯金使い込んだり会社の金に手をつけたりした人達が可愛く思えるレベル。 ・息子の世話を焼く女教師を強姦 ・自分も借金の取り立て屋となり債務者をガス自殺に追い込む ・息子を売った金でパチンコ ・善良な人間にパチンコを教え借金まみれにする 等のクズ行為をほのぼの絵柄でコミカルに描いています。これはすごい。 パチンコに狂わされたというのはあまりにも都合の良い考えで、パチンコによって人間性が炙り出されてしまっただけなんだろうなと思わせるほどの清々しいクズっぷり。 それでも息子に対する愛があったり、更生しようと病院に通ってみたり、人間らしい部分もあるのよね…と油断したところでやっぱりクズ! といった具合にこちらも振り回されてしまう。いつかはまともになるんだろうな、もしくは天罰が下るんだろうなと思うんだけど人生甘くない。人間は簡単に変われない。クズはクズのまま生き延びるのである…。 そしてオチが秀逸。 是非読んでほしいとは言いがたいけど凄い漫画ではあるので是非読んでほしい!!
野愛
野愛
2020/05/11
漫画だからこそ描けた絶望
太宰治『人間失格』を漫画化した作品。 原作をそのままなぞっているのではなく、現代的かつメタ視点で描かれている。 古屋兎丸先生自身がインターネット上で大庭葉蔵の日記「人間失格」を発見し、読み進めていくというストーリー。 読者は古屋兎丸の目を借りて、葉蔵の人生を追いかけていくことになる。 父を憎みながらも実家の金で裕福に暮らし、仕送りが打ち切られれば女の家に転がり込む姿に、最低だ罪人だと責めたててしまいたくなる。 煙草屋の娘に恋をして、1日に何度も煙草を買い、素直になれず揶揄う姿はなんとも可愛らしい。 他者の目を挟むことで、葉蔵という人間の可愛らしさや狡さ、いやらしさがより鮮明に浮かび上がる。女を誑かす様子なんかは、原作よりも真に迫るものがあるような。 小説『人間失格』も葉蔵の日記を読む他者の視点で描かれている。漫画『人間失格』も同じだが、古屋兎丸視点で古屋兎丸の絵で描かれているので、メタ要素がより色濃く感じられる。 葉蔵を見つめる読者である古屋兎丸を見つめる読者である自分自身。古屋兎丸の目が自分自身の目となり物語に飲まれていく。 嫌悪、軽蔑、共感、友愛…葉蔵に対して様々な感情を抱きながら、共に絶望の果てに追い込まれる自分自身をまざまざと見せつけられる。 小説『人間失格』からは「ただ、一さいは過ぎて行きます。」という一文が示す通り、すべてが過ぎ去ったあとの凪のような絶望を感じた。 対して、漫画『人間失格』からは今まさに激流に飲み込まれて苦悩しているような生々しい絶望を感じた。 それぞれの絶望の味を是非読み比べてみてほしい。 古屋兎丸先生の人間失格が素晴らしかったので 津軽×魚乃目三太先生とか、斜陽×えすとえむ先生とか 相性の良さそうな太宰×漫画家を妄想するのが楽しい…駆込み訴えをどうにか現代設定(どうやって)にしてゴリゴリのBLにしたりとかめっちゃ見たい
野愛
野愛
2020/05/09
ネタバレ
衝撃的な健康法
素直に感動したと言っていいのか思い悩んでいる、というのが正直な感想です。 父を病気で亡くした女子高生・蜜子が健康オタクの叔父夫婦の家で暮らすようになり、恋に健康に将来の夢に…と成長していくお話。 間違いなくいい話。でも健康オタクの度合いがなかなかに過激派すぎてついていけないのですよ…。 野菜やフルーツ中心の食生活はまあわかる。野草をつんで酵素作り、まあうんギリわかる。 飲尿にコーヒー浣腸…。うーん…。オーリング…。なんかもう、うーん。 とは言え押し付けがましいことはしないし、愛に溢れる優しい一家なので、読んで行くうちに人柄はだいぶ好きになれた。めちゃくちゃいい人達なだけに引っかかる、とも言えるけど。 過激派健康法はさておき、ストーリー自体は少女漫画らしくキュンキュン要素も多め。 蜜子と同居するイケメンイトコ・長介の恋物語なのかな?と思いきや、自由奔放でチャラいイケメン・束木との恋物語。 酒と煙草とジャンクフードを好み、持病を抱える束木に野菜料理を振る舞ったり、適度な運動を促したりするうちに健康になってハッピーエンド…だったらよかったのに。 父を病気で亡くした蜜子だから、幸せになってほしかった。好きなようにさせていた父を失った後悔に苛まれていた蜜子が、好きなようにさせてあげられなかったことを後悔している姿は見ていられなかった。そういうストーリー、ということを忘れるくらいに辛かった。 不摂生する人を論うような漫画ではない。酒や煙草やジャンクフードが束木を殺したという描写は一切ない。 そういうことが言いたいの?って一瞬でも邪智したわたしが間違っている。でも。でも。 ストーリーを批判したいわけではないのだ。ただ、みんなが幸せであってほしかった。束木は顔だけでなく心もイケメンで、優しくて明るくて本当にいい奴だから死んでほしくなかった。 束木の死を乗り越えた蜜子を見て、思わず泣いた。 健康であれ不健康であれ、残されたものは前を向いて生きるしかないのだ。思い出を寄せ集めて、幸せであったんだと信じて、生きるしかない。 健康な者だけが幸せになれるなんて物語じゃない、自分の歩んできた道を信じて生きることこそが大切 そういうメッセージだけを、この漫画から受け取りたいと思います。
野愛
野愛
2020/04/28
読んだひとだけが闘える世界で 
閉塞感を打ち破る何かが欲しい。火星人でも魔法でもなんでもいいから、ここをぶち壊してどこかに行きたい。 外界から隔離された凹村という小さな村。少年少女たちはどこにも行く場所がないと嘆いたり、ここが世界のすべてだと目を伏せていたり、閉塞感に包まれながらも平和な日常を過ごしている。 ある日、物体Xが落下する。 何も変わらないと思っていた世界に、非日常がやってきたらどうする? 宇宙人が侵略してきたら、窓からテロリストがやってきたら、異世界に転生したら。 平和すぎてつまらない日常を変えたくて、ありもしないことを夢想する。起こり得ないと思っているから、誰もが一度は通り過ぎる妄想。 本当に起こったら、どうする?逃げる? わたしは闘う?見て見ぬふりをする?撃ち落とす? 闘う妄想はしていても実際は体が動かないかもしれない。恐怖すら感じず、人ごとのように過ぎ去るのを待つかもしれない。 だって、そんなことあるわけないんだから。 凹村ほど閉ざされてないにしろ、何もない、絵に描いたようなくそド田舎で育った。 日常に疑問すら持たない周囲の人間に辟易しながら、カラオケとかセックスとかお手頃な娯楽を消費する青春を送っていた。 凹村みたいに閉ざされた空間で、インターネットだけが世界だと思っていた。 そんな青春から逃れていつの間にか大人になっていた。 ところで。 どこか新しい場所へたどり着けた? 物体Xが落下したらどうする? 火星人が侵略してきたらどうする? 西島大介先生が描いてみせた答えは、実にクールだ。 クライマックスの怒涛の畳み掛けがもの凄い。滅茶苦茶じゃねえか、投げっぱなしじゃねえかと思う人も少なからずいるのではないか。絶望的だと思う人もおそらくいるだろう。 わたしが見たのは希望だった。 確かな闘い方を、ひとつ教えてもらった。 この世界はつまらないしちっぽけだ、それなのに見えてない部分や知らない部分が多すぎる。何もないように生きることだって、難しい。最悪で滅茶苦茶で容赦のない世界で、わたしたちはは生きるしかないのだ。 ならば。この方法で闘おうじゃないか。 パルプンテなんて待ち望んでる暇があったら、読みましょう。そして、世界と闘おう。 最後まで読んだらきっと、闘えるはず。