TKD@マンガの虫2024/08/27予想通りの展開と予想を上回る情緒この作品のストーリー展開は基本的に予想通り進んでいく 読んでいて思わず「ホントにこうなるのかよw」と ツッコんでしまったほどだ。 例を挙げると、 「休日にお出かけしてたら、気になる男の子の相原くんが 知らない綺麗な女の人と歩いてる!」 「ショック〜!でも、怖がらずに彼女のこと相原くんに聞いてみよう! もしかしたら私の勘違いかもしれないし!」 「相原くん、昨日一緒に歩いてた女の人って…」 「え??あ〜!なんだお姉ちゃんだったんだ〜!」 「な〜んだよかった!一安心!」 「ん?でもお姉ちゃんって言っても義理って言ってたような…」 「まさか!そんなわけないよね〜」チラッ 「いや、コイツッ!お姉ちゃんのことを話す時だけ 見たことないくらい優しい顔をしてやがるッ! 絶対異性として見てるじゃねぇか!」とこんな感じで かなりキツめの意訳をしてしまったが 概ねこんな半世紀近く擦り倒されてきた展開を この漫画は真正面から全力でやっている ただ、王道というのは長い年月を得ても変わらずに面白い普遍性が あるから王道と呼ばれるのであって、取り扱い方さえ工夫すれば 現代でも切実感のあるリアルな物語として描くことができる。 この作品はその「取り扱い」が非常に美味かった。 決して先に僕が書いたような80年代的なバグったテンションでは 描いておらず、むしろ正反対な柔らかく、澄んだ空気感で描かれている セリフを最小限に抑えつつ、 絵でキャラクターの感情のわずかな機微を描いていおり、 読んでいると本当に予想通りのことしか起きないにも関わらず、 どんどんキャラクターの内面に引き込まれていってしまうのだ。 この引き込み方が他の漫画と比べてちょっと度を越していて 本当にセリフが全くないまま感情や状況の変化が起こるので 読んでいると、紙面全体からキャラクターたちの声のない切実な訴えが 表情や演出から聞こえてくるのだ。 もちろん、そのために使われる演出は瞬時にわかるような平易なものが多いが 作者特有の絵柄やコマ割りも含めた作品全体の雰囲気づくりのお陰で チープなものという印象は受けず、むしろ逆にリッチなものにすら感じる このあまりにも尖った作劇法でも読者を置いてきぼりにしないために あえてストーリー展開は擦り倒されたものにしているのだろう。 ただ、このストーリー展開でここまで読者をのめり込ませるというのは 本当にすごいことだと思う。 磨き上げられた独自の画風と漫画的なセンスの賜物だ。 過去の読み切りを見ると叙述トリックを使ったどんでん返し(少女と毒蜘蛛)や 読者の解釈に委ねるようなラスト(さみしがりやな僕ら)なども書いていたので この作風のまま作者独自のストーリー展開を見せる漫画も見てみたい夏の終点西尾拓也7わかる
TKD@マンガの虫2021/12/26繊細で儚げなペンタッチと細やかな人物描写で描かれる骨太なホームドラマアパレル系の会社で働く末っ子のニイ 喫茶店を営む3女マコ 役所勤務の次女タエ シングルマザーの長女イチ 実家で一人暮らしの母 そして5人で育てた宝物であり長女の息子の岳 で構成される八条寺家の物語を描いた今作 本作の魅力はなんと言っても 繊細なペンタッチで描かれた人物描写だと思います 池辺先生の絵は線一本一本に着目してみると非常に繊細で今にも折れてしまいそうなものに見えますが、その線が集まり絵になったときには 不思議と一本芯が通ったような独特の力強さを持つ そんな絵の中で語られる5姉妹それぞれで全く違う社会への関わり方や家族への愛情表現は 長女の離婚と父親を失ってしまった息子というトラウマを抱えたまま生きている 彼女達なりの儚いながらも芯の通った力強い信念を見事に描いています そして、5人の女性たちの芯の通った生き方は 今、何かと不安定な社会の中を生きる僕たちが失いかけている 大切なものを思い出させてくれるかもしれません。ブランチライン池辺葵4わかる
TKD@マンガの虫2021/12/22松本大洋ここにきての最高傑作!?『鉄コン筋クリート』やスポーツ漫画の大傑作『ピンポン』を送り出した 漫画界の生きるレジェンド松本大洋待望の最新作 物語は主人公塩沢が30年務めた出版社を退職し漫画編集者として引退したところから始まり、彼が辞めたことで起こる周りの担当作家や編集者達の変化を丁寧に描写していきます。 私が個人的に松本大洋作品前作で通底して素晴らしいと思う点は『人間の暗い部分弱い部分を逃げずに描写するところ』で、例えば大傑作『ピンポン』でも類稀な才能を持ちながら高い壁にぶつかり一度は卓球から逃げ出してしまうペコという場面で自尊心が打ち砕かれた人間の脆さをしっかりと描写しています。 もちろん今作でもそう言った要素が見事に描かれており 例えば、一度は大ヒットを生み出しながらも長い漫画家生活の中で情熱が擦り切れてしまったベテラン作家長作が様々な葛藤を抱えながらもう一度奮起して漫画に向き合う姿が情感たっぷりに描写されており、 私個人としては「もしかしたらそう言った描写に関してはこれまでの作品の中でも一番なんじゃ?」と思っています。 というのも、今作は漫画に関わる人々というおそらく松本先生から見て最も身近なところに生きる人々を書いているので、人間描写がこれまで以上に切実感とリアルさを持っているのではないかと思います。 ここからは読んだ人向けですが、長作が爆音で包まれるパチンコ屋の中で涙を流すシーンには思わずこちらも涙を流してしまいました。東京ヒゴロ松本大洋10わかる
TKD@マンガの虫2021/12/18不器用な生き方しかできない人に読んでほしい侍漫画「ジブン不器用ですから」 日本人ならば誰もが一度は聞いたことのあるであろうこの台詞は1980年代放送された日本生命のCMで故・高倉健さんが放ったものだ。 僕はこのCMを一度も見たことがないし、実際に高倉健さんがこのセリフを言っているところを見たこともないが、自分を含めた多くの日本人男性の気質を言い当てた見事なセリフだと感じるのと同時にこの台詞が残り続けてしまうところに日本人男性の生来の生き辛さと悩みが集約されているように思う。 そして、そんな不器用な日本男性の頂上決戦漫画がこの『バガボンド』なのかもしれない。 なにせ、登場する侍達がみな周囲から誤解されながらも実直に己の剣を磨き続けることしか出来ない不器用な男達ばかりなのだから。 おそらく、多くの人はこの漫画を主人公宮本武蔵が『ドラゴンボール』の孫悟空よろしく「強ぇやつ戦いてぇ」と様々なライバル達と死闘を繰り広げるチャンバラ漫画だと思っているであろう。 確かにその認識は全く間違っていないし、大まかに理解するとそう言った作品だと思う。 しかし、今回初めて読んだ僕が最も心震えたのはかっこいい剣劇シーンではなかった。むしろかっこいいとは正反対とさえ言える不器用な生き方しかできない男達の姿に心が震えたのだ。 僕自身もそうであるように多くの日本人男性は陽気ではないし、無口であることが多い、それ故に誤解されやすくそのことを気にしていないふりをしながらもやはり心の奥底では寂しさを抱えている そんな男達の理解されないことの苦しさと その救済を真正面から描いているのがこの作品だと私は思う。 天下無双を目指す主人公宮本武蔵は両親からの愛情を受けることができなかったという生い立ちから自分の感情を表に出すことができないキャラクターだ。 だからこそ彼は相手を打ち負かすための斬り合いという方法でしか自分の内面を表に出すことができない。 自分の経験や考えというものを言葉ではなく剣でしか伝えることができないのだ。 そんな武蔵の剣と相対する敵キャラクター達も彼に負けず劣らず不器用な人たちばかり、そんな剣でしか自分の気持ちを面に出すことができない男達が「斬り合い」というコミュニケーションという言葉からは大きくかけ離れた場所でお互いの気持ちを探り合うのがこの漫画の本質のように不器用なまま20年以上生きてきた僕なんかは感じてしまう。 ネタバレになってしまうから明言はしないが、武蔵のライバルとして有名な佐々木小次郎もそこに本質があるからこそあのアレンジがされているのであろう。 こうして生まれた豊かな交流とつながりも自らが相手を斬ることで断たなければならないという残酷な結末を迎えたとき その言葉を介さない濃密で一瞬の交流に最上級のロマンを感じ僕は震えた 「あぁ!この繋がりをこの豊かで濃密な時間を相手を斬り自ら断ち切らなければならないのか武蔵は!こんな不器用な生き方があるだろうか!?いや!ない!」 とこんな具合に脳内で熱い実況解説をしながら読んでしまい、しばらく『バガボンド』の世界から帰ってこれなくなってしまった。 いい年した男の脳内をこんな風に真っ赤に燃え上がらせるというところに この漫画に込められた熱量を察してもらえれば幸いだが この熱量はどこから生まれているのだろうか? おそらく、それは作者の井上雄彦先生自身の性格からだと私は思う 以前、井上先生のドキュメンタリー見たことがあるが 「なんだか不器用な人だな」というのが全体を通しての感想だった。 おそらく先生自身も武蔵の剣よろしく漫画でしか自身を表現することができない人なのであろう。 その不器用さ故に書かれた漫画は読者を作者と感性をぶつけ合わせる「真剣勝負」の場に誘い、その末に読者は井上先生の実直な漫画に感銘を受けてしまうのであろう。 だからこそ、この作品は20年以上多くの読者を魅了し続けられたのだろう。 不器用もここまで来ればあっぱれとしか言いようがなく、僕自身井上先生や武蔵のように磨き上げた何かで人に衝撃を与えてみたいと一瞬思ってしまった。 まだ、完結はしていない今作だが、井上先生にはどうかこのスタイルのまま本作を描き切ってほしいと勝手ながら願うばかりである。バガボンド吉川英治 井上雄彦7わかる
TKD@マンガの虫2020/09/22『ジョジョ』の基本思想が詰まった始まりの部大ヒット漫画『ジョジョ』の 記念すべき開幕を告げる部 ではありますが、 ファンの人でもわざわざ読み返すことは あまりないのではないでしょうか? 私の周りでも「1部が一番好き!」 という人は1人もいません。 確かにその後の部に比べて バトルも地味なものが多く 現代から見ると時代を感じるキャラクターが多いので若い人たちが見ると 物足りなさを感じてしまうのは 仕方ないことだと思います。 しかし、今回久々に読み返して 私はビックリしました! 第1部にはこの後30年近く貫かれ続ける 「ジョジョの基本思想」が 詰まっていたのですッ! それは3巻で語られる ツェペリさんの3つの教えです! ①相手の立場に身を置く思考。 ②「勇気」とは怖さを知ること 「恐怖」我がものとすること。 ③「成長」には犠牲が付き物 「犠牲」成長につなげられる人間こそ 美しい人間である。 おそらく『ジョジョ』はこの3箇条をもとに 作られているのでしょう。 相手の立場に身を置くことで、 敵キャラの造形を 細かく描写することができる。 そして、「恐怖」を我がものとする。 つまり、克服しようとするからこそ 「ホラー映画」に影響を受けた シーンづくりをする。 そして、ジョジョたちが犠牲を成長に つなげていくからこそこの漫画は 「王道」なのだと思います。 これらの基本思想があり、 そして、ジョナサンの正義漢としての描写も 少し過剰ではありますが、 キチンと入っています。 このジョナサンの過剰なまでの 「いい子」「正義漢」描写があったから 後のジョジョはどんなに不良でも ジョナサンの子孫だからという 土台の安定感から ヒーローとして自然に 読者に迎え入れられる のではないでしょうか? そんな感じで、あの『ジョジョ』の 始まりの部がただの旧時代の 漫画の訳がありません。 一回読んだだけで その後読み返してないという人は 是非一度読み返してみてください! 自分の好きな 『ジョジョ』のエッセンスが 生まれた瞬間を 何個も発見できると思います!ジョジョの奇妙な冒険 第1部 カラー版荒木飛呂彦9わかる
TKD@マンガの虫2020/09/09荒木飛呂彦 格闘の歴史②『ジョジョ』の荒木飛呂彦先生の連載2作目の今作 イタリア旅行で肉体美にこだわった ルネサンス美術に出会い、 そしてリドリー・スコット監督の 『エイリアン』を見て究極生物という 概念に気づき作り上げられた作品です! バオーという寄生虫みたいな生物に寄生され超人的な生物に変身できるようになった育郎を主人公に小さな女の子を助けるために戦う超王道ストーリーです! 『エイリアン』のイメージを少年漫画的な フォーマットに昇華させた見事な作品です。 当時B級と呼ばれながらも画期的なアイデアが詰まったホラー映画のエッセンスを 少年漫画の中に持ち込むという 革新的な荒木流創作術が開花した 荒木先生の歴史の中、そしてマンガの歴史の中でも大きな転換点となる作品だと思います ので、荒木ファンだけでなく全マンガファン必見の作品ではないでしょうか? 主人公の育郎が戦闘中は喋れないので、 代わりにナレーションが心情などを説明してしまうので感情移入がしにくいという問題点があるからか、打ち切りとなってしまった 作品ですが、この打ち切りは後の『ジョジョ』での大爆発に繋がるので、 意義のある打ち切りだったと思います。バオー来訪者荒木飛呂彦4わかる
TKD@マンガの虫2020/09/09荒木飛呂彦 格闘の歴史①『ジョジョ』の荒木先生の初連載作品 作品の雰囲気はロマン・サイコホラーと言った感じです。 正義漢でもなければ悪役でもない ダークヒーロー的な造形の主人公のビーティは当時のジャンプでは相当新しかった のではないでしょうか? 荒木先生が同じ歳で『キン肉マン』を描いたゆでたまご先生に負けないために自分の個性を探っている時の作品で、当時ではあまりなかった『バビル2世』風の知力を使っての戦いと高橋葉介先生風のロマン・サイコホラー に影響を受けて作った大クセ漫画です! 『ジョジョ』に至るまでの荒木先生の格闘が窺える荒木ファン必見の作品でだと思います! この格闘は次回作の『バオー来訪者』に引き継がれていきます!魔少年ビーティー荒木飛呂彦4わかる
TKD@マンガの虫2020/06/23全てのキャラが独り言で会話するラブコメディデッサン風で統一された絵柄や 情感たっぷりのようでどこか乾いた 雰囲気作りは見事としか 言いようがありません。 ここまで自分の世界観を貫いて作品を 描いている漫画家も 珍しいのではないでしょうか? 連載後期になると羽海野チカや浅野にいお などの後輩漫画家の影響をダイレクトに 受けながらも自分の世界に咀嚼してから 出している辺りも素晴らしいと思います。 そして、なんといっても鬱々とした 若者の描写ですね。 ほとんど全てのキャラが若い自分では どうしようもできない問題を抱えていて、 それを消化できないまま他人と接するので、会話が一方通行を通り越してほぼ独り言に なっています。 しかし、そこが素晴らしい! 普通は会話として成立するようにセリフを 整理するのですが、あえてそれをやらない ことで青い時期を過ごすキャラたちを 描写しています。 そこに共感できてしまう人は この作品にとことんハマってしまう と思います。 あと、この作品を批判するコメントで よく見るのが「恋愛模様が進展しない」 というものです。 しかし、そんなことは当たり前です! どのキャラも自分のことで精一杯で 他人に構っている暇なんてないんですから。 それでも、好きな人と付き合いたいという 欲望は抑えられない。 そんな時期の若者を見事に描き切った 傑作だと思います。イエスタデイをうたって冬目景3わかる
TKD@マンガの虫2020/05/09いろんな愛の語り方があることを教えてくれるマンガ老紳士たちの色気に男の僕も やられてしまいました… 老眼鏡をかけた初老の老紳士だけが働く レストランで働くことになった 主人公ニコレッタの視点で進む今作 ノーマルな彼女が次第に老紳士に ハマっていく過程が描かれているので 最後の方には男の僕も思わず 「キャー!!」と黄色い歓声を心の中で 挙げてしまいました… メインのクラウディオも素敵な紳士ですが、 僕が好きなのはソムリエのジジです! 多くを語らず、ワインで愛を表現する 彼の美学に思わず酔いしれてしまいました しかし、よくよく考えるとジジに ワインで愛を語らせているのは 作者のオノ・ナツメなので、 「やっぱりオノ・ナツメスゲェな!」 となってしまいました。 男性が読んでも勉強になる モテ学が満載なので 素敵な紳士になりたい男性は必読です!リストランテ・パラディーゾオノ・ナツメ1わかる
TKD@マンガの虫2020/05/08ええい!オノ・ナツメは化け物か!!まず一言言わせてください。 「どの作品も完成度高すぎるだろ!!」 30ページ以上あるものから 10ページ以内の作品も全て人情もので まとめていますが、 オノナツメのデフォルメキャラと演出で 描くと心の中に ふわっと風が吹いたような感動が味わえ 病みつきになること間違いなしです。 実在感があるようでなく、かと言って 「こんな人々はいないのか?」と言われれば 「いや、何処かにはいるはずだ!」と 思わせてくれる非常に不思議なバランスで 成り立っている作品です。 もちろん、そう思わせるような仕掛けは 擬音を使わない、マンガ的な記号を使わない 等がありますが、それだけでは表現できない 叙情のようなものがあります。 「オノナツメを読み始めるならまずはコレから読んでほしい!」そんな一冊でした。Danza[ダンツァ]オノ・ナツメ2わかる
TKD@マンガの虫2020/05/07安心と安定の「オノ・ナツメ」クオリティ!ニューヨーク市警の警官たちの日常を描いた本作。 見所はなんと言ってもオノナツメ独特の すっきりした読後感と各キャラに注がれた 優しい目線! この目線でキャラを描かれたら好きに なるしかない!読み終わったあとの彼らを 想像せざる終えない… もちろん、「ネームの巧さ」は今作でも 健在で群像劇という描くのが難しい題材でも ラストにかけての収束感のあるストーリーと 語らずとも多くのことを伝える演出は 「お見事!」としか言いようがありません! 「こんなすごい漫画を描く人なら他の作品も面白いに決まってる!」と思わせてくれる 作品でした!! COPPERS[カッパーズ]オノ・ナツメ3わかる
TKD@マンガの虫2020/04/30『違国日記』は『Zガンダム』+『エヴァ』!?この作品のテーマは 「あなたの感情はあなただけのもの、 故にあなたは自由で、そして1人ぼっち だからこそ、理解し合うのではなく 寄り添い合う」と言ったものです。 ヤマシタ先生自信を調べていくと 『エヴァ』放送当時14歳という リアルチルドレン世代。 だからこそ、先生はシンジのような 「親に捨てられた子供」を主人公に することが非常に多い。 しかし、そんなシンジもいつまで経っても 14歳のわけじゃない、大人のなっていろんなことに折り合いをつけながら生きている。 そんな中、かつて自分が感じた孤独を抱えた 少女が目の前に現れる そんな彼女を救おうとするかつて「シンジ」だった大人 すごい!!『Zガンダム』だ!! カミーユを救おうとしているシャアの関係にすごく似ている! つまり、この物語は「大人になった シンジがシャアになって子供を救う」話だ! ものすごく男の目線に寄ったら こうなりました… 違国日記ヤマシタトモコ3わかる
TKD@マンガの虫2020/04/29家なき子、裸族と出会う導入はヤマシタトモコ作品によく見られる 「親に捨てられた子供が、変わった大人と 出会う」という一見重たいモノですが、 読んだ中では今作が一番コミカルに 誰でも楽しめる形として描かれている。 しかし、どれだけ明るくしても 実際にたえ子の境遇は悲しいモノだし、 タイトルの通り彼女はまったく泣かない つまり、感情が抑えられている そんな彼女の代わりに泣く、 心も体も裸の升田 こんな2人を見たら そりゃ応援したくなりますよ!! 「2人の今後に幸あれ!」 って気持ちになれる一冊でした!ドントクライ、ガールヤマシタトモコ3わかる
TKD@マンガの虫2020/04/28ネタバレリアル君の名は入れ替わる男ではなくおじさんで女の方は姿勢が悪くモテないJK JKになったおじさんの全能感やおじさんになったJKの絶望などが非常に細かく描写されていて胸打たれました。 さらに、全能感あふれていたJKおじさんの転落や迷い、おじさんJKの1から始めるサクセスストーリーも短いページの中で段階を踏んで細かく描かれているため、2人の新しく始まった人生をのぞいているような気分になります。 そして、ラストには入れ替わった2人は今後どういった人生を送っていくのか? 他者と混ざり合うことの恐怖と喜びについても描写しています。 こうしてクチコミを書くとたった2冊の中にいくつのテーマを盛り込んでいるんだ!? と思いました。 また、読み返したくなってきました… WHITE NOTE PADヤマシタトモコ5わかる
TKD@マンガの虫2020/03/13「これでいいのだ」をモットーに生きる今の若者たちヤンマガでたまたま目にし度肝を抜かれ慌てて単行本を探して読みました。 非常にゆるい雰囲気で話は進みますが、作者なりのしっかりとした哲学が筋として通っていてなかなか味わい深い漫画になっています。 作者のトミムラコトさんの過去のエッセイ漫画などを読むと苦しい家庭環境や自己の性の問題に対して悩んだ時期のことなどが明るく、笑い話として語られており、そこで培った精神性が今作の中でも貫かれているように感じました。 何か大きな問題を乗り越えた若者がたどり着いた哲学が「これでいいのだ」だったのではないかと思います。(作者のバックボーンも赤塚先生の幼少期の頃の話を思い起こさせます。) また、登場人物たちを類型化せずにきちんと描こうという明確な意思が感じられ、その点も非常に素晴らしいクオリティで仕上がっています。ギャルと恐竜森もり子 トミムラコタ4わかる
TKD@マンガの虫2020/03/07画力と繊細なトーンワークに裏打ちされた演出力表紙の目ヂカラに心を掴まれてジャケ買いし、内容を読んでさらに心を掴まれました。とにかく画力を活かした演出が抜群です。 キャラの作画はCLAMPの目ヂカラと矢沢あいのフェミニンな細身のシルエットを見事に融合させており奇跡的なバランスで成り立っています。 そして手の細かな演技や表情付けなどは週刊漫画とは思えないほど繊細に描写されており手の動きだけでキャラの悲痛な感情が伝わってきます。 背景に関しては繊細なトーンワークによる光の表現が特に素晴らしく、この現実感のあまりないキャラたちを違和感なく世界に溶け込ませています。 さらに、シリアスとギャグの配分が非常によく。80〜90年代のサンデーが好きだった人にはたまらない配分になっていると思います。店長がパトレイバーの後藤さんに似ていますがその辺りの感覚はパトレイバーに近いと思います。 ストーリーに関しても初めての挫折を経験した少女の鬱と中年の危機に差し掛かったおじさんの鬱という2種類の鬱を恋愛という誰にでもわかる主題を使いながら見事に描き切っています。 少女漫画が好きな人、そして少年漫画が好きな人、もちろん青年漫画が好きな人、どの層の人にもお勧めできる恋愛マンガです!恋は雨上がりのように眉月じゅん8わかる
TKD@マンガの虫2020/02/10圧倒的な構成力とキャラ造形による暴力的な面白さ田村先生の作品はこれが初めてでしたが、まさかここまでのものとは思っていませんでした。 前半はミステリーとサバイバルそして王道の少女漫画構造で読者を引き込み、中盤に差し掛かるあたりで少女漫画で扱うには非常に重いテーマを絵の力とネーム力でギリギリ少女でも読める形に踏みとどまりながらストーリーを進行させていきます。 そして、終盤に差し掛かるあたりの富士号編と佐渡島編はこれまでの因縁、伏線を全て回収しながら人が集まって社会を形成するという問題について非常にフレッシュな若者らしい回答をキャラクター自身が出していく過程はキャラクターが本当に人間になっていくようです。 そして3.11問題とのリンクは偶然だとしても何か神の見えざる手が介入したとしか思えません。そういった時系列を意識して読むと感動も一層増します。 田村先生とキャラクターたちが苦しみながら出した回答はこれからを生きる我々にとってとても大事なものになると思います。7SEEDS田村由美8わかる
TKD@マンガの虫2020/01/11サイボーグの心は涙で濡れている言わずも知れた石ノ森章太郎の代表作 作品内に散りばめられた戦闘描写、コマ割りは50年経った今でも全く古臭さを感じさせません。特に009が使用する加速装置の演出は本当にカッコいいです。 そんな今作のストーリーは誰もが知っているとは思いますが、敵組織(ブラックゴースト)に改造された身寄りのない人間たち9人が組織に反旗を翻すという仮面ライダーなどとも似た王道の少年漫画的ストーリーです。 しかし、石ノ森のすごいところはサイボーグをカッコいいものとして捉えるだけではなく悲哀を抱えた悲しい人間としても捉えたところです。 そのキャラ造形を反戦のテーマと重ねることでストーリーに一層の深みを与えています。 特に2巻の0013との戦い、6巻のラストには戦争経験者としての石ノ森のメッセージが読み取れると思います。 さらに、後の24年組と呼ばれる竹宮恵子や萩尾望都のキャラにもつながる009(ジョー)の悲しみを抱えたウェットな少年像も大きな魅力の1つです。 後の少年漫画的演出とストーリーそして少女漫画的キャラ造形のベースとなった大傑作です。サイボーグ009 【石ノ森章太郎デジタル大全】石ノ森章太郎2わかる
TKD@マンガの虫2019/11/22漫画の神の片鱗が垣間見える一作ドフトエフスキーの同名小説を手塚治虫が漫画化した作品ですが、まず驚くべきことは文庫本で約1000ページ以上ある原作を実験的なコマを使った省略方法や圧倒的な構成力でたった131ページにまとめ上げているという点です。 ストーリーや登場人物の役割などを一部アレンジはしていますがおおよその筋道は追えるようになっており、またストーリーを追うだけでなく登場人物たちの切迫感や物悲しさをあくまで子供に読んでもらうためのものなのでコミカルな描写も入れながら構図やセリフで見事に表現しています。 特にラストの見開きページでは、それまでの主人公ラスコルニコフの個人的な物語から視点が広がり世界全体の様子が描かれますが、これを絵の力のみで悲劇的にも喜劇的にも取れるように描いており、手塚治虫の表現者としての圧倒的な才能を垣間見ることができます。 私は先に原作を読んでから今作を読みましたが、未読の方でも全く問題はないと思います。また、原作を読んだという方にも手塚治虫が罪と罰をどのようにまとめあげたのかという点と原作とは違ったラストをどう読み解くかどういう点でも非常に興味深い作品になっています。罪と罰手塚治虫8わかる
TKD@マンガの虫2019/11/13天才が生まれた一瞬の輝きを閉じ込めた一冊まず、度肝を抜かれるのが巻頭にフルカラーで収録されている「おなもみ」です。 遠くに引っ越してしまう幼なじみの少女に対する未練を少年の視点から極限にまで削ぎ落とされた台詞と洗練された演出、メタファーを使うことでわずか8ページで描写しきった傑作です。初めて読んだのは何年も前ですが今だにその時の衝撃が忘れられません。特に見開きの一枚絵の構図と吹き出しの位置はこれまでの自分漫画体験には全くないもので「こんな漫画の見せ方があったのか!?」とパニック状態になりました。 また、色彩センスも抜群で少女漫画らしい水彩メインのパステルカラーで実在感がありながらもどこか幻想的な空間を描き切っています。 かわかみ先生の作品、特にこの本に収録されている作品には、女性作家でありながら男性目線のモノローグで男性が女性に対して密かに抱いている感情を暴き出しています。一見すると男性に対して厳しい目線が向けられているように見えますが、逆にそこまで理解してくれた上でこのような作品を書いて世間の男性に対して接しているのだと考えると非常に慈愛に満ちた作品として捉えることができる作品が多いです。 なので、女性はもちろんですが、男性にも読んでいただきたい一冊です。少女ケニヤかわかみじゅんこ4わかる
TKD@マンガの虫2019/11/12この一冊で売野機子にハマりました!売野先生の作品は初めて読みましたが、収録されている作品全てどれも傑作です。 表題作の「薔薇だって書けるよ」も素晴らしいですが特に僕の心に残ったのが「日曜日に自殺」です。アーティストが作品に込めたメッセージがどのようにして人々の記憶に残り次の時代、そしてまだ生まれてきていない子供たちに受け継がれていくのかを非常にわかりやすいメタファーを使いながら詩的に表現しています。ラストのコマを見た時には本当に胸を打たれ、自分はきちんと彼らのメッセージを受け取り実行しているだろうか?と真剣に考えてしまいました。 また、同人時代の作品「晴田の犯行」(この作品も非常に完成度が高いです)も収録されているので、先生がアマチュアからプロとしてデビューするまでの軌跡を追うという意味でも価値のある一冊だと思います。 装丁も素晴らしいので、可能であれば電子版ではなく紙の本で手にとって欲しいです。売野機子作品集売野機子4わかる
TKD@マンガの虫2019/11/06ネタバレ少女の変化していく内面をコミカルに描いた傑作様々な形で思春期から大人に変わっていく途中の女の子を描いている大島弓子だが読んだ中では一番わかりやすく、エンターテイメントに振っている作品だと感じた。(余談: 少女の変化していく内面、精神は萩尾望都や竹宮恵子などの他の24年組作家にも同様のテーマを見ることが多い。) 幼女期の段階のロマンをいつまでも信じている主人公 衣良を中心に女友達、王子様、そして王子様に恋する男の子など複雑に入り組む人間関係を独特のタッチで基本コミカルに時々詩的に表現しているので、つまることなくスルスル読めてしまう。そして人間関係のもつれが極限達する中盤に突然差し込まれる見開きのカットには呆然とさせられてしまった。「誰かこの絡み切った糸をスルッと解いてくれればいいのに」と天使のような存在が上から糸を引いている絵の力は凄まじいものがあった。そしてこれは男女問わず思春期の人ならば誰しもが体験する人間関係のもつれを煩わしく思い、誰かに助けを求めてしまう瞬間を見事にビジュアル化している。バナナブレッドのプディング大島弓子5わかる