お母さん二人いてもいいかな!?

壮絶だけどその辺で普通に生活している人の話

お母さん二人いてもいいかな!? 中村珍 中村キヨ
nyae
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読み始め、作者の中村キヨさんが前の奥さんを病気で亡くして別の女性と再婚するところから始まるんですが、別れの部分があまりに衝撃的だったので「その話を描いたエッセイがあるのでは」と思って探したんですけど、多分ないみたいです。そして、作中でも亡くなった方とどのような暮らしをしていたかはほぼ語られません。 メインは酔っ払って道端で座り込んでいたところを中村さんが介抱してあげたことがきっかけで知り合い、結婚(もちろん事実婚)したサツキさんとの生活が描かれますが、その中身は私が想像できるレズビアン同士のやり取りからは想像を遥かに超えるものがありました。 ただそれは、この人達がこうなだけであって、レズビアンとはLGBTとはこういうものという話ではなく、言うなればその辺で生きてるとあるカップルの日常を描いたに過ぎない。 サツキさんには息子が3人いるのですが、当然中村さんとは血の繋がりはありませんので、父と母が1人ずつではない家庭を彼らなりに受け入れなければならない。そこで親が先駆けて周りにカミングアウトするのもありではという中村さんに対し、サツキさんが「子は親を選べない以上、選べることは全て選ばせたい」「遠くの1億人が理解してくれたって、身近な10人が無理解だったら地獄でしょ」と伝えます。ほんとその通りですね。 「愛とはなんなのか」というのも常に問い続けているのも印象に残ります。もちろん答えは見つかりませんが、読者として感じたのは、愛する人が幸せであるように願うこと、かもなと思いました。

爪のようなもの・最後のフェリーその他の短篇

モーニングからリトルプレスまで

爪のようなもの・最後のフェリーその他の短篇 森泉岳土
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森泉さんといえば「爪楊枝で漫画を描く人」ですが、一番最初に掲載されている「最後のフェリー」は初めてボールペンで描いた作品だそうです。 あとがきに「そろそろペンで自分の線を描けそうな気がしたから」とありました。 普段爪楊枝で描いていることに対しては「自分でもよくわからない」と言っているのがなんか笑えました。 通常のマンガ誌に掲載されている読切等は読んだことがあったのですが、文芸誌やアーティスト個人に寄稿したものがあるのは初めて知りました(ランバーロールは読んでいます)。活動範囲が広いというのがわかる短編集です。大林宣彦監督って義理のお父さんなんですね。監督との二人のエピソードを描いた話が好きでした。 タイトルの「爪のようなもの・最後のフェリーその他の短篇」という普通ならどれかひとつの短編タイトルを付けたりするものですが、こういうかたちにしたというのになにか意味がある気がしてなりません。 またこれだけは強く言いたい。紙版を買って読むべし。 作品によって用紙が変えてあり(なのでさわり心地も違う)、ただお金がかかっているなという高級な感じはなく、リトルプレスのような自由さがあります。 ▼こんな感じ

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