たか
たか
12ヶ月前
かわぐち先生ファンなので読まねばと手に取った作品。カワグチニラコ先生といえば田中圭一先生の連載「ペンと箸」で存在は知っていたのですが、まさかこんなドッタンバッタン大騒ぎな幼少期を過ごされていたとは…! ご自身でも幼少期の家庭環境を「(母は)海賊船か部室で子育てをしているよう」と描かれていましたが言い得て妙。男性のアシスタントさんがわんさかいて寝食をともにし、麻雀に飲み会に大騒ぎというまるでラピュタのドーラ一味のような賑やかな家庭。 父であるかわぐちかいじ先生は、衝撃の事実なのですが「現実世界よりも頭の中の想像の方がリアルに感じられ、現実世界のことはぼんやりとしか感じられない」という特異体質の持ち主。 この大所帯を仕切る母は、子供時代に闘病生活を漫画に支えられたという筋金入りの漫画好き。漫画家の妻なら24時間漫画読み放題だと大喜び。かわぐち先生に代わって一手に家計を仕切りますが、良くも悪くも豪快。家が手狭になったタイミングで裏の家が売りに出されると即決で購入し、旧自宅と新自宅の間を工事で繋いで食堂へとリフォームするなど決断力は圧巻。一方で、アシスタントたちと酒盛りし娘のお弁当を忘れたり、引き渡し前の新自宅でぼやを起こしたり天窓を踏んで壊したりとウッカリも豪快。 まあ繊細だったらそもそもこの環境に一緒に暮らすのも、大所帯を率いるのも無理なので当然かもしれません。 このお2人の大学時代の出会いがまた漫画のようで素敵でした…! https://souffle.life/manga/kaiji-kun-chi-no-nirako-san/20221220-2/ そんなかわぐちプロには素晴らしい腕前のチーフアシスタントさんがおり、その奥さんと娘共々家族のように育ったのだそう。 上記のお母さんが忘れたお弁当をチーフアシさんの奥様・ヒロコさんが急いで作って、アシさんが教室まで届けてくれたエピソードや、娘のななちゃんと新幹線の停車中に全員分の駅弁を買いに走らされた(※大人たちは酒盛り中)とか。 現在の価値観とは違う大らかな環境で大雑把に育てられた結果、ニラコ先生とご兄弟そしてななちゃんは逞しくしっかり育ったんだろうなぁとしみじみ。(お母さんのぼやをお兄ちゃん2人が的確に消したところには痺れました。) たびたびニラコ先生の子育ての様子が挿入されるのですが、家事に一切ノータッチだったかわぐち先生と対象的に、今どきのお父さんらしく旦那様は子育ても家事もバッチリ。その対比がまたニラコ先生が育った環境の得意さを引き立てていて、改めて凄まじいギャップを感じます。 かわぐちプロはドーラ一味のようだと描きましたが、こんな漫画のような環境で育ったなんて大変そうな一方でとても羨ましい…!ぜひ2巻も読みたいです!! (▼ヒロコさんとななちゃんと全員分の夕飯を用意するシーン。このあとに登場する枕のような卵焼きもすごい!)
かわぐち先生ファンなので読まねばと手に取った作品。カワグチニラコ先生といえば田中圭一先生の連載...
mampuku
mampuku
12ヶ月前
あの傑作ラブコメ『五等分の花嫁』を描いた春場ねぎ先生が戦隊アクションモノを…!?それってすごくエッッッなんじゃないのか…!??と淡い期待を寄せながら読み始めた本作でしたが、思いもよらぬ読み応えがありました。2023年10月現在、ストーリーは佳境へと差し掛かっていますが、とても面白いです。 怪人のザコ戦闘員である主人公「戦闘員D」が大戦隊「ドラゴンキーパー」を倒すため孤軍奮闘、無謀な闘いに挑む…という導入から息もつかせず二転三転急転直下、予想外の方向へ物語は暴れ出し、ヒーローや怪人すべてを取り巻く深すぎる闇が明るみに……というあらすじ。 まずヒーローたちの戦いにおける“最下層”の存在ともいえる「戦闘員」を主人公としているのが新鮮。物語の前半、彼は得意の擬態能力を駆使し“見習い”として大戦隊組織に潜入。他の見習い同期たちとの交流のなかで見識を広げ、自分の目的や存在意義について自問自答するようになります。 相次ぐ戦いの中で、かつてヒーローたちに壊滅されたはずの怪人側のボス格である「幹部」らの存在や、ヒーローが振るう無敵の力「神具」の正体など、世界の闇がこれでもかとわんさか明らかになっていくなか、自らは幹部ですらなくヒーローの強大なパワーの前には虫けら同然である無力な「戦闘員D」は、何か覚醒したりパワーアップしたりもとくにせず、自問自答したり悩んだりしながら戦場を引っ掻き回します。 こうして紹介していると、これのどこにカタルシスがあるのか?と不思議になりますが、実際に読んでみるとこれまた不思議なことに面白い。 途中で気づいたのは、これってニーチェの言うところの「奴隷道徳」的な世界観なんじゃないかなと(私はニーチェの著書を読んだことないエアプなので間違ってたらごめんなさい) 怪人を束ねる幹部らはもとより、理不尽なまでの力を振るい怪人を屠る正義のヒーローもまた、裏で何か悪いことをしているに違いない──富めるもの、強きものには何か後ろめたい裏があり、貧しき奴隷こそが清く正しい存在である──というイエス・キリスト的世界観ですね。この物語で最も輝いているのは、戦隊見習いや戦闘員、一部の民衆といった“踏みにじられてきた”人たちです。強者たちによって齎される恐怖や理不尽に対し“誇り”や“信念”を掲げて立ち向かっていく姿の美しさにこそ、我々はカタルシスを感じているのでしょう。 戦隊か、怪人か、どちらの味方をするべきか…物語終盤で戦闘員Dは長い長い自問自答の末にひとつの答えを見つけます。一見して「他律」的な板挟みから抜け出し「自律」的な自分だけの正義に辿り着いた戦闘員D。しかしそれは本当の意味では「自由」といえるのだろうか…?カントによれば欲求から導かれた正義は真の「自律」ではなく、物理法則や因果律に左右されない「理性」によってのみ自由は生まれるという。彼が見つけた“自由のようなもの”は果たして本物の自由となりえるのか?結末を見守りたいと思います。
六文銭
六文銭
12ヶ月前
この本読むと謎に元気が出る。 中年のおっさんが、急にサラリーマン辞めて一念発起して漫画家になろうとする話。 突拍子もない展開だが、プロの漫画家にすんなりなれるわけもなく、当然父親にブチぎれられたり、世間とか社会の厳しさとか、そういうのが普通にやってくる。 バイトで糊口をしのぐのだけど、バイト先でも年下にからかわれたり(例えば店長と呼ばれる。ポジションではなく年齢的な意味で)、バイト先のメンバーと合コン行っても合コン相手にディスられる。 逆に、娘だったり、友人だったり、元会社の後輩だったり、応援してくれる人もいる。 人間同士のつながりみたいなのが色濃く出て、主人公を小馬鹿にする人と、そうじゃない人の対比が良い。 最初のうちは、何の根拠のない自信をもっている主人公を薄目でみているんだけど、抜けているけど味のある人間味にだんだん応援したくなってくるから不思議。 周囲の人間に恵まれてて、これはこれで楽しそうとか思ってしまう。 ダメでもいいじゃない、人間だもの、みたいなフレーズが浮かぶ。 俺はまだ本気出してない と思いながら、その可能性の中で生きていくのも、ある意味幸せなのかもなぁ。
六文銭
六文銭
12ヶ月前
タワマン文学なる、格差社会にルサンチマンこじらせたようなものがSNS界隈で話題になった。 そのコミカライズな本作。 テーマ的にあまり興味がなかったのだが、アプリで読んでいて特に添付画像にある2話目がよくてハマってしまった。 結局自分は、男側がうらぶれて、女性が現実をみて早々に見切りをつけて去っていく展開に弱いのだと思う。 それだけだと、男性がいつまで変わらず思い続ける純情っぽく描かれ、他方、女性が変わってしまい不純というか強かというかの対比になりがちですが、本作がグッときたのは 「自分の幸せを自分で選んだ」 というセリフ。 これがキツイ。 変わってないから純情とかではなく、ただその状態を、ともすれば結果的に不幸になってしまう状態でも、怠惰だとか思想に合わないからやりたくないだとか自己を正当化して選択しているだけに過ぎないことを突きつけられる。 そりゃフラれるし、そんな自分に酔っている感じが痛々しい。 (でも、自分はやっぱりこういう男主人公話が好きだったりします。) こんな感じで、うまくいかない人間関係や、一見順調そうにみえて裏がある人間模様をタワマンという現代の成功の象徴通して描かれる作品です。 題材を今っぽくしてますが、本質的なものはあまりかわらない感じが文学だなと感じました。
タワマン文学なる、格差社会にルサンチマンこじらせたようなものがSNS界隈で話題になった。
そ...