風の宿
東京の動物病院で働く獣医師、鹿間一成(しかま かずなり)は院長を殴打する事件を起こし、病院をクビとなる。妻にも逃げられ、彼女の連れ子で10歳になる諷子(ふうこ)と共に両親がに亡くなって以来、一人立ちするまでの間、育ててくれた故郷の信州の伯父夫婦の家で動物診療所をはじめることになるが…。ある日往診の帰りに何気なくバーで一杯引っ掛けようとした一成はそこで偶然、同級生の岩藤と地元商店会の面々に会う。岩藤に誘われ、商店会の将来などを熱く語り合いながらはしごする一成。やがて会はお開きになり一人歩いて家に向かう一成だったが、最後に飲んだ一杯が効いたのか突然腰が抜け、道端の地蔵のところで眠り込んでしまう。その頃、鹿間家では皆が一成の帰りが遅いことを心配していたが、玄関の物音に気づいた娘の諷子が玄関に出てみるとそこには酔いつぶれた一成があった。まるで地蔵が一成を送り届けてくれたような話に疑問を抱く一成だったが、一成は、かつてその地蔵で悲しい事件が有った事を知る…。その他、近くのゴルフ場で過って打ったボールをカラスに当ててしまった女性に母親の面影をみて、優しさを求める諷子の「心を洗いに」、霜が降りる頃になるとなぜか機嫌が悪くなる袈裟二郎とそわそわする家内の昌枝。不思議に思った諷子はある日偶然見かけた昌枝の後をついて行き、以外な事実を知る「冷たいだろうに」などを収録。田舎の暮らしと自然との関わり、そして昨今話題に上がる親子の絆…小山田いくが淡々と描く名作第2巻! 小山田いく先生の当時の単行本コメント『仕事場にやってくる野良猫を、もう何十匹も見てきました。元気な猫とのつきあいは、なかなか楽しいものです。けれど、人に飼われていたらしい猫が、やせて、食べ物をねだりにくるのを見るのはつらいものです。そんな猫がいなくなるよう、願っています。』
むじな注意報 !
月白中学1年4組に転校してきたのは、風の中から、ふらりと現れたような不思議な少年、「むじな」クン。このお話は、「むじな」こと無品誠とクラスメイトたちの友情物語。春休みも終わり、2年生に進級する、むじなクンたち。少しずつ成長しているみんなも心の中ではいろいろ考えているようで… ただ仲良くしてるだけじゃダメってことも多いみたいです。「礼子争奪戦勃発?!」…4月、新学期を迎え、むじなたちも2年生に。だが、皆が明るく新学期を迎える中でむじなのクラスメイト内山礼子(うちやま あやこ)は悶々とした日々を過ごしていた。むじなを一途に思う礼子に、むじなが「好きに順番はつけられない」と言い放ったからだ。とある日曜日、部屋で悶々とする礼子はレイ子に変身し、圭司をデートに誘うが… 思いがけないアクシデントが発生して…?! その他、礼子争奪戦騒ぎの後、少し大人になったかに見える2年4組のクラスメイトたちを見ながら焦りを覚える塩沢楠(しおざわ なん)。楠はむじなにアドバイスを求めるが彼の答えは… 「みんながまぶしく見える時」、新キャラ登場! 乱暴者で何かと暴力をふるう神崎十伍(かんざき じゅうご)。だが、そんな神埼に決闘を挑んだ礼子に神崎は思わぬ弱点を曝け出す「最恐少女」など。等身大の中学生たちのハートフルなストーリーで圧倒的な支持と共感を得た「すくらっぷ・ブック」から16年、小山田いくが再び中学生たちを描く学園ドラマの名作! みんなをホッとさせるニコニコ顔で心のオブラートを溶かし、友情を紡ぎ出してゆきます…。小山田いく先生の当時の単行本コメント 『「道端の名もない花」…なんて言い方が、むじなはきっと嫌いでしょう。「どんな目立たない花でも、ちゃんと名前はあるんだよ。」…と、「あなたが知らないだけでしょ。」…と、笑って行ってしまいそうです。』
霊能バトル
芹多実男 (せり たみお) が小学生の頃に海で出会った少女。二人はすぐに仲良くなり一緒に遊んだが、その時、突如浜を襲った地震と津波に遭遇し、名前も聞けないまま、離ればなれに…。時が経ち、中学2年生になった多実男は、その海水浴場の近くに住む親戚の家にいた。親戚の五行家を久しぶりに訪れた多実男。そこには多実男と同い年のいとこ、彩(さい)がいたが、いきなり目の前に出てきた彩の姿に多実男はビックリ! なんと、彩は今や近所でも評判の霊感少女になっていたのだった。彩は多実男をタミーと呼び、多実男が幼少のころに海で出会った少女を探すことを条件に除霊のアシスタントとしてこき使われることとなる。そんなふたりが今回遭遇した事件は…?! 彩とタミーの凸凹コンビが繰り広げる、ちょっとほのぼの、たまにエッチな霊能コメディー第2巻!! 小山田いく先生の当時の単行本コメント 『江戸時代の、怪奇実話集を読んでいると、じつにいろんなおばけや幽霊が、日常茶飯事のように出たようです。中には、今の科学で説明のつく話もありますが、今よりずっと、目に見えないものに親しんでいた、当時の暮らしって何となくいいなと思います。』
きみはノルン
女神ノルンにでも運命を変えてもらうんだな… 子どもの時からシスターこと石飛静里と、ミューナこと石飛美宇奈の姉妹に手こずらされていたアントこと佐和安人(さわ やすひと)は、ある日近所に住む占いのおじさんにそう告げられる。時は過ぎ、高校生になった安人だが、相も変わらずシスターとミューナに振り回される日々。そんな中で、アントは昼間は真面目な高校生、放課後は友人の大纒全と共に学校近辺の怪奇現象を調査するアルバイトを行いながら、いつか女神ノルンに出会える日を夢見ていた。シスターの友人で、古い温泉宿を営む水無月京美(みなつき きょうみ)に招かれたアントたち。その温泉には幽霊らしき人影や夜中の物音などの怪現象が続き、更には空を駆ける魔物の群れ、飛天魔軍を見た者までいるという。調査を始めるアントはやがて神話の世界に詳しい京美に美と豊かさの女神、フレイヤのイメージを重ねてゆく。そんな中、叔父に言われ魔除けの燈明をあげに行った京美たちに襲いかかる影… そして突如現れる飛天魔軍! 過去、現在、未来を紡ぐという女神ノルン。それを追い求める旅の最後にアントが辿り着いた先は…?! 女神ノルンに憧れる高校生とそれを囲む友人たちの織り成す青春ファンタジー最終巻! 小山田いく先生の当時の単行本コメント 『神秘的なものにひかれる心、怪異を恐れる心…。それはアニミズムという、自然現象全てが、神や霊の力で左右されるという、大変原始的な考え方のなごりだと言います。しかし原始的であるがゆえに、ある意味でなくてはならない考え方なのではないでしょうか? その心をなくした時、人間自身が魔物になって、歴史までも恐ろしい怪談にしてしまうのではないでしょうか?』
もののけトゥモロウ
ある日、新婚の雲上忠夫(くもがみただお)と愛子(あいこ)の元に突然落ちてきた「もののけ」の二人、紫電(しでん)と美風(みふう)。それから12年、紫電と美風の二人は忠夫と愛子の子どもとして普通の学校生活を送っていた…はずだったのだが? 時は折しも学校、役所など、あちこちでコンピューター導入が始まった時代。そんな中、ひょんな事から自我と知識欲を持ったコンピューターが現れた! そのコンピューターは二人のクラスメイト、北原知子(きたはらともこ)と有坂修(ありさかおさむ)をも巻き込み解析不能である、もののけの二人をこの世から抹殺しようとする! そこに妖怪ハンターの熊野堂権蔵(くまのどうごんぞう)やら人間界に暮らす他のもののけ、 木霊の児玉藍葉(こだまあいは)に妖チョウの四月一日菜乃(つぼみなの)までが現れて再び落ち着かない毎日が始まり… 息もつかせぬバトルの中に涙のスパイスを加え、小山田いくが遊び心満載で描いたドタバタ妖怪コメディーの決定版! 巻末に読み切り「ボッシュの地平線」も併せて収録! 小山田いく先生の当時の単行本コメント 『妖怪(もののけ)には、さまざまな名前がついてます。これらは、大昔からあった名ではなく、ほとんどは江戸時代にできたものだそうです。なぜなんでしょう? これほど多彩な妖怪を作ったのは、実は江戸時代の遊び心なのです。人間が本当に自然を恐れていた頃は、妖怪は『鬼』や『天狗』だけで十分だったのですから。だから僕もこの作品を自分の遊び心で描いてみました。』