ビームコミックスの感想・レビュー496件<<1617181920>>カネコアツシ×狩撫麻礼!! 稀代のコラボが奇跡の刊行3ツのお願い カネコアツシ 狩撫麻礼兎来栄寿昨年1月に惜しまれながらこの世を去った狩撫麻礼さん。 『SOIL』や『デスコ』といった尖った作品を放ち続けるカネコアツシさん。 その二人により、1995年に描かれたコラボ作品が一周忌に初めて単行本として発売されました。 表題作の「3ツのお願い」は狩撫麻礼作品らしいドライブ感に溢れており、グイグイ引き込まれていく感覚が堪りません。カネコアツシさんの絵も、狩撫麻礼作品の味わいに非常にマッチしていて素晴らしいコラボレーションだと思います。 もう一つの収録作品である「CALLING」はカネコアツシさん単独の作品ですが、最初にこちらが入っていることによって、より抑揚をつけた状態で「3ツのお願い」を楽しめる優れた構成となっています。 何より、あとがきでカネコアツシさん自身にやって書かれた狩撫麻礼さんとの思い出が非常に胸を熱くさせる内容となっており、その上でできたこの作品に対しての愛着を強めてくれます。 今またこのマンガが読めるようになったことに感謝しかありません。最年少手塚賞受賞者の天才・小池桂一が精製した、読むドラッグウルトラヘヴン 小池桂一兎来栄寿天才の創造物は、問答無用です。余計な思考を介在させる余地がなく、対峙した瞬間に心を、意識を、魂を持って行かれます。そこから解き放たれ、現実に帰って来るのに暫しの時を要することもままあります。 小池桂一という才能は、極一握りの疑いようのない天才です。天才としか表現しようのない作品と経歴とエピソードの持ち主です。その代表作『ウルトラヘヴン』は、紛れも無くそんな天才によって生み出された異端で超越性を持った怪作です。 弱冠16歳での手塚賞入選。これは今なお最年少記録です。入選作品なしの年も多く、第一回からして入選はおろか準入選すら出なかった手塚賞。そんな中で、手塚治虫自身が「やられた!」と天を仰ぎ、筒井康隆や梶原一騎、ちばてつや、本宮ひろ志といった厳しい目を持った審査員たちが満場一致で認めざるを得なかった才能。それが小池桂一です。 しかし、そのまま素直に日本で漫画家であり続けることはせず、ヒッピーになりパチンコ屋でバイトをしてお金を貯め、アメリカへ。そしてディズニーの下請での映像制作などに携わり、マーベル社からも作品を発表。バンドデシネを代表する作家であるメビウスに影響を受けつつ、手塚賞受賞から八年後に帰国。そして、数年に一度というペースで作品を発表し続けて現在に至ります。 単行本が十年以上出なかった期間もある中、一体どうやって収入を得て暮らしているのか? 漫画以外、日本以外でも絵の仕事を行っているようではありますが、お子さんがいるという話もあり、謎に包まれています。 伝え聞くエピソードで秀逸だと思ったのは、ヒッピー時代に書いた八十枚程のマンガのお話。それは普通の漫画の概念では有り得ない、三ページ見開きという形態もある異形の作品。お経か巻物のような形でしか製版もできないその漫画は、全てを繋げると一枚の巨大な絵となり、最初の頁と最後の頁を繋げるとストーリーが無限に循環する構造になっていたといいます。 オールカラーで全ページが一ページ一コマという体裁の『スピノザ』など、その奇抜な発想とマンガ表現の可能性を追究した作品は、正に天才の所業であると言わざるを得ません。 そして、そんな小池桂一の最新作でもある『ウルトラヘヴン』。上記の作品群に比べれば、まだ一般的なマンガとしての形式を保った作品ではあります。ただ、今作もマンガ表現の一つの極致であることは、一目瞭然です。そう、数ページ見れば言葉を尽くすより雄弁にその圧倒的な世界を物語ってくれます。エンジン音だけ聞いてブルドーザーだと解るくらい直感的に理解できます。 『ウルトラヘヴン』が描くのは、薬事法が改正された近未来。ある程度の薬物の所持・使用が合法化された日本では、「今日帰り一杯やってく?」のノリでサラリーマンたちは仕事帰りにバーに寄り、その日の気分に合わせた薬を調剤してもらい楽しみます。そんな中、人生に対して自暴自棄になっており違法ドラッグにも手を染める主人公カブが、恐ろしく効き目の強い新型ドラッグの噂を耳にして―― 物語は度々訪れるカブのトリップ状態と共に進行していきますが、その描写が圧巻です。 途轍もない画力と、ダイナミックなコマ割り、構図が生み出す唯一無二のペーパードラッグとしての魅力。自分の感覚が増大し、世界と自分が変質し、(私自身は薬物を使ったことはないのですが)まるで実際にトリップしてしまったかのような錯覚を覚えさせてくれます。 現実と夢と幻想の区別が付かない状態に陥るカブの姿を見ている内に、読んでいるこちらも地に足がつかない酩酊感を覚えます。どこまでが夢でどこまでが実際に体験していることなのか。「我思う故に我あり」で考察されたように、この今いる世界が夢であったとしても私たちがそれに気付くことは不可能です。入れ子構造のような物語の中で、自らの存在の不安に晒されるカブの気持ち悪さを、尋常でなくハイクオリティな絵によって体感させられます。 又、薬物によるトリップだけでなく、変性意識全般がこの作品のテーマの一つになっています。アンプという装置を用いた瞑想によって、意識レベルを増幅させるという行為も作中で描かれますが、その描写もまた凄まじいです。 多幸感を超えた、全能感、宇宙との一体感。哲学的、宗教的な命題であり、量子論も絡めて論じられる、人間の脳がもたらす可能性の世界。人が人の身でありながら、人の領分を超えて神の領域、まさしく「ヘヴン」に至る道。ある意味で、三次元に於いて四次元の存在が認識できないものの、その影によってその存在を感じられるように、この作品は通常人間には知覚できない事象が、知覚できるように落とし込まれ表現された特異な書物と言えるかもしれません。 A5判で数年に一度しか刊行されない漫画なので、残念ながら普通のお店にはまず置いていないでしょう。私自身もヴィレッジヴァンガード以外の店頭では見掛けたことがありません。ネット上以外で見付けるのには苦労するかもしれません。が、体験しておく価値のある本です。そう、今作は普通の読書という範疇を超えた、一つの超越的体験です。 アンヴィエントサイケな曲でもヘッドホンで聴きながら読むことで、一層その効果は高まるでしょう。このペーパードラッグは安価ですが極めて上質で副作用もありませんので、安心して服用して下さい。 画像『ウルトラヘヴン』1巻より 復讐のために最強になったキャバ嬢 #読切応援雌ライオンの牙 國本隆史starstarstarstarstarかしこボクシング世界王者とめくるめく夜を過ごすのかと思いきや、殺るか殺られるかの勝負を挑むキャバ嬢。いやぁ〜笑いました。もう今となってはタイトルの雌ライオンの牙で笑えます。独特の狂気的なノリのある作家さんですね!何度読んでも面白さが消費されないマンガ卓球セラピー 植田りょうたろうたか1つの作品の中に『異なるジャンルのマンガ表現』が混在していてすごい…! ネコがおもちみたいに溶けて子どもがコロコロしている絵柄は、大人っぽい**「ゆるいデフォルメ」**。町並みや道路は丁寧に描かれ味があり、まるで歴史漫画のような**「リアルな背景」**。そして日常を描いた作品でありながら、襖を開けるシーンではナメたりや卓球中は俯瞰したりと、カメラワークはまるで**「少年マンガのような迫力」**。 **そしてただ違うジャンルの技法を取り入れるだけでなく、それが見事に調和がとれていて読んでいて気持ちいい…!** そしてストーリーは、舞台背景について説明がほとんどないにも関わらず、スッと世界に入れてキャラクターを身近に感じました。 というか、登場人物たちの関係や、キューポラ堂はなんで卓球を置いているのか、八絵ちゃんは過去に何があったのかを野暮ったく語らないところが粋…! **説明しすぎず、読者自身に想像で自由に余白を埋めている状態こそが、まさにこの作品の面白さの根源**かなと思います。 読み手の数だけ「キューポラ堂とは何か・なぜ卓球があるのか」の答えらしきものが無数に存在する以上、この作品は何度読み返しても面白さが消費されない。制作陣まとめ「CONFUSED!」CONFUSED! 福富優樹 サヌキナオヤ名無し作画『サヌキナオヤ』 イラストレーター・漫画家・アニメーター http://sanukinaoya.com/ ストーリー『福富優樹』 京都在住の4ピース・バンド『Homecomings』のギター https://twitter.com/pizzaplanet_hom 編集『森敬太』 自主制作漫画レーベル『ジオラマブックス』主宰 https://twitter.com/dioramabooks/status/1083992081121460224 マンガっぽくないマンガだと思ったら、編集が音楽イベント開いたりしてた人で、原作者のバンドのジャケットを担当してるのが作画の人…っていう、制作陣は音楽関係者だった うまく言えない。けど面白い!卓球セラピー 植田りょうたろうstarstarstarstarstarかしこはなちゃんが通う本屋には卓球台が置いてあって、いつも店番をしているお姉さんは髪の毛で顔をおおって隠している。夏にお姉さんの顔を見てしまい泣かせたショックで、店に行くことができず冬になってしまった。 お姉さんは顔にキズがあるわけでもないんだけど、誰にも顔を見せられなくなってしまったみたいだった。ここが切ないけど作品のポイントだと思う。はなちゃんと友人うたちゃんの熱い卓球の試合は読んでいてとっても楽しかった。 なんとなく西岸良平みたいだなぁ…と思いながら読んでた。初めて知った世界観ナイト・ワーカー やまじえびねstarstarstarstarstarかしこ気に入った女の子を故意に自分の恋人達と一夜を共にさせ、性的に開けていく様を嬉々として観察するミステリアスな女。この普通じゃない女に惹かれていく女の子。不思議な設定だけど読んでいて違和感がないし、まったく下品じゃない。むしろこの世界観にどんどん飲まれていく。女同士でしか得られない快楽のムードなのかな?タイトルにもなってる短編は幼い頃に性的虐待を受けていた女性のお話。あまりにも辛い経験をしていると素直に泣きも怒りも出来ない。誰にも言えない秘密みたいなことが漫画になってて感嘆しました。猫がつなぐ人の縁猫恋人 イシデ電starstarstar_borderstar_borderstar_borderかしこもし自分の生活に猫がいたらどうなるだろうとつい想像してしまう作品です。ただの猫マンガではありません。人と猫がとても対等な関係として描かれてると思います。ヨリを戻した彼女が飼い始めた猫をライバル視する話とかまさにそれ!三角関係の一点に猫!その発想にやられた〜。名作揃いです。いつのまにか…父のなくしもの 松田洋子名無し前にコミックビームに載っていた読切「父をなくす」がグッとくる素晴らしい話だったけど、あの一回で終わらずに、いつの間にか連載作品になってた。これはぜひ単行本になるまで描いてほしい。話の流れ的に、「父をなくす」が最終話に位置づけられる感じだろうか。山田孝之主演&プロデュースで映画化ハード・コア 狩撫麻礼 いましろたかし地獄の田中まさか映画化するとは思わなかった。 これをきっかけにいろんな人に読まれてほしい http://natalie.mu/comic/news/244460 普通ではないからこその真実味セカイ、WORLD、世界 新井英樹名無し60Pある初投稿作品は「主人公は必ずぶっ殺す‼︎」意気込みで描かれて本当に死ぬ。表紙の蟻鱒鳶ルを建てられてる岡啓輔さんの話は泣かずに読めない。 ヤマザキ先生の傑作テルマエ・ロマエ ヤマザキマリしんルシウスの風呂に入ってみたい。そうとしか生きられない人たちハード・コア 狩撫麻礼 いましろたかしにわか映画化が間近ということで読んでみた。 「ハード・コア」の主人公の核というか、真っ直ぐさは、汚泥のようにどうしようもない行き詰まりの中でも、莫大な金銭を得ても変わらないんだなと思った。だからとんでもなく不幸だけど、惹かれる。友人の牛山も奇矯な行動をとるが、間違ったことや裏切ることはしない。ふたりの「純度」は最期まで変わらない。 だから彼らの空回りはちょっと面白くて、物悲しくて、気が滅入るけれど、胸が打たれるんじゃないかと思った。個人的には扇風機の回が強く頭に残ってる。素敵…!にわにはににん 中野シズカ名無し「ひきだしにテラリウム」とか「乱と灰色の世界」「春と盆暗」「CITY」とか好きな人読んで欲しいペンとトーンの使い方がすてきです 古民家カフェでコーヒー飲みながら読みたいなぁ背景やべぇ甘木唯子のツノと愛 久野遥子かしこほぼすべてのコマに背景が描いてあります。 そういうのって自分の記憶がしっかりあるからリアリティを持って描けると思うんです。 小学校生活とか他人の家とか、日々さまざまなことに意識を向けて観察してそれを作品に活かしてる。 だからファンタジー要素があっても浮つきがないので読みやすかったです。 もちろん絵も超上手いし、どの話も最初から最後まで面白かった。才能やべぇ。 歴史もコメディーも!テルマエ・ロマエ ヤマザキマリましとにかく笑える! 昔の人が現代の色々なものを見たときに、どんなリアクションをするのかが、多分一番おもしろい形で描かれていると思う。 同時にローマの歴史などを理解することもできるから、受験勉強の間に息抜きとして読むのがオススメ! そして温泉の話なので日本の素敵な文化をより良く知ることができるし、とってもほっこりするお話。 お風呂あがりに読んだら最高だと思う!むちゃくちゃ面白いけどどう言ったらいいのかがわからない蟇の血 近藤ようこ 田中貢太郎マンガトリツカレ男自分が物語の内容に納得して理解できているとは到底思えないが、このタイプの漫画はなんか好き なんかあるたびに読み返してまた楽しみそうだ 表紙と中身にギャップあり甘木唯子のツノと愛 久野遥子少女漫画博士うららか日常に少しの非日常要素を足して、物事の本質を描く作品。 1話読み切りが4話分入って200ページ超えというヴォリューム感がすごい。 読了後、考えさせられれるので、軽い気持ちでよんだら結構疲れる作品。 少女漫画というよりかは、文学のジャンルの方が近いかな。物語の中の話がちゃんと面白いものするひと オカヤイヅミ名無し小説家が主人公なり登場人物になってる作品って、たいていその人が物語の都合上「すごいということになってる」のが多い。けどこれはキャラクターとそこで語られてるモチーフやエピソードに違和感がなくて、ちゃんと文学の雰囲気がある。ちんちんケモケモ!!ちんちんケモケモ 藤咲ユウmampuku なんか無性に声に出して読みたくなる良いタイトルじゃないですか?「ちんちんケモケモ」 ちんちんケモケモ!! 一体どんな意味なんでしょうか…? ちんちんケモケモ!! 内容は普通に可愛くて面白かったです。1巻の最後はちょっと驚愕の展開が…この感覚はなんだろう敷居の住人 新装版 志村貴子影絵が趣味志村貴子の、この長編デビュー作を、単なるうだつの上がらない青春漫画として読むにはあまりに多くのクエスチョンマークが後にのこる。 この感覚はいったいなんだろう。コマを追いながら、ページをめくりながら、とにかく、異常な違和感がついて離れない。違和感がついて離れないというより、コマとコマの隙間、ページとページのあいだに大きな違和感の空洞があって、そこへ随時おちてゆくような感じとでもいうのだろうか。青春という名の、あの、どうにも言い表せない奇妙な時間がうまく表現されているために、こんな違和感をおぼえるのだろうか。 けっして、それだけではないような気がする。この漫画は、漫画と呼ぶにはあまりに構造がおかしい。なんだろう、この、いつも置いてきぼりをくらう感じは。こんなにも人を置いてきぼりにする漫画がかつてあっただろうか。コマは話の筋を追わず、読者をぽっかりとあいた空洞にいざなう。 そして『敷居の住人』という意味深なタイトル、まるであなたはこのコマから出られませんと言わんばかりに。女性目線って色々あるな彼女は宇宙一 谷口菜津子杉田短編で読みやすい。宇宙の中で1番。 そんな事を言われる女性になりたい。 かつそんな魅力とはどんなものなのか、想像を膨らませる漫画でした。 作者の一言メモも背景があり、なるほど!と思いました。哀しいけれど希望を見出すことができた下巻どこか遠くの話をしよう 須藤真澄鳥人間※ネタバレを含むクチコミです。伊藤ガビンの漫歩録「森泉岳土のマンガだけは紙の本で買わなくてはならない理由」感想報いは報い、罰は罰 森泉岳土マンバマンバ通信の記事の感想をどうぞ!! まだ読んでない方はこちらから! https://magazine.manba.co.jp/2017/12/15/manpo-moriizumi/<<1617181920>>
昨年1月に惜しまれながらこの世を去った狩撫麻礼さん。 『SOIL』や『デスコ』といった尖った作品を放ち続けるカネコアツシさん。 その二人により、1995年に描かれたコラボ作品が一周忌に初めて単行本として発売されました。 表題作の「3ツのお願い」は狩撫麻礼作品らしいドライブ感に溢れており、グイグイ引き込まれていく感覚が堪りません。カネコアツシさんの絵も、狩撫麻礼作品の味わいに非常にマッチしていて素晴らしいコラボレーションだと思います。 もう一つの収録作品である「CALLING」はカネコアツシさん単独の作品ですが、最初にこちらが入っていることによって、より抑揚をつけた状態で「3ツのお願い」を楽しめる優れた構成となっています。 何より、あとがきでカネコアツシさん自身にやって書かれた狩撫麻礼さんとの思い出が非常に胸を熱くさせる内容となっており、その上でできたこの作品に対しての愛着を強めてくれます。 今またこのマンガが読めるようになったことに感謝しかありません。