週刊少年チャンピオンの感想・レビュー349件<<1011121314>>だから野球マンガは面白い!ドカベン 水島新司影絵が趣味当初は柔道マンガとして始まり、いくつものシリーズを経由しながら、ひじょうに長い年月を経て、とうとう『ドカベン』に終止符が打たれた。最終巻の最終話では、第一巻の第一話における山田と岩鬼の出会いをそのまま回想としてなぞり、このあまりにシンプルでありながら、これしかないという演出には言うにいわれぬ感慨を憶えたものだった。 『大甲子園』を含めたドカベンシリーズの本流だけで全205巻。それ以外の支流からドカベンシリーズの本流に合流してきたものを合わせれば300巻に迫る勢いである。じつは、こち亀の200巻の記録をゆうに超えてしまっているのだ。 この途方もない事態は、おそらく『ドカベン』にのみ関わるものではない。すべての野球マンガに、野球マンガというジャンルに関わるものであると思う。マンガには様々なジャンルがあるが、そのなかでも野球マンガというジャンルは、マンガという体系に対して、ある特権的な位置を占めていると思うのだ。これはハリウッドが西部劇というジャンルとともに映画産業を発展させてきたのとよく似ているような気がする。すなわち、ここでは映画が西部劇を撮るのではなく、西部劇という土壌が映画を撮らせているというある種の逆転現象が起きている。映画においてもっとも重要な光線の処理の問題、これをハリウッドはその近郊の年中天候の変わりにくい荒涼地帯で西部劇を撮ることで解決してきたのだ。天候がほいほい変わればそのたびに撮影を中断せねばならないが、西部劇ならばそんな心配はしないでどんどん撮影をすすめ、作品を量産することができる。つまり、こうした西部劇の量産で興行した潤沢な資金を次の撮影にまた注ぎ込むというサイクルがハリウッドにはできていたということだ。 では、マンガはどうかといえば、マンガ制作に天候はあまり関係がなさそうだが、やはり手塚治虫の登場いらい体系の整えられてきたコマと記号の処理という問題が"大友以降"のマンガにおいても頭をもたげてやまないはずなのだ。というより、マンガにおける諸問題はコマをいかに処理し、記号をいかに処理するかに集約されるはずだ。あれだけマンガというものに抗ってみせた『スラムダンク』の井上雄彦もけっきょくはコマからは逃れられないし、記号には頼らざるを得ないところがあった。そもそも井上がマンガに抗わざるを得なかったのはマンガ家という身分でありながらバスケが好きだったという不幸に由来する。マンガでバスケの動きをどう表現するか、それは文字通りマンガへの過酷な抵抗であったことだろう。『スラムダンク』の美しさは、このマンガへの過酷な抵抗と山王への果敢な挑戦がダブるところに集約されるだろう。ただ、あくまでも井上に許されていたのはマンガへの飽くなき抵抗という姿勢までで勝利ではなかった、だからこそ湘北が山王に奇跡のような勝利をおさめたときに連載を止めねばならなかったのだ。その点で、マンガは野球に愛されていると言わざるを得ない。愛に守られてスクスクと育ち、野球マンガに特有の素晴らしき楽天性でもって『スラムダンク』とはまたちがった豊かさを随所で花開かせている。そのことは近年ますます豊饒となった野球マンガのひとつ『おおきく振りかぶって』にもよく描かれている。すなわち、打者のほとんどが打ち上げてしまう三橋くんのまっすぐ、打者はボールの運動をじっさいに目で正確に追っているのではなく、その軌道を経験的な記号として捉えてバットを振っている、と。このことは野球を外からみる側にもいえる。投手が構えて、ボールが投げられる、打者が構えて、バットが振られる、この一連の運動を隈なく目で追っているひとなどいないはずなのだ。わたしたちが見ているのは、投手が構えて、次の瞬間には、構えていた打者がスイングし終えていて、マウンドの投手はまるでバレエでも踊るみたいな不可思議な格好になっている。この野球をみるときの呼吸はマンガの呼吸とぴったり合いはしないだろうか。コマからコマのあいだの欠落を敢えて埋めようとはしなくてもマンガは野球を経済的に語る術をはじめから心得ていた。つまり野球マンガは、あるいはバスケマンガのように、マンガそのものに抵抗する必要があらかじめなかった。この追い風を受けてマンガは野球という物語を幾重にも変奏して量産することができたのではないかと思うのだ。ラッキースケベなど存在しない謀略のパンツァー 古田朋大名無しラッキースケベっていうご都合主義に対するアンチテーゼとして、皆が恣意的にラッキースケベを起こそうとしているっていうコンセプトが好き「芸能人バキ化プロジェクト」とかいうオモシロ企画バキ道 板垣恵介名無しダウンタウンDXとのコラボ企画で、板垣先生が芸能人たちをバキ風に描いてるのだが、どれもめちゃくちゃ似ていてビビった。設定としては闘技場(トークバトル・コロッセオ)に君臨する最強の戦士・ダウンタウンに挑む姿をイメージして描いてるらしいw 公式サイト https://www.ytv.co.jp/dtdx/baki/ https://prtimes.jp/i/39547/14/resize/d39547-14-216826-0.jpg忍の兄妹描くダークでシリアスな読切…!!月影の忍 灰谷音屋たかめっちゃ面白かった…!!ジュニオールの灰谷音屋先生が描いたとは思えない超ハードでダークな忍のお話…!! **人が妖に転ずる世界に生きるあずみみたいなハードな忍を、陰影がハッキリしたスタイリッシュな絵柄で描く。**そんなん面白いに決まってる…!! 兄のことを「兄様」と呼ぶ妹。足抜けしようとした幼馴染を平気で殺し、自らを「化生」と呼ぶ兄…好き…。 妖、鶫・鳶丸兄妹、忍の里…まだまだこの世界について深く知りたいので、本当に連載化してほしいです…!! https://i.imgur.com/VTG4Tl3.jpg 【あらすじ】 鳶丸(とびまる)と鶫(つぐみ)は、婆が仕切る忍の里に暮らす兄妹。ある日、3ヶ月間「干殺し」にした城から妹の鶫が戻って来ず、鳶丸が向かうことに…。 【週刊少年チャンピオン2019年42号掲載】 https://www.akitashoten.co.jp/w-champion/2019/42 羽生結弦とコラボ弱虫ペダル 渡辺航名無しこれ新宿でたまたま見かけたけど結構良かった ちゃんと見ないと羽生くんだとわからないけど https://cyclist.sanspo.com/489916週刊少年チャンピオン2019 39号 名作リバイバルにきてた!サナギさん 施川ユウキ名無しまず何より作品が面白かった。キャラがいいし、言葉回しがいい。 ド嬢が個人的にはヒットしなかったからノーマークだったけど、惜しいことをしたと思うくらいには好きだった。買おう それ以上に施川ユウキのインタビューが載っていたんだけど、それがなにより最高だった。キャラとネタの話。コピーして永久保存したい。聖闘士星矢の正当なる続編聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話 車田正美マウナケアやっぱり、オールドファンとしては同じようなタイトルが並んでいたら、こっちを取ってしまいますね。あの『聖闘士星矢』の正当なる続編の登場。そう、まさしく続きの作品。『リングにかけろ』が〝2〟として復活しましたが、こちらは世代変わりしていて、徐々に先代の偉大が重荷になり、オリジナルとは違うカタルシスのないラストになってしまいました。でも、こっちは続きなんですから世界観もそのまま、主人公は変わりましたが瞬も一輝もあの時のまま登場。変な気負いも感じることなく、安心して読めます。また、ストーリーの引っ張り方もあの時のままで「次、こうなるだろうな」わかっていても先が気になって読み続けてしまう。昨今、緻密ですばらしくきれいな作画をされる漫画家は多いですが、この読ませてしまう圧倒的な漫画力は漫画黄金期のトップを張っていた漫画家じゃないと出せないものだとつくづく思います。新しい要素としてはこの作品は全編カラーに。できればCGじゃなく、〝ブーメラン・テリオス〟ばりの色塗りを見たいですが、それはぜいたくかな。 鼻の奥がツーンとなった空が灰色だから 阿部共実猫あるく思春期特有の心のズレや葛藤を思い出させてくれた。そして忘れていたはずの胸の奥の突かれたくない所をしっかりとえぐってくる。みんな何かしら引っかかるところがあると思うのでなかなかしんどくなると思いますが、辛いながらも癖になる面白さがあります。一話完結でジャンルはシュールギャグ、ホラー、ラブコメとタイプの違う話が色々あるのでかなり楽しめました。 「小さな世界」好きにはたまらない読切…!こびとのつまみぐい よこよこたか幼い頃にぐりとぐらやてぶくろ(ウクライナの絵本)を読んで育った人間なら、ハクメイとミコチのような「小さきものたちの世界」にワクワクする気持ちがわかるはず。 https://twitter.com/yokoyoko468b/status/1153962856905228288?s=20 この読切「こびとのつまみぐい」は、普通の日本の家庭に小さな小人が住んでいるという設定で、主人公は掟を破って人間の食べ物をつまみ食いしてしまう…というあらすじ。 もう!小人が持っている人間の道具や仕草にいちいちキュンキュンします…! 安全ピンをハーケン代わりにしたり、魚の醤油さしを水筒にしたり。 そう、小人好きはそういうのが見たいんだよ、そういうのが…!! 言ってしまえば「小人が自分の体よりも大きなプッチンプリンを食べるだけの話」なのですが、それが本当に可愛らしくてしかも見てて満足感があります。 これはぜひ連載になって毎週和ませてほしい作品です…! (画像は本編より。このシーンで「もう好き…!」となりました)やっぱりアニメ化するべきおまかせ!ピース電器店 能田達規名無し誰にでも「アニメ化してほしい!」と強く思う漫画があるはずです。僕は『おまかせ! ピース電器店』がなぜアニメ化しないのか、もう20年近く憤っています。もう、こうなったら大金持ちになって、私財をなげ売ってアニメを作るしかない……。それが僕の生涯目標になっております。『おまかせ! ピース電器店』はそれだけ魅力的な作品なのです。 『おまかせ! ピース電器店』は、世界一の科学技術力を持つ町の電器屋さん・ピース一家の物語。ピース一家は、昔ながらの頑固親父のピース貫太郎(MITやNASAに所属していた天才)、やさしく綺麗で最強なピース・M・幸子(元特殊部隊所属)、技術者魂をもった長男で主人公のピース健太郎、プログラミング技術は世界一ともいわれる小学生4年生ピース則子、運操縦に抜群のセンスをもつ小学2年生ピース康介+猫のミャーの5人と一匹。自走型こたつの「こたみか号」とか、自動で鍋をとりわけてくれる「鍋奉行くん」、東京湾で勝手に魚を捕まえてきてくれる「まんぼーくん」など、現実にあったら欲しくなるような発明と、ご町内雰囲気が合わさった、ほっこりさせてくれる作品です。ただ、いつのまにか「まんぼーくん」は原潜を鹵獲してしまうし「鍋奉行くん」は関東大震災の危機を招こうとしてしまったり、ノホホンとした物語はあっというまに全世界レベルの大騒動に広がっていくのです。 特に素晴らしいのは8巻に収録されている「モモ子と文通」の回。隣に住む幼なじみ・モモ子との交換日記を二人のオヤジ達に見られてしまった健太郎は、絶対に妨害されすに配達する、「重装甲機動郵便ロボット・カメ吉」を発明します。このカメ吉は物語の終盤で、とんでもないところまで郵便を配達するのですが、たった20ページとは思えない物語の加速度。とんでもないジェットコースターコミックなのです。 一家以外にも魅力的キャラクターがたくさん登場します。その中で最も重要なのは健太郎の幼なじみ立花モモ子です。相思相愛な健太郎とモモ子は、とにかく相手のためを思って行動します。それがいつのまにかすれ違い、慌てた健太郎が暴走し、周囲を巻き込んだうえでいつのまにか“世界の危機”につながってしまうのです。ピース一家を監視しにきた地球防衛軍の女スパイ・月影アイが登場してからは、微妙な三角関係とともにアクションシーンも増え、ご町内の延長で世界を飛び回ります。24巻もある内でどこから読んでも面白く、SF、ラブコメ、アクションといったあらゆるジャンルが“ご近所の物語”という独特の味付けでされている、芳醇な世界。 やっぱりアニメ化するべきですよ! 色んな意味でまぶしい作品だったBest Picture 大沼隆揮 内田裕人名無しプロカメラマンを目指してコンペに臨む男の子と、ただ写真を撮ることが好きな女の子のボーイ・ミーツ・ガールな話。 主人公、徹のとにかく早くプロになりたいというまっすぐな強い信念が紙面からビシビシ伝わってきました。 徹がコンペ会場は戦場だとなおに伝えたとおり、撮影がスタートした瞬間の描写がまさにターゲットを打ち抜く銃のようで、絵だけではなくテキストも効果的に使っているところも技を感じたし、圧というか熱というか、とにかくすごい。 徹もなおも写真に対する考え方は違うものの、お互いの才能を認め合える素直さも良かった。 また、作者2人が幼馴染同士で、バクマンをきっかけに漫画を描き始めたというエピソードもいい。バクマンを読んで漫画を描き始めた人ってたくさんいると思うけど、こんなふうにデビューを目の当たりにするとやっぱり夢あるなーとしみじみ。広島の不良2人組に訪れた人生の転機を描くヒマワリ 平川哲弘マンバ【掲載誌】 週刊少年チャンピオン2017年42号(9月14日発売)より連載開始 【代表作】 『クローバー』平川哲弘 『クローズZERO II 鈴蘭×鳳仙』平川哲弘/高橋ヒロシ 【公式ページなど】 週刊少年チャンピオン http://www.akitashoten.co.jp/w-champion Twitter https://twitter.com/hirakawa7x 父娘ヒロイン、ありだと思います!美少女戦士とパパ 吉田達弥名無し妖精パパと美少女戦士の娘のコンビ、ありそうでなかった正義のヒロイン?コンビ。 仲が良い親子っていうのはそれだけでいいですね。 ていうかパパは妖精なの?フグ毒で死んだのに生き返って妖精になったの?衣装も変身じゃなくて普通に着るし、絶妙にダサいし…情報が大事故大渋滞してますね。 娘もツッコミ役だけではなくてステッキの攻撃が強すぎてふっ飛ばされたり、セコそうな性格なのも良かった。 めちゃくちゃ面白い六道の悪女たち 中村勇志いい漫画読みkindle版3巻まで無料期間だったので読了 めちゃくちゃ面白い 続きを買わざるを得ない 柴田ヨクサル好きな人好きそう武蔵刃牙道 板垣恵介名無し剣道やって武蔵みたいになりたいな😊おじいちゃんは〇〇〇!奥嶋ひろまさ先生の読切ローンウルフ 奥嶋ひろまさたかヨボヨボのおじいちゃんを乗せた車椅子を押す眼鏡をかけた孫は、いつもコンビニのATMで大金を送金するのだが、捨てた明細から預金が4000万あることが武闘派ヤクザにバレて目をつけられてしまう。人気のない場所に連れ込まれ、おじいちゃんを人質に金を渡すように脅されるが、実はおじいちゃんには秘密があって―――というあらすじ。 車椅子からマシンガン、時速100kmでトンネルの壁を走行は流石に笑ったww おじいちゃんが止めを刺すために車の屋根に立ったとき、着物がめくれて紋紋が見えたのが格好良い…!あと「おじいちゃん立てたのかよ!!」とジワジワきた。 一生懸命なヤンキーはかわいいチューイしたガール桜田日菜子(16歳) 林たかあき名無しの漫画好き※ネタバレを含むクチコミです。人間ドラマバチバチBURST 佐藤タカヒロ名無し熱い。最高。 相撲の良さは当然のこと、 人間ドラマが素晴らしい。 エンジェルボイス感想ANGEL VOICE 古谷野孝雄名無し下手くそから一気に成長してく姿が熱くなる 未来の話のようで実は現在の話でもあるAIの遺電子 山田胡瓜takaaki作品の舞台は,人間とほとんど同じヒューマノイドがいる未来.一見まだまだ先の話のようですが,子供ができないヒューマノイドと付き合う人の葛藤が描かれたり,「これは現在の人と人の関わりにも繋がる話なのでは?」と感じるシーンが多いです. 「超AI時代が来ても,結局は向き合うべきことは今と変わらないのかもしれない」と思わせてくれる名作です.女子ちょっと集合〜!ヤンキーがアイドルになるマンガだよ!ヒマワリ 平川哲弘たか「んもー!!こんなに面白いなら早く言ってよ〜!!」と言いたくなったマンガ。女子はちょっと悪い男の子とアイドルが好きですからね(諸説あり) 1話はある広島の田舎町で、男の子2人が伝統の神楽を舞うシーンから始まる。 もーーッ!!1人で舞ってても格好いい神楽を2人で息ピッタリやっちゃうとかさぁ、も゛ーーッッ!! でもちょっと待って!! どう見ても表紙ヤンキー漫画じゃない??そう!何を隠そう、蓮と清春はケンカばっかりのヤンキーで、幼馴染で、神楽のかけがえのない相方なんです!! しかしある日、清春は蓮と神楽を捨て町を去る。次に姿を現したとき、清春はテレビの中でトップアイドルになっていた―――。 というわけで、連は清春と同じ舞台に再び立つため東京で養成所に入る。 この養成所ってのが木造の古い旅館のような建物で、ここに住むポッチャリ、俳優の二世、漫画家志望、ちっちゃいヤンキーと共にアイドルを目指すことになるのです…! アイドルに夢中になったことがある人なら、この養成所の部分は語らずともどんなにドラマチックか想像できると思います。 そしてこのマンガはクローバーの平川哲弘が描き週刊少年チャンピオンに載ってるだけあって、とにかくヤンキー力が高い(アイドルものとは思えないケンカ率)。 つまり!! ・アイドル業界 ・ヤンキー業界 の2つの領域でそれぞれ熱い戦いを見せてくれる最高の漫画なんです…!!! そもそもよく考えたらヤンキーもアイドルも、仲間を大切にして夢に向かって頑張るんだから似たようなもんですよね。 男の子たちの血と汗と涙の青春。読めば必ず箱で推したくなります…!!エンジェルボイス感想ANGEL VOICE 古谷野孝雄名無し※ネタバレを含むクチコミです。 狂気と純粋さの間に生まれる笑いKASABUTOR 中村たつおき名無し久々にワロタ。こういう読切が沢山載ってたのが一昔前の少年チャンピオンなんだよな。色々とチューニングの狂った話の中に、純粋なガチさが見え隠れするこの感じ。同じくベッチャンに載ってた読切も、(オチはともかく)強烈な印象のある作品だった。まぁ万人受けしないだろうけど、、チャンピオンファンにとっては期待の新星であるのは間違いない。良くも悪くも柔道版・はじめの一歩ウチコミ!! 村岡ユウ名無し※ネタバレを含むクチコミです。<<1011121314>>
当初は柔道マンガとして始まり、いくつものシリーズを経由しながら、ひじょうに長い年月を経て、とうとう『ドカベン』に終止符が打たれた。最終巻の最終話では、第一巻の第一話における山田と岩鬼の出会いをそのまま回想としてなぞり、このあまりにシンプルでありながら、これしかないという演出には言うにいわれぬ感慨を憶えたものだった。 『大甲子園』を含めたドカベンシリーズの本流だけで全205巻。それ以外の支流からドカベンシリーズの本流に合流してきたものを合わせれば300巻に迫る勢いである。じつは、こち亀の200巻の記録をゆうに超えてしまっているのだ。 この途方もない事態は、おそらく『ドカベン』にのみ関わるものではない。すべての野球マンガに、野球マンガというジャンルに関わるものであると思う。マンガには様々なジャンルがあるが、そのなかでも野球マンガというジャンルは、マンガという体系に対して、ある特権的な位置を占めていると思うのだ。これはハリウッドが西部劇というジャンルとともに映画産業を発展させてきたのとよく似ているような気がする。すなわち、ここでは映画が西部劇を撮るのではなく、西部劇という土壌が映画を撮らせているというある種の逆転現象が起きている。映画においてもっとも重要な光線の処理の問題、これをハリウッドはその近郊の年中天候の変わりにくい荒涼地帯で西部劇を撮ることで解決してきたのだ。天候がほいほい変わればそのたびに撮影を中断せねばならないが、西部劇ならばそんな心配はしないでどんどん撮影をすすめ、作品を量産することができる。つまり、こうした西部劇の量産で興行した潤沢な資金を次の撮影にまた注ぎ込むというサイクルがハリウッドにはできていたということだ。 では、マンガはどうかといえば、マンガ制作に天候はあまり関係がなさそうだが、やはり手塚治虫の登場いらい体系の整えられてきたコマと記号の処理という問題が"大友以降"のマンガにおいても頭をもたげてやまないはずなのだ。というより、マンガにおける諸問題はコマをいかに処理し、記号をいかに処理するかに集約されるはずだ。あれだけマンガというものに抗ってみせた『スラムダンク』の井上雄彦もけっきょくはコマからは逃れられないし、記号には頼らざるを得ないところがあった。そもそも井上がマンガに抗わざるを得なかったのはマンガ家という身分でありながらバスケが好きだったという不幸に由来する。マンガでバスケの動きをどう表現するか、それは文字通りマンガへの過酷な抵抗であったことだろう。『スラムダンク』の美しさは、このマンガへの過酷な抵抗と山王への果敢な挑戦がダブるところに集約されるだろう。ただ、あくまでも井上に許されていたのはマンガへの飽くなき抵抗という姿勢までで勝利ではなかった、だからこそ湘北が山王に奇跡のような勝利をおさめたときに連載を止めねばならなかったのだ。その点で、マンガは野球に愛されていると言わざるを得ない。愛に守られてスクスクと育ち、野球マンガに特有の素晴らしき楽天性でもって『スラムダンク』とはまたちがった豊かさを随所で花開かせている。そのことは近年ますます豊饒となった野球マンガのひとつ『おおきく振りかぶって』にもよく描かれている。すなわち、打者のほとんどが打ち上げてしまう三橋くんのまっすぐ、打者はボールの運動をじっさいに目で正確に追っているのではなく、その軌道を経験的な記号として捉えてバットを振っている、と。このことは野球を外からみる側にもいえる。投手が構えて、ボールが投げられる、打者が構えて、バットが振られる、この一連の運動を隈なく目で追っているひとなどいないはずなのだ。わたしたちが見ているのは、投手が構えて、次の瞬間には、構えていた打者がスイングし終えていて、マウンドの投手はまるでバレエでも踊るみたいな不可思議な格好になっている。この野球をみるときの呼吸はマンガの呼吸とぴったり合いはしないだろうか。コマからコマのあいだの欠落を敢えて埋めようとはしなくてもマンガは野球を経済的に語る術をはじめから心得ていた。つまり野球マンガは、あるいはバスケマンガのように、マンガそのものに抵抗する必要があらかじめなかった。この追い風を受けてマンガは野球という物語を幾重にも変奏して量産することができたのではないかと思うのだ。