くろのロワイヤル 完全版

あらもん作者のデビュー作

くろのロワイヤル 完全版 木下由一
名無し

あらもんを読んでこの作者さんのことを知った人間なので、もちろんくろのロワイヤルの存在も知らなかったんですが、あとがきによると、当時単行本が1冊しか刊行されずお蔵入りとなってしまったエピソードが山のようにあったんだそう。それがこの度完全版として刊行できたということは、間違いなく「あらもん」が人気作品であることの証明でしょう。 いわゆる魔法少女(変身して戦ったりはしない)・くろのと、地味でショボい男子・山野がひょんなことから同居することになるというよくある設定なんですが、ラッキースケベ的なものよりも、山野の方からスケベを取りに行くスタイルを貫いてる感じが他の漫画と違う気がしました。山野のスケベ根性は奥が深い(あくまでエロではなくスケベと言いたい)。 たまにラッキーなスケベが降ってきても、相応?の報いがあるのがまた面白いところ。例えば、くろのの父親にひとりで全裸でハッスルしてるところを見られた際には、坊主になって寺で修行させられていました。また、大体のスケベ行動は盗撮されてくろのに見られています。 細かな小ネタも多く、ここがいいというところは山程あって書ききれません。あらもん好きな人は読んで損しないですし、やっぱりこの作者さんはセンスがいいということを再認識できてよかったです。

1日外出録ハンチョウ

中年男性に響く安定した面白さ

1日外出録ハンチョウ 福本伸行 萩原天晴 上原求 新井和也
六文銭
六文銭

年齢のせいか、どんなに面白くても、3ヶ月後とか下手したら半年後の刊行速度についていけず脱落する漫画が多々ある私ですが(カイジも堕天録までのヘタレです。)本作だけは新刊を見落とさず購入してしまう謎の魅力がある。 内容は、カイジの破壊録で出てきた班長・大槻とその部下沼川と石和の3人の休日を描いた作品。 3人のおっさんの休日を描いただけ、と言われればそうなのですが、これが絶妙に面白い。 そもそも、破壊録を読むとわかるが、普段は債務者の集まり通称「地下牢獄」にいて、そこで3Kも裸足で逃げる過酷な重労働をしている3人。 そして、そこの制度で「1日外出券」というのがあるのだが、これが、べらぼうに高い値段で、安々と外には出れないようになっている。 だからこそ、この「休日の外出」というのは彼らにとって超がつくほど貴重なのだ。 貴重な外出を有意義に過ごすために、1食ですら手を抜かず試行錯誤し、 突き詰めて実行している様は、日々の生活にちょとした工夫で楽しくなるエッセンスが盛りだくさんだったりします。 ただの日常というよりは、おっさん世代が興味ありそうなもの(食とか大人の趣味とか)を中心に取り上げ、持論を展開してく様は興味深く読めます。大したことないテーマでも、熱量あれば面白い。 特に昔話など微妙に自分とかぶる話題があって、おっさんあるあるも個人的にはツボなんですよね。 (余談ですが、5巻にZoneの「secret base」を歌うシーンがあって、「君と夏の終り~ 将来の夢~ フンフフフフン ~」 とフンでごまかす姿は腹抱えて笑いました。昔、全く同じシーンを経験したので。皆そこ忘れるんだと。) ハンチョウだけでなく、平日労働している我々にとっても休日は重要なはずなんです。 これ読んで、もっと休日を、ひいては1日1日を大事にしようと思いました(大げさ)