魔法先生ネギま! MAGISTER NEGI MAGI
ヒーローは博士ポジ?(「らしさ」の解体)
魔法先生ネギま! MAGISTER NEGI MAGI 赤松健
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
『魔法先生ネギま!』の私的ベストバウトは、27巻のネギ・スプリングフィールド対ジャック・ラカン戦です。 犬上小太郎とのタッグ戦ですが、終始ラカンとネギの力比べが繰り広げられます。しかし魔法世界最強傭兵に対し、実力的に劣るネギ。それをカバーしたのは、何重にも仕掛けた罠と、天才的な魔法開発力、そしてあらゆる力を取り入れた、なりふり構わぬ戦術でした。 戦いの後、ネギは称賛と共に揶揄されます。「(筆者注:それはヒーローというより)どう考えてもハカセポジションやで!」 (27巻249時間目より引用。口調からして味方の小太郎ですね……) ヒーローらしくない博士ポジの主役……そうネギが呼ばれる時、私は同時代に週刊少年マガジンで連載されたテニス漫画『ベイビーステップ』を思い出します。 ベイビーステップの主人公・丸尾栄一郎は、浅いキャリアと肉体的な不足を補うべく、「研究」と「コントロール」を武器として強豪と対峙する。遂に世界ランカーになる彼ですが、最後までコートで研究ノートを書き続けました。 2000年代末から2010年代にかけて同じ誌面に描かれた、二人の「博士ポジ」主人公。彼らはヒーロー「らしく無さ」がカッコ良くなる、と言う事を示してくれました。 この10年でマンガに描かれてきた、ジェンダーの揺らぎや、新たな文化系ジャンル、もしくはスポーツ漫画の新たな価値観や育成観。そこでは少年マンガに顕著な従来のヒーロー「らしさ」は、解体されて行く。 そしてそこで描かれるバトルは、従来のヒーローバトルよりも更に複雑で、新たな視点からの面白さに満ちている。旧世代代表のラカンを乗り越えるネギの戦いは、その代表例と言えるでしょう。 #マンバ読書会 #少年マンガの名バトル
漂流教師
教育に携わるすべてのひとに読んで欲しい
漂流教師 パルコキノシタ
nyae
nyae
著者自身の経験を元に描かれているのですべてがノンフィクションではないものの、教員という仕事の実態をかなり赤裸々に語られている1冊かと。叶うならば、教育に携わる立場になって読んでみたかった。 この漫画では主人公の木下先生が教師として思うこと、問題だと考えることを頭と体を最大限につかって自らが思う正解へと導こうと努力しますが、そんな単純ではないのが教員の仕事。生徒の数だけ答えがあると言ってもいいくらいに、教員という仕事のやり方に正解はないようです。そしてそれを常に読者にも問いかけてきます。 この漫画の舞台は2000年くらいなので今から20年前。多分ですが、20年前と今を比べても教育界って殆ど変わってないんじゃないかと思いました。毎日のように発生する問題の数々を、すべて現場にいる先生たちに委ねられているという現実、仕方がないにしても重荷がすごすぎる。問題に向き合わずに適当に誤魔化して続けるか、一生懸命向き合って病むかの二択といっても過言ではなさそう。 著者の本業は現代美術家ですが、臨時教員以降もなにかしら教育に携わっているようです。そんな彼の目線で描かれる職員室のタブーとは…。ちょっと中途半端なところで終わっているのだけ惜しい。